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浄化槽分野における低炭素化の検討事例
古市 昌浩 株式会社ハウステック (月刊浄化槽 2011年 5月号)
1.はじめに
2.浄化槽の処理方式と処理性能の変化
3.調査・算定対象の選定
4.温室効果ガス排出量の調査・整理5)〜15)
5.2020年度に向けた低炭素化の検討
6.成果及び今後の課題
7.最後に
 
1.はじめに

  地球温暖化対策は、京都議定書の目標達成のための施策の強化に加え、日本国が国連総会で表明した「2020年までに1990年比25%削減」1)を実現するため、低炭素社会への経済社会の変革を図ることが必要である。基準年度と2006年度の温室効果ガスの排出状況2)を表-1に示す。

表-1 温室効果ガスの排出状況 (百万t-CO2)

  2006年度の実績は、基準年度に対し6.2%増加しており、2020年度での目標達成のためには、積極的な施策の立案とその実行が必要と考えられている。
  汚水処理分野では、下水道等の分野において調査研究が進められており、浄化槽分野においても、省エネブロワを採用した浄化槽の設置促進事業が平成21年度より国の助成対象となったところである。
  浄化槽分野における温室効果ガス排出量の更なる低減を図るためには、製造、設置工事、使用、廃棄の各段階における、相応の低炭素化に向けた取組みが必要3)となる。
  そこで、各段階におけるエネルギー消費量及び温室効果ガス排出量を調査・整理・検討することにより、今後の低炭素社会実現に向けた、浄化槽関連の施策等を検討するための基礎資料とすることとした。以下にその概要を記す。
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2.浄化槽の処理方式と処理性能の変化

  浄化槽は、平成12年(2000年)の浄化槽法改正によるみなし浄化槽新設の原則禁止、建築基準法改正による性能規定化、および平成17年(2005年)の浄化槽法改正による処理水質(BOD20mg/L以下)の制定等4)により、浄化槽の処理方式と処理性能が大きく変化した。
  みなし浄化槽新設の原則禁止により、浄化槽にて、生活排水すべてが処理されるようになり、放流水の汚濁量は1/8に低減された。
  みなし浄化槽と浄化槽の違いを図-1に示す。

図-1 みなし浄化槽と浄化槽の違い

  次に、浄化槽の処理方式と処理性能の推移を、出荷ベースで図-2に示す。

図-2 浄化槽の処理方式と処理性能の推移

  2008年度には性能評価型が98%、高度処理型は55%まで伸張している。2009年度以降は、高度処理型の比率が更に高くなっていると推測される。
  高度処理型は高度なBOD除去能力を有する機種の他、窒素除去やリン除去の機能を有する機種4)もある。参考までに高度処理型の処理性能(例)を表-2に示す。

表-2 高度処理型の処理性能(例)
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.調査・算定対象の選定

  今後の低炭素社会実現に向けた、浄化槽関連の施策等を多角的に検討することができるよう、温室効果ガス排出量の調査・算定方法を検討した。

 3.1 調査対象年度
 調査対象年度は、地球温暖化対策の基準年となる1990年度、JISの人員算定改正と告示型から性能評価型への転換期となった2000年度、および近々の状況として2008年度を対象年度に設定した。

 3.2 浄化槽の規模・処理方式

 浄化槽の規模は、出荷・設置基数の大多数3)を占める戸建住宅向けの5〜10人槽とし、処理方式は近年高度処理化が進んでいることからBOD20型と高度処理型を調査の対象とした。
  なお、みなし浄化槽は2001年以降出荷されていないことから参考として整理した。

 3.3 温室効果ガス
  調査範囲は、製造、設置工事、使用の各段階を対象に調査を行った。
  なお、ライフサイクルとしては廃棄段階についても整理が必要であるが、有用なデータが乏しいため、今回は省略した。
  温室効果ガス排出量の調査対象を図-3に示す

図-3温室効果ガス排出量の調査対象

  図-3の非エネルギー起源である直接排出と処理水について、以下、補足する。
  直接排出とは、排水処理段階で排出される温室効果ガスを示し、対象はCH4、N2Oとした。CO2については、生活排水中の有機物は生物由来であり、環境中の炭素循環量に対して中立(カーボンニュートラル)であることから対象外とした。
  処理水については、処理水中に含まれる有機物や窒素は、放流先において分解を受け、CH4およびN2Oを排出することが指摘されている。ここでは、図-2に示した浄化槽の処理方式と処理性能の推移を基に、試算を行うこととした。
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4.温室効果ガス排出量の調査・整理5)〜15)

  
 4.1 年度別温室効果ガス排出量
  浄化槽1基あたりの温室効果ガス排出量を年度別に算出し比較した。1990年度を100%とした算出結果を表-3に示す。

表-3 製品仕様と年度別温室効果ガス排出量の比較

  表-3より、2008年度の浄化槽の温室効果ガス排出量は、1990年度比79.5%であり基準年に対し20.5%減と相応の低炭素化が図られていた。しかしながら、25%削減を目標とした場合には、更に4.5%の削減が必要であることが明らかとなった。

