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鉄電解リン除去装置を組み込んだ
高度処理浄化槽の構造・機能と維持管理
佐藤 吉彦 フジクリーン工業株式会社
品質保証部
(月刊浄化槽2013年 8月号)
1.はじめに
2.リン除去の必要性と開発の経緯
3.窒素・リン除去型高度処理浄化槽の構造・機能
4.維持管理の重要性
5.リン除去機能に関する改善
6.まとめ
 
1.はじめに

  鉄電解リン除去装置を組み込んだ戸建て住宅用の窒素・リン除去型高度処理浄化槽として、弊社CRX型が発売されてから、既に10年以上が経過しており、今までに、その開発経緯や維持管理について種々の報告をしている1)-8) 。この間に、第31回環境賞 環境大臣賞・優秀賞、第10回日本水大賞 経済産業大臣賞等を受賞し、多くの評価を得ており、現在もリン除去が可能な戸建て住宅用(5〜10人槽)浄化槽の唯一の型式として、設置が進んでいる。
  窒素・リン除去型高度処理浄化槽には“生物学的窒素除去法(窒素除去)”と“鉄電解法(リン除去)”という大きく異なる原理(生物学と電気化学)を基にした処理法が、一つの浄化槽に組み入れられている。それぞれのメカニズムを改めて理解して頂き、今後の保守点検に生かして頂ければ、処理機能の向上に繋がると考え、本稿では、窒素・リン除去型高度処理浄化槽の必要性、構造・機能及び維持管理の留意事項について報告する。
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2.リン除去の必要性と開発の経緯

  我が国の公共用水域における環境基準達成率は、平成22年度においても全体では87.8%で改善傾向にはあるが、改善にあるのは河川のみであり、依然として海域・湖沼については横ばい状態である。
  昭和60年に湖沼法が施行され、指定湖沼の制度が創設されたとはいえ、COD、全窒素、全リンの環境基準達成率は、ともに極めて低い状態で推移しており、富栄養化傾向は依然として改善していない状況である。特に湖沼については、平成15年度に初めて50%を超えたが、依然として53.2%と低い傾向に留まっている。これは、平成15年度より調査対象湖沼を追加したことにより、見かけ上の達成率が向上しているのみであり、この10年間で改善されたとは言えない状態である。
  一例として茨城県内の指定湖沼の水質の推移を見てみると9) 、窒素については全体的に横ばい傾向であるが、リンについては削減どころか、どの湖沼も上昇傾向である。特に、霞ヶ浦の北浦が近年高い値を示しており、早急な対策が望まれている。残念ながら、同県内の霞ヶ浦(西浦、北浦、常陸利根川)、涸沼、牛久沼、全ての指定湖沼において、あてはめられた類型の基準値を達成している項目は一つもない状態が継続されている9)
  また、霞ヶ浦における流入汚濁負荷割合で特にリンについては、生活排水によるものが5割近くを占めており10) 、ここでも、その対策の必要性が示唆されている。
  このような現状を踏まえて、指定湖沼として指定されている霞ヶ浦(北浦)や、神奈川県における水道水源地域(相模湖、津久井湖など)、猪苗代湖ならびに仙台市等においては、各種条例や要綱に基づき窒素・リン除去型のみを浄化槽市町村整備推進事業の対象とするなど、戸建て用の浄化槽においてもリンの除去が強く求められている。
  一方、十数年前においては、公共用水域の中で,内海,内湾,湖沼などの閉鎖性水域では窒素,リンなどの栄養塩類の流入により富栄養化については進行段階と見られ、閉鎖性水域の水質改善を図るためには,BODやCODなどの有機物質だけでなく,窒素やリンなどの栄養塩類の流入削減が必要不可欠であると言われていた11)
  このような背景から、窒素,リン除去型生活排水処理システムが注目されて中規模以上の浄化槽(処理対象人員51人以上)では,様々な処理方式の窒素,リン除去型浄化槽が開発されていたが、小規模の浄化槽(処理対象人員5〜50人)では,嫌気好気循環法による窒素除去型の浄化槽は存在するものの,リン除去型浄化槽はコスト面や維持管理面の問題で実用化が遅れていた。
  他方,20年近く前から,小規模生活排水処理システムにおけるリン除去の研究は種々行われており12)-15) ,その中で“鉄電解法”の開発により,戸建て住宅用生活排水処理システム(処理対象人員5〜10人)においても,利用可能となった。
  この鉄電解法については、森泉ら16)-18) が多くの報告をしているが、簡便な操作で流入負荷に応じて安定したリン除去が可能となり、当社では維持管理頻度に適応した方法として、戸建て住宅用途の浄化槽について採用することとなった。
  この時期に筆者ら19) は,円筒形担体を用いた担体流動生物濾過法により生活排水処理の効率化について研究していたので,この方式と鉄電解法を組み合わせた,窒素・リン同時除去型の戸建て住宅用生活排水処理システムについて開発を行った。

