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HOME > 浄化槽とは > 技術データ > 講座 > 浄化槽技術者のための土質力学[1] 浄化槽と土質力学の関わり〜本講座を開設するにあたって〜
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浄化槽技術者のための土質力学
[ 1 ] 浄化槽と土質力学の関わり
〜本講座を開設するにあたって〜
佐藤 吉彦
(社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2012年3月号)
1.はじめに
2.土質力学(日本大百科全書2)より)
3.浄化槽と土質力学との関わり
4.施工上の問題点と課題(強度評価)
5.本講座の進め方
6.参考書
7.おわりに
1.はじめに

  本誌を発行している(財)日本環境整備教育センターが、浄化槽設備士の所轄機関となって久しいところである。以前より、浄化槽関連の施工に関わる情報等についても発信を行っているが、今後は、よりその業務が求められることになるものと考えている。このような事情に鑑みて、今回、“施工に関する講座を”との要望に答え、浄化槽の地中に於ける状況や挙動を科学的、工学的、力学的に見つめることとし、「土質力学」を一つの視点として、講座を開設することとした。

  土質力学 [soil mechanics]とはウィキペディア1)によれば、“土の力学的性質や透水性などの各性質、地盤内の応力と変位、土圧、支持力、斜面の安定などの理論と応用について扱う力学”とされている。また、より広い分野の工学をさす地盤工学 [geotechnics] と類義語であり、土木工学の基礎となる3力学「構造力学」「水理学」「土質力学」のうちの一つを形成している。

  人間は土 [soil]の上に建物を建て生活をしている。浄化槽も、その建物の施設の一部であり、設備の一つである。土は身近で重要な存在であるが、その挙動や性質には未解明の部分も多く、現在でも数々の問題を生じている場合がある。文化が進み産業が発達するに従って、土木や建築を中心とする建設事業の数と規模は、著しく増大しているのが現状である。
  これらの施設はいずれも大地の上に基礎を置き、あるいは大地に人工を加えることによって構築される点で共通した特色を持っている。浄化槽も一般には、地中に埋設される施設(装置)であるため、われわれ浄化槽関連の技術者に於いても、大地を構成する土や岩石などに関する科学的知識を持つことが大切であり、ここに土質力学の重要性が認められてくる。

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2.土質力学(日本大百科全書2)より)

  「土質力学」は大別して土性論と土の力学とからなる。前者は土自身の性質とその力学特性を扱う、いわば土の“材料学”と“材料力学”であり、後者は土からなる構造体としての地盤や土構造物の力学を扱う土の構造力学というべきものである。
  土の“材料学”は土の基本的性質を究明するもので、それらは土粒子の大きさと土の構造、土の状態を表す諸量としての粒子の比重、密度、間隙(かんげき)比、含水比、飽和度、粒度とコンシステンシー [consistency] (水分による土の状態の変化)、土の工学的分類などである。

締固め
  盛土などの土構造物や基礎地盤を構成する土の工学的性質を改善するために、転圧などによって土の密度を増加させることをいう。締固めによって、土の密度を増加させることにより、上面に荷重が載ったときの沈下が抑えられる、土の強さが増す、雨水などの浸透を抑えるなど、安定した盛土などの土構造物を構築することができる。これらは、土構造物の耐震性の向上にもつながる。

  土の“材料力学”の主要項目は、土の締固め理論、地下水および毛管水の流動理論、土の圧縮と圧蜜の理論、土の強度理論などである。土の締固めは、土に機械的な方法でエネルギーを加えて間隙中の空気を追い出し、その密度を高めることをいい、土を埋め戻したり盛り土するときによく締め固めておくことは土工における原則であり、堤防やアースダムなどのように遮水を目的とする土構造物では特に大切な事項である。
  土中水の流動と圧密および土の強度とは密接に関連しており、これは土の“材料力学”の中心課題である。すなわち、土は外力のもとで圧縮変形と剪断(せんだん)変形をおこすが、透水性の小さい粘土のような土では圧縮変形が長期間継続する圧密現象がみられる。また土中の剪断応力が抵抗値(剪断強度)を超えると、すべりが生じて剪断破壊がおこるが、土の剪断強度がまた圧密によって増大するという複雑な性質がある。ことに最近の「土質力学」では、破壊に至る変形の過程で示す土の力学的挙動を時間変数を取り入れて究明する方向に進展している。