  4.2 温室効果ガス削減量の内訳
  1990年度から2008年度においての温室効果ガス削減量の内訳を各段階別、主な低炭素化手法別に分類して図-4に示す。

図-4 温室効果ガス削減割合(1990年度〜2008年度)

  図-4より、削減量を指数として段階別にみてみると使用段階が全体の91.8%を占めている。低炭素化手法では、直接排出量の低減40.2%、ブロワの省エネ22.7%、浄化槽のコンパクト化19.8%、高度処理化が17.2%であった。
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5.2020年度に向けた低炭素化の検討

   2020年度の目標達成のためには、1990年度比で、更に4.5%削減する必要があるため、有用と考えられる低炭素化手法を抽出し、各手法について検討を試みた。

  5.1 低炭素化手法の抽出
  1990年度〜2008年度での温室効果ガス削減実績等を参考に低炭素化手法を抽出し、段階別の有効性と排出原単位試算の対象について検討した。結果を表-4に示す。

表-4 低炭素化手法とその有効性

  5.2 低炭素化手法の有効性
  表-4の中から各低炭素化手法の有効性についての検討結果を抜粋して以下に示す。
(1) 浄化槽のコンパクト化
   1990年度から2008年度においての温室効果ガス削減量の内、コンパクト化による削減量は19.8%を占めており、2020年度に向けた低炭素化においても有効な手段であると考えられた。また、表-5に示すとおり製造から廃棄段階までの多岐にわたり効果を期待することができる。

表-5 浄化槽のコンパクト化による効果(例)

(2) ブロワの省エネルギー化
   1990年度から2008年度においての温室効果ガス削減量の内、ブロワの省エネルギー化による削減量は22.7%を占めていた。
 本低炭素化手法は、既に低炭素社会対応型浄化槽としての省エネ基準(ブロワの消費電力値)が設定されており、2020年度に向けた更なる低炭素化を期待するためには、省エネ基準値の再検討が必要と考えられる。
 ブロワの省エネルギー化にあたっては、定格消費電力の削減、必要風量の削減の2つの方向性があるが、機械的あるいは処理能力維持のためには限界がある。また、製品開発の傾向として浄化槽の高度処理化や汚泥発生量の削減があるが、これらはブロワ風量の増大を伴うことが多いなど、温室効果ガス排出量の増減はブロワのみでなく浄化槽全体で捉えて評価することが肝要である。
(3) 直接排出量(CH4、N2O)の低減
   1990年度から2008年度においての温室効果ガス削減量の内、直接排出量の低減による削減量は40.2%を占めており、最も低炭素化に貢献した手法となっている。
 直接排出量の算出には最新の調査データ15)を用いたが、必ずしも十分なデータが蓄積されているとは言えず、今後、浄化槽等からのCH4、N2O排出量の精緻化を行う上で、継続してデータを積み重ねる必要がある。
(4) その他の低炭素化手法
   使用状況に応じた維持管理の実施16)、汚泥の処理・処分17)、資源化や世帯人口の減少に対応した人槽設定・設計等様々な低炭素化手法を抽出したが、現時点では、具体的なデータを得るに至らなかったため、本検討では、排出原単位試算の対象外とした。
 適正な温室効果ガス排出量を得るためには、これら手法の更なる調査・検討が必要である。

 5.3 温室効果ガス排出量の予測
 2020年度に出荷される浄化槽の、温室効果ガス排出量の算出にあたり、2008年度までの傾向に沿って予測した値(トレンド値)と、政策等により低炭素化が促進された場合の値(政策推進値)を試算した。ここではトレンド値とは、これまでの技術開発を鋭意継続すれば達成可能な値であり、政策推進値とは、各低炭素化手法におけるトップランナーの指標を推定し、政策として推進した場合の値と考えてよい。1990年度の排出量を100とした場合の、各年度の算出値を図-5に示す。

図-5 温室効果ガス排出量の推移と目標

(1) トレンド値
   2020年度では、1990年度比73.5%と試算され、25%の削減目標を達成する見通しとなった。
 しかしながら、算出値は新設の浄化槽を対象としており、既設分を含めた低炭素化を推進するためには、新設分の更なる低減あるいは既設分の低減策が必要となる。
(2) 政策推進値
   1990年度比64.4%と試算された。したがって、既設分を含めた浄化槽全体の低炭素化に、相当量寄与できることが示唆された。2008年度から2020年度の削減量を100とした場合の低炭素化手法別の削減割合を図-6に示す。

図-6 温室効果ガス削減割合(2008年度〜2020年度)