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3.窒素・リン除去型高度処理浄化槽の構造・機能

 3.1 処理方式

  戸建て住宅用の窒素・リン除去型高度処理浄化槽の処理フローと処理水質をFig.1、全体模式図を Fig.2 に示す。
  本システムは,一次処理に嫌気濾床槽,二次処理に担体流動生物濾過槽を採用し,処理水槽からの硝化液循環による生物学的脱窒機能と担体流動生物濾過槽での鉄電解法によるリン除去機能を組み合わせている。


Fig.1 CRX型の処理フローと処理水質




Fig.2 CRX型の全体模式図

  また,嫌気濾床槽の上部を流量調整のための一時的な貯留槽とし,風呂水などの急激な流入変動に対しても各単位装置の滞留時間の極端な減少を生じることなく,処理機能を安定的に確保するための機能も組み込まれている。

 3.2 嫌気濾床槽と流量調整装置

  嫌気濾床槽第1室内には嫌気濾材として波板状濾材が充填され,また,嫌気濾床槽第2室内には骨格球状濾材が充填されている。流入した汚水は固液分離と嫌気性処理が行われ,同時に循環水中の硝酸性窒素,亜硝酸性窒素の脱窒も行われる。
  次に,嫌気濾床槽で処理された汚水は移送用エアリフトポンプによって,担体流動生物濾過槽に移送される。嫌気濾床槽第2室と担体流動生物濾過槽の間には戻し堰があり,移送された汚水の内,循環水量および放流水量以外の余剰水は戻し堰から嫌気濾床槽第2室へ溢水して戻る。したがって,循環水量と放流水量に相当する量の汚水が,担体流動生物濾過槽にて処理され処理水槽に移流する。また,処理水槽底部より常時エアリフトポンプによって循環水が嫌気濾床槽第1室に移送される。
  循環移送量はおおむね4Q(Qは1日の総流入汚水量)を目安として移送する。循環による効果として, @担体流動生物濾過槽で処理された硝化液の嫌気濾床槽での脱窒,A逆洗時の汚泥移送で取り残された固形物(処理水槽底部から)の除去,BDO(溶存酸素)を含んだ一定水量の通過による濾過部の嫌気化の防止,Cミジンコなど後生動物の大量発生の抑止などが期待される。

 3.3 担体流動生物濾過槽

  担体流動生物濾過槽には,中空円筒形の担体が充填されており,散気装置より上部は好気処理を行う「好気部」、下部は浮遊物質などの固形物の濾過を行う「濾過部」に分かれる。通常「好気部」では散気が行われ,流動する担体の表面に付着した微生物の働きによって,汚水中の有機物の分解,浄化とアンモニア性窒素の硝化が行われる。「濾過部」では静止している担体によって固形物の濾過(固液分離)が行われる。
  逆洗運転は,ブロワに付属したタイマによって,設定時刻になると空気の吐出が散気から逆洗に切り替わり,担体流動生物濾過槽底部に取り付けられた逆洗装置から空気が吐出され,槽内の撹拌混合が行われる。このようにして「濾過部」で捕捉された固形物を担体から剥離させ,逆洗と同時に汚泥移送用エアリフトポンプが作動し、剥離した固形物を槽底部より嫌気濾床槽第1室に移送する。なお,バルブとタイマの操作によって,逆洗頻度や汚泥移送量は調節可能としている。

 3.4 リン除去装置(鉄電解法)

  リン除去装置の構成(中継ボックスがある旧タイプ)を Fig.3 に示す。セルは主にプラスチック製のセルベース,鉄電極および防水コネクタ付き電源ケーブルから構成され,鉄電極は固定ボルトを介してセルベース内で電源ケーブルと接続されている。制御ボックスは鉄電極へ一定の電流を供給するほか、各種の警報機能を電子制御している。なお、電極表面に酸化膜が発生するのを防止するため、極性転換を1回/日行う機構としている。
  鉄電極より鉄イオンを溶出させる装置、すなわち、制御ボックス、中継ボックス(現仕様には無い)、セル(2セット)をまとめて、全体としてリン除去装置と呼んでいる。
  担体流動生物濾過槽内水中に浸漬された2枚の鉄電極間に直流電圧を加えると電流が流れ,陽極より2価の鉄イオン(Fe2+)が溶け出す電気化学反応を用いており、そのメカニズムをFig.4に示す。



