HOME コンプライアンス サイトマップ
プロフィール 入会案内 会員専用ページ
浄化槽とは 浄化槽普及促進ハンドブック(令和5年度版) 行政関連 広報データ リンク集
HOME > 浄化槽とは > 技術データ > 特集 > 維持管理業務における安全点検チェックによる安全衛生管理等の向上
しくみ
浄化槽のしくみ
最近の浄化槽の技術動向
技術データ
Q&A
JSAだより
特 集
報 告
過去掲載目次一覧
維持管理業務における安全点検チェックによる
安全衛生管理等の向上
大庭 芳昭 (株)西原ネオ (月刊浄化槽2014年 5月号)
1.はじめに
2.チェックシステムの概要
3.チェック項目
4.評価結果の整理
5.是正項目の周知
6.強化研修
7.最後に
 
1.はじめに

  近年、維持管理業を営む会社の多くが、浄化槽のみならず事業所排水処理の管理業務も行っており、対象となる施設のシステムが多様化している。
  システムの多様化により、維持管理に必要な知識の補てんのための研修や管理要領のマニュアル化は必須であるが、実際の安全管理・管理業務が適切に実行されているかどうかのチェックが不可欠となる。
  本稿においては、チェックシステムの一例として、当社にて実行されているものを紹介する。
ページトップへ

2.チェックシステムの概要

  年1回、維持管理の「強化月間」と称し、社内監査員としての「安全点検者」を選定し、重要施設の現場訪問巡回チェックを行う。
  安全点検者は、知識、経験を持ち、公正な判断を下し、また、チェック評価の整理結果から、個別の施設維持管理上の問題点のみならず自社における維持管理体制の問題点まで含めて指摘し是正・指導する必要がある。
  なお、安全点検者が複数人数である場合は、評価に対するブレが無いように、事前に十分な打合せを行うべきである。
  チェック及び是正の重点目標として、下記の項目がある。
1) メンテナンス現場責任者及び担当者としての自覚と管理スキル向上
 ・メンテナンス担当者であることを自覚し、絶えず緊張感を持って施主との対応を図る。
 ・日常の管理技術手法の検証を行い、たえず最適技術手法を追求する。
2) 緊急時の連絡体制の確立
 ・警報発生等、緊急時の連絡体制が施主と確認が取れているか。特に、夜間、休日
  (土曜、日曜)、祝日の緊急連絡体制の見直し徹底。
3) 維持管理契約書に基く業務の遵守
 ・2人工対応が1人工で対応されていないか、点検予定表(日・曜日)に基き点検が実施
  されているか等、契約通りの業務が行なわれている事の把握。
4) 作業管理の徹底
 ・維持管理担当者、作業員の服装、保護具が適切なものであるかの確認。
5) メンテナンス施設の整理・整頓・清掃等の徹底
 ・整理、整頓、清掃、が徹底されている施設は施主との信頼関係が築ける。
6) 薬品の取扱い
 ・関連法規に示された薬品の取扱いがされているか、徹底した安全対策が施されている
  かの把握。

<作業管理の徹底に対する補足>
  服装や保護具については、あらかじめ社内での標準を定めておくことが望ましい。
  維持管理業では、作業の種類として、
   ・試運転、補修工事
   ・通常維持管理
   ・薬品取扱
   ・電気取扱(制御盤扉を開きブレーカーをON、OFFする等)
  等があるが、それぞれの作業に適切な服装、保護具を規定する必要がある。
  これら作業における標準的な服装、保護部の例を表2-1に示す。

表2-1 標準的な服装、保護部の例
  頭部 服装 手の保護 その他
試運転・小工事 ヘルメット※1 安全靴 長袖作業服※2 適当なもの 高所作業時などは 安全帯使用。
保護メガネ,防毒マスクなど必要なものを使用。
回転機器・装置使用時は手袋の使用禁止
維持管理 作業帽 作業に支障のないもの 長袖作業服 ゴム手袋
薬品取扱 ヘルメットまたは作業帽 (安全)長靴 カッパ等,保護メガネ着用 ゴム手袋
電気取扱 作業帽 絶縁性のあるもの 長袖作業服 絶縁性のあるもの
※1:
モーター等点検時の毛髪巻き付き防止用
※2: 夏用の長袖作業服は、巻き込み防止のためすそを作業ズボンの中にいれること,点検作業時は上着の袖はまくらず、ボタンを止めること。

<薬品の取扱いに対する補足>
  浄化槽における窒素、リンの除去あるいは事  業所排水処理施設において使用される薬品については、場合により「毒物及び劇物取締法」における劇物、「消防法」における危険物、「特定化学物質等障害予防規則」における特定化学物質に該当するものが扱われる。これらの法律を遵守し、なおかつ運用上の安全に配慮した装置の構造、維持管理が徹底されているか確認する必要がある。
  維持管理担当者や作業者が正しく薬品を取り扱うためには、MSDSの確認による、薬品の特徴、作業時の保護具、漏えい時や暴露時の安全処置を認識するほか、関連法規の確認を行う必要がある。
  関連法規の確認は、あらかじめ施設で使用される薬品について整理しておくと認識がしやすい。
  主要薬品に対する関連法規の整理表の例を参考として、表2-2に示す。