  図-6より、ブロワの省エネが全削減量の50.9%、浄化槽のコンパクト化が43.5%と試算されたことから、低炭素化の有効な施策であることが示唆された。

 5.4 みなし浄化槽等の温室効果ガス排出量
 みなし浄化槽やくみ取り便所はエネルギー消費の観点からは温室効果ガスの発生量は小さい。しかし、雑排水がたれ流しとなるなど水環境への影響が大きいため、ここでは直接排出と処理水(+雑排水)の温室効果ガス発生量を試算し、非エネルギー起源として合算した。
 みなし浄化槽、くみ取り便槽(簡易水洗含む)との比較を指数として図-7に示す。

図-7 非エネルギー起源の温室効果ガス排出量

  図-7より、1990年度では、みなし浄化槽の排出量が最も多く、浄化槽の排出量もくみ取り便所の排出量を上回っていたが、2000年度以降、浄化槽の排出量が最も少なくなっている。
  2020年度における浄化槽の排出量は、みなし浄化槽の66.8%まで低減される見通しである。
 以上のことから、みなし浄化槽、くみ取り便所(簡易水洗含む)の合併転換(浄化槽への入替)は環境保全面のみならず低炭素化の面においても有効であることが示唆された。
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6.成果及び今後の課題

   今後の低炭素社会実現に向けた、浄化槽関連施策の検討用基礎資料として、浄化槽の製造から使用の各段階におけるエネルギー消費量及び温室効果ガス排出量の調査及び整理・検討を行った。成果と今後の課題は以下の通りである。

6.1 成果
(1) 浄化槽の製造から使用段階における1基あたりの温室効果ガス排出量は2008年度現在で1990年度比79.5%であった。
(2) 2020年度の温室効果ガス排出量は、トレンド値は1990年度比73.5%、政策推進値は64.4%まで低減されると試算された。
(3) ブロワの省エネルギー化及び浄化槽のコンパクト化は温室効果ガス排出量の削減に寄与し、かつ、削減量も多いことから、効果的な低炭素化手法であることがわかった。

6.2 今後の課題
(1) 浄化槽から排出されるCH4、N2O量の精緻化とCH4、N2O排出抑制型浄化槽の開発、汚泥減容化、資源化などは、有効な低炭素化手法であり、今後の技術開発および評価方法の確立が必要。
(2) 浄化槽はみなし浄化槽やくみ取り便槽(簡易水洗含む)と比べて非エネルギー起源の温室効果ガス排出量が少ないことから、みなし浄化槽、くみ取り便所の浄化槽への積極的な転換が必要。
(3) 浄化槽の維持管理における低炭素化の推進(例:燃料の削減、汚泥濃縮車の導入等が有効と考えられる)。
(4) 更なる浄化槽分野の温室効果ガス排出量の評価により、今後の海外展開におけるCDM(Clean Development Mechanism)等への活用や国際貢献が期待される。
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7.最後に

  本調査・検討は平成21年度の環境省委託業務として実施されたものです。
 ご協力いただいた関係各位に深謝申し上げます。
 
参考文献
1) チャレンジ25 HP(2011年3月現在):
2) 温室効果ガスインベントリオフィス(2008):日本国温室効果ガスインベントリ報告書
3) 社団法人浄化槽システム協会(2010):平成21年度浄化槽の低炭素化に向けた調査検討業務報告書
4) 社団法人浄化槽システム協会(2008):浄化槽普及推進ハンドブック
5) 地球温暖化対策の推進に関する法律施行令第三条(平成20年6月13日改正):排出係数一覧表
6) 日本航空宇宙工業会(1999):複合材料のインベントリデータ構築に関する調査報告書
7) 化学経済研究所(1993):基礎素材のエネルギー解析調査報告書
8) 未踏科学技術協会(1995):環境負担評価システム構築のための基礎調査研究・調査報告書
9) プラスチック処理促進協会(1993):プラスチック製品の使用量増加が地球環境に及ぼす影響評価報告書
10) 温室効果ガス排出量算定に関する検討結果 第4部 廃棄物分科会報告会(H18年8月)の自然界における生活排水の分解に伴って排出されるCH4およびN2Oの排出係数を利用。
11) 財団法人日本環境整備教育センター(2002):平成13年度浄化槽のライフサイクルアセスメントに関する調査報告書
12) 社団法人浄化槽システム協会(2003):登録浄化槽施工実務者ガイド
13) 国土交通省:国土交通白書平成14年度(平成12年度データ)の自家用車値
14) 土木学会論文集No706/Z−23,19−29,2002.5:し尿・浄化槽汚泥等の液状廃棄物処理施設のライフサイクルインベントリー分析
15) 環境省調べ(2010)
16) 環境省廃棄物対策課浄化槽推進室、財団法人日本環境整備教育センター(2008):平成19年度浄化槽の維持管理に関する調査・マニュアル作成委託業務報告書
17) 岡城(2008):汚泥再生処理センターと浄化槽汚泥濃縮車、都市清掃、61、431-437.
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