Fig.3 リン除去装置の概要(旧タイプ)




Fig.4 鉄電解法のリン除去メカニズム

  この2価の鉄イオンは水中の溶存酸素(O2)により酸化されて3価の鉄イオン(Fe3+)に変わるとともに,水中のリン酸イオン(PO43+)と反応してFePO4などの不溶性のリン化合物を生成させ凝集沈殿する。濾過部で捕捉されたリン化合物は逆洗,汚泥移送によって嫌気濾床槽第1室に移送される。ここで貯留されたリン化合物は汚泥とともに清掃時に槽外に搬出される。

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4.維持管理の重要性

  窒素・リン除去型高度処理浄化槽では、リン除去については、“鉄電解法”が用いられていることは前項で述べたが、窒素除去には、一般に家庭用規模の浄化槽に用いられている“生物学的窒素除去法”を採用している。“生物学的窒素除去法”は、生物学的な処理法であり微生物の働きを用いていることが、大きな相違点である。このため、リン除去に関わる保守点検内容と、窒素除去に関わる保守点検とでは、別の考えが必要である。


 4.1 リン除去に関して

  リン除去に関しては、前項で示したリン除去装置(Fig.3)の維持管理が重要となる。この装置は、通電する必要があり、その取扱いには十分注意する必要がある。また、メンテナンスも重要で、交換も必要となる。中でも、鉄電極は鉄イオンが溶出することにより、常時、減耗していくので、消毒剤と同様に定期的な補充(この場合は交換と呼んでいる)が欠かせない。この鉄電解法は、鉄イオンが溶解していく条件を整えてやれば、あとは、化学的に反応が進むものである。(条件によっては、反応速度は変化する。)
  なお、制御ボックスの警報ランプは、鉄電極に所定の電圧をかけても設定した電流が流れない状態で点灯し、個別にその要因は異なるので、各項目を確認の上、適切な対応が必要である。点灯時の対応チャートをFig.5に示す。
  標準的な鉄電極の経日変化をFig.6に示すが、不均一に減耗した鉄電極が脱落する恐れがあるため、保守点検時に定期的(4ヶ月ごと)に交換を行うことが、リン除去をより安定的に継続させる必項条件である。しかしながら、当社が実施した現地調査においては、たびたび交換時期が遅れている状況が見られた。
  5,7人槽の2セルで通電した場合は、パワー調整ダイアル7設定での減耗量を標準としており、この状態で4ヶ月の保持量がある。従って、ダイアル10設定での稼動では、標準交換期間の4ヶ月までは鉄電極が保持できないので、点検回数を増やし、より高い頻度で鉄電極を交換するなどの対応が必要である。(10人槽ではセルが3個あるためパワー調節ダイアル10の設定でも4ヶ月の保持が可能。)


Fig.5 警報ランプ点灯時の対応チャート




Fig.6 鉄電極の経日変化


 4.2 窒素除去に関して

  窒素除去については、その処理メカニズムは、Fig.7に示すが、硝化菌、脱窒菌の働きによるものであり、保守点検にて直接微生物の反応を促進することは出来ないため、各反応に関する細菌がいかに働きやすい環境を槽内に整えるかが鍵となる。
  一般に、生物学的窒素除去法は温度による影響を受けやすく、低温時、特に水温13℃以下では、微生物の反応が遅くなり、そのため窒素の処理性能にも大きな影響を与える。さらには、脱窒反応において水素を要し、この水素供与体としてBOD源等が用いられる。一般の家庭用浄化槽では、流入BODに対してT-Nはあまり高くない(50mg/l以下)ので、問題が発生する場合は少ないが、建物の使用用途が事務所や集会所等のし尿系排水が中心となる建築用途では、T-Nに対してBODが不足し、窒素除去が不十分となる可能性がある。
  生物学的窒素除去の場合、Fig.7 に示したように、【生物学的硝化】【硝化液循環】【生物学的脱窒】の3段階のどこが律速になっているかを判断する必要がある。そのためには、処理水のNH4-N, NO3-N, NO2-N濃度、さらには循環量を測定する必要がある。