斜面の安定
  斜面破壊に対する安全性、あるいはそれに関連した力学問題のことを指す。土は、剪断強度と粘着力をもつから、ある程度の斜面をかけても自立することができる。しかし、その限度を超えると斜面崩壊を生じ、民家や人命などを奪うこともある。斜面の安定度は、想定した滑り面における、剪断強度と生じる剪断力との比で評価される。


地盤の支持力
  地盤に荷重を加えると地盤は変形し、最終的には破壊に至る。地盤が構造物の荷重を支える能力を支持力といい、通常は圧力で表す。地盤は上に立てた構造物の荷重を支えなければならない。しかし、その荷重が地盤の支持力を上回ると、地盤は崩壊してしまう。そのため、十分な支持力を発揮させるために、構造物を基礎で支えるなどの処置がとられる。

  土の力学には安定の問題と変形と沈下の問題の二つが含まれる。前者は擁壁や矢板(やいた)に作用する土圧の算定、基礎の支持力の計算、斜面の安定解析などにおいて普通にみられるもので、いずれも土の塑性破壊の状態を取り扱っている。
  一方、後者は地盤や構造物の沈下計算において出現するものであり、通常、弾性論または非塑性論を基にして論議される。土は他の構造用材料と異なりその種類や性質が千差万別であり、全体としてのまとまった形を与えることは非常に困難であるが、理論的土質力学ではそれらをいちおう理想化して体系的な取扱いを行うことが少なくない。
  実際の設計計算に取り入れる土の諸性質が理論式や計算手法と同程度の精度をもたねばならないことはいうまでもないが、最近の試料採取技術と土質試験の精度向上とによって、材料や地盤としての土の物理的ならびに力学的性質は非常に詳細に明らかになりつつある。
  近代土質力学がテルツァギー[K.Terzaghi]により体系化されたのは1920年代であり、比較的若い学問といわねばならないが、いわゆる古典としての土の力学から、土の性質を十分組み入れた土質力学への発展をたどりつつある。
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3.浄化槽と土質力学との関わり