  表2-2 主要薬剤の関連法規、取扱い注意事項 Rev2.0(平成26年3月)
関連法規 毒物及び劇物取締法 消防法 特定化学物質等障害予防規則
(労働安全衛生法 ※1)
安全対策のまとめ、注意事項
関連法規
概要
第2条:毒物(別表第一)、劇物(別表第二)の定義
第11条:毒物または劇物の適正な取り扱い
1項 盗難、紛失の防止措置
2項 漏えい、飛散防止
第12条:容器、貯蔵・陳列場所の表示義務
1項 容器に「医薬用外」、赤字に白色文字で「毒物」、白地に赤色文字で「劇物」表示
3項 陳列・貯蔵場所に「医薬用外」、「毒物」、「劇物」表示(色は関係しない)
第16条の2:流出漏えい等事故、盗難紛失時の対応
1項 流出漏えい事故(不特定、多数のものについて保健衛生上の危害が生ずる場合)保健所、警察署、消防署のいずれかに届け出なければならない。
2項 盗難、紛失の場合警察署に届け出なければならない。
第2条:危険物の指定
別表第一
第10条:指定数量以上の危険物の貯蔵制限
第9条:消火活動に阻害を与えるものの貯蔵に関する届出
第2条:特定化学物質の定義
第13条〜26条:漏えいの防止
第27条〜38条:管理(特定化学物質作業主任者、特定化学設備)
第43条〜45条:保護具
労働安全衛生法第88条、労働安全衛生規則第88条:特定化学設備の届け出
 
硫酸 第2条別表第二 94号
10%以上劇物
法第9条消火活動阻害物質
貯蔵等の届け出を要する
(200kg)60%超え該当
別表第二
1%以上第3類物質
防液堤等の漏れ防止対策、劇物表示、MSDS現地表示、
保護具の装着
作業の場合は特定化学物質取扱い作業主任の監督、
(60%超え硫酸200kg以上)消防署への届け出(消防活動阻害物質)、
所轄労働基準監督署への届け出(特定化学設備として)
苛性ソーダ 第2条別表第二 94号
5%以上劇物
    防液堤等の漏れ防止対策、劇物表示、MSDS現地表示
保護具の装着
メタノール 第2条別表第二 83号
劇物
第2条4類アルコール類(400L)
60%以上危険物該当
  50%以下水溶液として使用、
防液堤等の漏れ防止対策、劇物表示、MSDS現地表示
保護具の装着、火気・高温厳禁(機械室内注意)
シュウ酸 第2条別表第二 94号
10%以上劇物
    防液堤等の漏れ防止対策、劇物表示、MSDS現地表示
保護具の装着
PAC       防液堤等の漏れ防止対策、MSDS現地表示
保護具の装着
硫酸ばんど       防液堤等の漏れ防止対策、MSDS現地表示
保護具の装着
塩化
第二鉄
      防液堤等の漏れ防止対策、MSDS現地表示
保護具の装着
ポリ硫酸
第二鉄
      防液堤等の漏れ防止対策、MSDS現地表示
保護具の装着
次亜塩素酸
ソーダ
      防液堤等の漏れ防止対策、MSDS現地表示
保護具の装着
PAC等の無機凝集剤・硫酸のような酸混入で塩素ガス発生
塩素錠剤       異種類の混ぜ合わせ禁止、貯蔵場所の通風確保
ゴム手装着
高分子
凝集剤
      MSDS現地表示、毒性・処置等MSDSによる取扱い必要
※1
労働安全衛生法 (昭和四十七年法律第五十七号)及び労働安全衛生法施行令
(昭和四十七年政令第三百十八号)の規定

ページトップへ
3.チェック項目

  安全点検者は、維持管理契約書及び点検日報、施設の図面、計算書類をあらかじめ確認しておく。
  現場の巡回時は、まず施設の外観、機械室内、水槽内部を観察する。
  次に、維持管理担当者に対し、
   ・維持管理契約内容の把握状況。
   ・施主との対話・対応状況。
   ・設計計画条件の内容の把握状況。
   ・処理システムの特徴を正しく理解度。
   ・実流入負荷状況(流入水量・濃度、既設変動等)の把握状況。
   ・認識している施設の問題点。
   ・実際の維持管理手順。
   ・点検日報記述内容の疑問点。
等をヒアリングする。
  チェックは、安全点検チェック表の項目に沿って行われるが、それぞれの項目につき評価が行われる。評価は項目毎に採点された評価点で示される。また、是正すべき改善点は別に示される。
  評価は、項目毎に、次のA、B、Cの判断基準により行う。
  A : 良好で、指摘事項無し。
  B : 一部改善が望ましい。
  C : 早急に改善、対応が必要である。
各A、B、Cに対して点数を割り振り、指導の判断材料とする。
 