Fig.7 生物学的窒素除去法

  流入水中では、窒素の多くがタンパク質やアミノ酸等の有機性窒素またはNH4-N(アンモニア態窒素)の状態であり、有機性窒素は様々な微生物の働きによりNH4-Nに分解される。酸化によりNH4-NをNO3-NまたはNO2-Nにするためには、十分な酸素を供給し、硝化菌が安定して活動できる環境を保つ必要がある。したがって、保守点検時には担体流動生物ろ過槽のDO測定などにより、酸素不足や散気管の目詰まりの有無等を確認する必要がある。次の段階が脱窒過程になるが、この反応のためには、適切な循環水量、十分な脱窒菌との接触時間、嫌気状態等が条件となる。したがって、保守点検時には嫌気ろ床槽のDO測定等により嫌気状態の確認、短絡の有無、循環水量の調整等を行う必要がある。
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5.リン除去機能に関する改善

 5.1 ハード面(リン除去装置)に関する改善

  リン除去装置において、信頼性向上のために改善、改良を常に進めているが、残念ながら、一部の初期製品において、中継ボックスの内部結露による基盤異常が認められており、都度、改善を図ってきた。今回、さらなる信頼性の向上のため、コネクタ部分も含め、リン除去装置全体について見直しを行った。
  従来は、槽内に中継ボックスを設置し、ここでセルを防水コネクタにより接続している構造としていた(Fig.3 参照)。本年4月より、この部分を防水コネクタを介さずに、制御ボックスとセルを直結する新しい方式(完全に樹脂化した分岐部)とし、“セル・接続ケーブルセット”という一つの部品に改善した。その改善内容をFig.8に示す。今までのように、セル部分のみの取り外しは出来ない構造となるが、浄化槽設置時のリン除去装置の取付や、維持管理時における鉄電極の交換については、今までどおりの作業が可能となっている。
  さらには、これまで7年としていた標準交換期間の目安についても検討を重ねた。セル・接続ケーブルセットについては10年を想定しており、制御ボックスについても今までの実績から10年が妥当と判断でき、コスト面についても大幅に改善を図った。5-7人槽におけるリン除去装置(電気代は除く)の試算結果をFig.9に示す。



Fig.8 リン除去装置の改善内容




Fig.9 リン除去装置に関するランニングコストの試算

  標準交換期間で交換を実施した場合において、今回の改善による削減率を図中に示したが、装置全体では従来より38%の削減となった。しかしながら、制御ボックスの交換実績は10年間でも数%程度であり、十分に信頼性があるとものと考えている。上記のように中継ボックスについては、今回の見直しで無くなったため、今後はセル・接続ケーブルセットについて、鉄電極の毎年の予算化とともに、予算の積み立てが必要である。
  今後も、信頼性、コスト面ともに、さらなる改善の検討を継続する。

 5.2 ソフト面(維持管理)に関する改善

  リン除去については、最近の調査結果や今までの事例から、より安定的にリンを除去するために、昨年7月、保守点検内容について一部見直した。
  今までの維持管理要領書では、パワー調整ダイアルの設定については、制御ボックスの設定確認として、「使用水量から換算して相当人員を求め、この“相当人員”をパワー調整ダイアルに合わせる」ことを原則として表記していた。実際には、正確な使用水量を算出することが難しい場合が多いので、カッコ書きの“実使用人員または人槽”での設定をお願いしており、研修会等では“実使用人員以上の設定”を推奨していた。
  最近の事例では、パワー調整ダイアルが“実使用人員”に設定されていた場合でも、しばしばリン除去の不安定さが見られ、中でも人員比が0.6以上の場合において、リン除去の不安定さが多く見られた。これより “実使用人員=パワー調整ダイアルの設定”では不十分な場合があり、より多くの現場で安定的にリン除去機能を維持するためには、実使用人員を超えるパワー調整ダイアルの設定も必要な場合があると判断した。
  一方で、人槽どおりのパワー調整ダイアルの設定で稼動している施設では、T-P 1.0 mg/l以下の割合(T-P適合率)が15/16=94%と高い値を示した。
  以上のことから、パワー調整ダイアルの設置時における初期設定は、人槽と同じに設定し、稼動後しばらくは、“パワー調整ダイアル=人槽”で運転し、パックテストの結果が良好(目安としてT-P 0.2 mg/l以下)であり、低負荷(人員比0.6未満)の場合においてのみ、パワー調整ダイアルの設定変更(低減)を実施することとした。
  パワー調整ダイアルの設定フローをFig.10に示し、その結果としての実使用人員とパワー調整ダイアルの設定目安例をTable 1に示す。但し、これはあくまでも個別の例であり、実際にはFig.10の設定フローに従い調整を行う。
  最後に、リン除去が不安定な場合の要因についての対応一覧を、Table 2に示す。