  一般に考えると、地球を構成している物質として、土(地盤)、水、空気が、固体、液体、気体の代表的なものである。ここで、水はH2O単体、空気は大部分がN2, O2の混合物、で構成されているのに対して、土(地盤)が何で出来ているかはあまり知られていない。しいて言えば、砂の主成分はSiO2であるが、一般的な認識度は低いと思われる。
  さらには、砂自体は固体であるが、土(地盤)として考える場合、土粒子の集合体であり、密着しているのではなく、空気(気体)を含んだ、さらに地下水が存在する場合は水(液体)も含んだ、複雑な集合体となるのである。このように単に“土”と言う表現だけでは、どの状態を表すかが明確でなく、そのため、いろいろな場合が想定され、固体、液体、気体の3態を含んだ複雑な働きをするものと考えられる。
  このような、“土”のことを、科学的にいろいろな側面から探求する学問が「土質力学」と考えられている。すなわち、“土とは何か?”“土はどのように挙動するのか?”“なぜそのように挙動するのか?”“それらの挙動がどのような工学的意味を持つのか?”を理解する学問と考えられている。
  本講座では、工場生産型浄化槽の施工(設置・埋設)について考えることとし、すなわち、工場で完成された浄化槽(FRP製、DCPD製等)を、設置場所で地中に埋設することを、念頭に講座を進めることとする。一方では、現場施工型浄化槽(コンクリート製等)もあるが、この考え方を応用できるものと判断している。
  実際に、浄化槽を設置・埋設するにあたり、「土質力学」を考慮しているかと言うと、現状は全くされていないのと同じである。浄化槽の設置場所の選定については、建築物がまず優先されており、重要な設備がその次で、おそらく、浄化槽は最後の余った土地に設置・埋設されているものと考えられる。従って、その場所は時々変更を生じ、埋設深さについても同様であり、現状では、嵩上げ300mm以下(通常の製品では)で基準を設けているにも関わらず、必ずしも守られていないのが実情である。
  大規模な浄化槽では、施工管理は十分されているが、数百人以下の規模では、残念ながら十分な施工管理が行われているかは、疑問が残るところである。このような状況の下、浄化槽設備士の果たす役割はさらに重要になってくるものと想定される。浄化槽法では、浄化槽設備士が設置・埋設場所の選定を含め、実地に監督する立場にあり、その役目を改めて認識する必要がある。
  他方、浄化槽本体の設置・埋設のみではなく、これらに必要な槽外の配管(流入管、移流管、放流管等)の埋設においても、「土質力学」は関係してくるものと想定できる。
  現在の浄化槽設備士や浄化槽管理士講習での、施工に関する部分では、その手順を示し、これに従って行うことを丁寧に説明してはいるが、浄化槽には“こういう力”が掛かっているとか、科学的な場所の選定方法や、荷重に対する対処方法までは、示されていないのが普通である。
  一般には、@深埋めする場合、A上部を駐車場にする場合、B降雪地に設置する場合、C側部から荷重がかかる場合、D地下水位が高い場合、等が特殊工事として扱われるが、それに対する具体的な手法まで示されていない。@〜Bは、上部荷重が増加、Cは側圧(交通荷重、土圧増加)が付加、Dは地下水による水圧が付加、されると想定される。従って、これらの場合、荷重がどのように掛かっていて、どれだけの荷重が増加するかを、土質力学的観点から説明を加えることにより、その対応が明確になるのではないかと考える。
  これらのことは、まさしく今回の講座の主旨であり、また、最も目指すところであるので、これから十分にこの講座を活用して頂きたい。
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4.施工上の問題点と課題(強度評価)

  一般的に浄化槽は地中に埋設されるため、通常言われる“土圧”に対して十分な強度を保っている必要がある。このような強度に関する検討としては、以下のようなものがある。
 @ FRP評定3):(財)日本建築センター
 A 浄化槽・部品規格4):(社)浄化槽システム協会
 B 旧JIS A 41015):(財)日本規格協会
  上記の規格において、その実大試験等に於ける評価においては、実際の荷重は水圧を用いて行われている。Bの初期版においては、土中での試験もあったが、その試験の再現性や煩雑さにより水中でのみの評価になった経緯もある。しかしながら、実際に浄化槽が設置され、その後に受ける荷重はいわゆる“土圧”であり、実際に“水圧”で評価されたものと同様であるかの検証は今までされていないように思う。
  水圧による評価は、その対象物に圧力が均等に掛かるため、一見、過酷な試験のように思えるが、今までの結果からは、反対のように考えられる。水圧よる荷重と、土圧による荷重の掛かり方には、どのような差があるのか? また、土圧と言うものの性質はどのようなものか? など疑問点が多いのも実情である。
  さらには、地下水位が高い場合、さらなる荷重が対象物に掛かることは想定できるが、どの程度大きくなるのか? また、どれぐらいの荷重になるのか? も疑問点となってくる。
  このような状況から、筆者は今まで、設置・埋設上の不具合に時々遭遇している。その一例を示すと以下のような場合がある。

@ 崖下や窪地の底部に設置・埋設された状況下で、大雨後に浄化槽本体の破損が発生。
 
写真 1 窪地への設置事例
   
A 崖中や崖際に設置・埋設された状況下で、長年による崖部の土の移動により浄化槽本体の変形が発生。
 
写真 2 崖際への設置事例
   
B 建築物の近傍や、通常以上に深く設置・埋設された状況下で、浄化槽本体の変形、破損が発生。

  上記の場合それぞれに、実際に浄化槽にどのような力が働いているかを、土質力学的に解明できれば、今までにない解析、分析になり、今後の不具合発生防止に極めて役立つものと考えている。

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5.本講座の進め方

  一般に、土質力学と言うと、非常に難しい学問と思われがちなので、本講座では、設置・埋設された浄化槽の状況と関わりを示しながら解説することを目指し、今後、以下のような内容で進めて行くこととする。(表-1 参照)
表 - 1 講座の概要