  以下に重点目標毎のチェック項目を示す。
1) メンテナンス現場責任者及び担当者としての自覚と管理スキル向上
 @処理方式、設計条件を理解しているか。
 A実負荷量(水量負荷、濃度負荷)の把握はされているか。
 B実負荷量に基いた運転管理が行われているか。
 C施設の問題点が放置されずに処理されているか。
 Dメンテナンスに必要な器具・機材を備えているか。
 E点検記録表に、報告事項が正確に記載されているか。
 F施主とのコミニュケーションが良好と受け取れるか。
 G施主に修繕計画が提出されているか、過去の修繕内容が記録・整理されているか。
2) 緊急時の連絡体制の確立
 @緊急連絡表が、施主へ提出されているか。
 A緊急連絡表が、随時更新されているか。
 B緊急連絡表には、担当者以外に複数名記載されているか。
 C緊急連絡表に平日、夜間、休日、祝日の対応が明記されているか。
 D施設内に緊急連絡表が掲示されているか。
3) 維持管理契約書に基く業務の遵守
 @維持管理契約書又は、維持管理仕様書が明確になっているか。
 A担当者は、契約内容を理解して業務を行なっているか。
 B処理水質は、規制値を遵守されているか。
 C点検項目は、正しくチェック・測定されているか。
 D点検記録表の保存が、適正に実施されているか(3年又は5年)。
 E点検記録表には、施主の認印、又はサインが明記されているか。
 F点検予定表(月日、曜日)に基き、業務が実施されているか。
 G点検記録表の整合性確認(契約内容との整合、虚偽がないか)。
4) 作業管理の徹底
 @作業服は、制服又は作業に適した服装か。
 A保護帽は、正しく着用しているか。
 B安全靴、長靴を使用しているか、又は不安全な履物を使用していないか。
 C軍手、ゴム手袋、皮手袋等を作業環境に応じ着用しているか。
 Dヘルメット、保護メガネ、安全帯を携帯しているか。
5) メンテナンス施設の整理・整頓・清掃等の徹底
 @施設内は、整理・整頓されているか。
 A施設内・外の清掃が、行われているか。
 B施設内・外に不必要な物品等が、放置されていないか。
 C点検中の標示等を揚げているか。
 D手摺り、点検蓋等の腐食箇所を放置していないか。
 E施設出入り口の施錠は、されているか、破損はないか。
 F施設内は、十分に照明されているか。
 G施設内のフェンス等に不完全な箇所はないか。
 H器具・機材等は、整理・整頓されているか。
6) 薬品の取扱い
 @薬品の有害性や取扱い上の注意等について把握しているか。
 AMSDS(化学物質等安全データシート)をタンク付近に常備してあるか。
 B薬品の保管状況は、良好か、保管場所は確保し、明示してあるか。
 C空容器等の置き場は確保し、明示されているか。
 D薬品名、医薬用外劇物等の標示が、容器、置き場にされているか。
 E取扱い時は、ゴム手袋、防護メガネ等の保護具を着用しているか。
 F硫酸等の特化物の取扱いには、特定化学物質作業主任者の指導、監督が
   行われているか。
ページトップへ
4.評価結果の整理

  各評価項目については、維持管理業務の請負契約範囲や浄化槽や排水処理施設のシステム内容で異なると考えられるが、問題点を洗い出すために過不足の無いよう、自社管理施設に沿った内容にアレンジすれば、より的確な評価が下せると考えられる。
  各施設の項目毎の評価結果は、点数に置き換え統計処理し、維持管理担当者、支店営業所等の事業所、全体等視点を切り替えて整理すれば、維持管理業務上の問題点が認識しやすくなり、強化すべき点が理解しやすい。
ページトップへ
5.是正項目の周知

  チェック項目の確認により、洗い出された問題個所は、是正項目として文書で周知させる。問題点を共通の認識とすることにより、再発防止が可能と考える。
  なお、是正指摘個所については、期限を決めて是正させ、結果を写真等の記録や書面で報告させ、保存する。  
ページトップへ
6.強化研修

  評価結果の整理によって確認された、問題点の多くは知識・認識の不足によるものが多い。知識・認識の不足が原因である問題点は、是正の指摘によるだけでは根本的な解決に至らず、再発する可能性も大きい。従って、評価結果の整理により得られた傾向の分析により、適切な研修を行う必要がある。
ページトップへ
7.最後に

  今回、チェックシステムの一例を紹介したが、このようなシステムを取り入れれば、維持管理業務の品質を高め、安全性・コンプライアンスの確立につながると確信する。
  自社の業務体制に沿ったチェックシステムを導入する場合に参考にしていただければと考える。
 
ページトップへ
前ページへ戻る
| 浄化槽とは | 浄化槽普及促進ハンドブック(令和4年度版) | 行政関連 | 広報データ | プロフィール | 会員専用ページ | リンク集 | コンプライアンス | HOME |
一般社団法人 浄化槽システム協会
〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-32 芝大門ビル5階 TEL:03-5777-3611 FAX:03-5777-3613