Fig.10 パワー調整ダイアルの設定フロー


Table 1 パワー調整ダイアルの設定目安例



Table 2 リンが除去されない原因と対応方法

 
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6.まとめ

  S市おいては、現在稼動中の300基程度と今後の設置が予想される数百基を合計すると、500基以上の窒素・リン除去型高度処理浄化槽が整備されることとなり、ひとつの自治体に匹敵するほどの大きな汚水処理施設に相当する。こうした地域ではその維持管理体制の整備が緊急の課題である。
  現状を鑑みると、維持管理体制の構築には自治体、維持管理業者のみでなく、メーカーも参加する必要性が認められる。これによって、常に新しい情報を共有し、適切な水質評価を行う等、レベルの高い組織の構築が実現し、本来の目的である閉鎖性水域の富栄養化の改善が果たせるものと考えている。
  霞ヶ浦をはじめとして、富栄養化の改善の促進に向けて、リン除去の必要性が緊急の課題となっている中で、窒素・リン除去型高度処理浄化槽の普及がさらに進み、公共用水域の水質改善に少しでも貢献できれば幸いであり、今回の報告が、少しでも役に立てば望外の極みである。
 
参考文献
1) 井村正博,鈴木栄一,手塚圭治、水野真一(2001)窒素・リン除去型家庭用浄化槽,環境技術,30, 682-686.
2) 鈴木栄一,井村正博(2001)リン除去型家庭用浄化槽の施工・維持管理について,月刊浄化槽,No.308, 31-38.
3) 佐藤吉彦,鈴木栄一,手塚圭治、水野真一,井村正博,北尾高嶺(2003)担体流動生物濾過法に鉄電極法を組み込んだ方式による戸建て住宅排水の高度処理化,水環境学会誌,26,601-606.
4) 井村正博,鈴木栄一,手塚圭治、水野真一(2004)窒素・リン除去型浄化槽,環境技術,33, 666-670.
5) 手塚圭治(2004)高度処理家庭用浄化槽の開発,季刊環境研究,No.135, 15-21.
6) 井村正博(2008)窒素・リン除去高度処理浄化槽の普及啓発活動について,月刊浄化槽,No.381, 19-21.
7) 井村正博(2008)水環境と生態系の回復を目指した水域の富栄養化をくい止めるための意識啓発活動,第10回日本水大賞受賞活動集,53-57.
8) 佐藤吉彦(2012)窒素・リン除去型高度処理浄化槽,月刊浄化槽,No.435, 29-32.
9) 茨城県霞ヶ浦環境科学センターHP
10) 国土交通省関東整備局霞ヶ浦河川事務所HP
11) 中島淳(2001)小規模生活排水対策の近未来と浄化槽システム,用水と廃水,43(1),27-35.
12) 伊与亨(1998)生物膜法の処理システムにおける脱リン技術アルミニウム電解脱リン法,第1回水環境学会シンポジウム,101.
13) 小川雄比古(2000)小規模生活排水処理施設のリン除去,第34回日本水環境学会年会講演集,55.
14) 中島淳(1997)リン吸着剤を用いた生物膜濾過法によるBOD,窒素,リン同時除去,第31回日本水環境学会年会講演集,122.
15) 板坂直樹,高梨啓和(1999)水中低濃度リンの除去・回収用吸着剤の開発状況と課題,用水と廃水,22(5),37-43.
16) 森泉雅貴,横井幸夫,福本明広,山本康次,奥村早代子(1997)鉄電解溶出によるリン除去システムの基礎的検討,SANYO TECHNICAL REVIEW,29(2),100-104.
17) 森泉雅貴,福本明広,山本康次,奥村早代子(1999)鉄電解溶出によるリン除去システムの基礎検討,水環境学会誌,22,459-464.
18) 森泉雅貴,福本明広,小田謙治,山本康次,奥村早代子(2001)高度水処理技術における鉄電極法の応用,水環境学会誌,24,607-612.
19) 佐藤吉彦,鈴木栄一,水野真一,永峯伸悟,井村正博,北尾高嶺(2003)中空円筒形担体を用いた生物処理の効率化,水環境学会誌,26,27-32.
 
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