[1] 浄化槽と土質力学の関わり:佐藤
   今回の内容です。土質力学という学問を提示し、浄化槽との関連を説明します。
[2] 土の基本性質:神谷
   基本的物理量、粒度とコンシステシー、土の工学的分類について説明します。
[3] 有効応力と間隙水圧:森口
   有効応力の原理、間隙水圧(過剰間隙水圧、浸透水圧、サクション)について説明します。
[4] 土の水理特性:神谷
   水頭と動水勾配、透水係数、浸透水圧と浸透破壊、井戸の理論について説明します。
[5] 不飽和土の浸透特性:神谷
   保水性、透水性、透気性について説明します。
[6] 土の締固め:神谷
   締固め試験、締固め曲線、締固めの管理について説明します。
[7] 地盤内の応力と変位:沢田
   半無限弾性体内の応力、地盤の表面沈下について説明します。
[8] 土の圧密:沢田
   圧密特性、圧密理論、沈下量について説明します。
[9] 土のせん断強さ:森口
   せん断応力とせん断強度、せん断破壊現象、地震時の液状化現象について説明します。
[10] 土構造物の安定問題(1):沢田
   斜面安定について説明します。
[11] 土構造物の安定問題(2):沢田
   土圧、支持力について説明します。
[12] 地盤調査法(1):馬
   ボーリング、サウンジングについて説明します。
[13] 地盤調査法(2):馬
   物理探査について説明します。最後に、「講座のおわりに」で締めくくります。 

  なお、今後の講座は、岐阜大学 工学部 社会基盤工学科 地盤防災・保全学講座 の 馬 准教授を中心に執筆して頂くこととなっており、各回の執筆者を表-2 に示します。

表 - 2 執筆者一覧
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6.参考書

 本講座のみでは、「土質力学」のほんの一部しか述べることは出来ないと考えられるので、より詳しく知りたいという方のために、参考書を紹介しておきます。本講座の参考文献として使用する予定のものもあります。

A: 石井 勲 監訳、「土質力学の基礎」
共立出版 2011年4月 3,700円
原著者 Hemanta Hazarika で、土質力学の入門テキストブックとして、本著をもって一歩でもそのような理想の教育に近づくことができることを目指して書かれたものです。
B: 石原 研而 著、「土質力学」
丸善 2001年
最も、基本として用いられている書籍です。
C: 岡 二三生 著、「土質力学」
朝倉書店 2003年
D: (社)地盤工学会、「地盤工学用語辞典」 2002年
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7.おわりに

  今回は、講座のタイトルである「土質力学」について説明し、浄化槽との関連を示し、現在の施工上の問題点と課題との関わりを一例を挙げて説明しました。
  次回から、具体的に「土質力学」の考え方を展開して行きますので、浄化槽の設置・埋設との関わりの理解を進めて頂きたい。また、講座の途中であっても、疑問、質問等があれば、事務局へ連絡を頂ければ、その後の講座への反映も考えていますので、遠慮なく、ご意見をお願い致します。
  最後に、今回の講座が、浄化槽の設置・埋設場所の選定の一助になり、将来的に浄化槽の強度的な不具合発生削減に繋がれば幸いであり、今後の講座の展開を期待しています。
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引用文献
1) ウィキペディア:オープンコンテントの百科事典、http://ja.wikipedia.org
2) Yahoo!百科事典:自然科学、植物、産業、哲学、宗教、経済、法律など、幅広い分野の事柄について、詳しい解説を閲覧できる検索サービス、http://100.yahoo.co.jp
3) (財)日本建築センター,「屎尿浄化槽の構造基準・同解説<1996年版>」, 1996年2月, 第6章, pp487-507
4) (社)浄化槽システム協会,「浄化槽・部品規格<改訂版>」, 2006年3月, pp5-8
5) (財)日本規格協会, 「ガラス繊維強化プラスチック製浄化槽構成部品」, JIS A 4101 1994, pp3-6
(フジクリーン工業株式会社 品質保証部)
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