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HOME > 浄化槽とは > 技術データ > 講座 > 浄化槽工学 第5章 浄化槽と地球環境問題と海外展開 第1節 浄化槽におけるエネルギー消費に伴うCO2排出
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浄化槽工学
第5章 浄化槽と地球環境問題と海外展開
第1節 浄化槽におけるエネルギー消費に伴うCO2排出
手塚 圭治 フジクリーン工業(株) (月刊浄化槽 2011年7月号)
第5章 浄化槽と地球環境問題と海外展開
第1節 浄化槽におけるエネルギー消費に伴うCO2排出
1.1,製造段階
1.2,設置工事段階
1.3,使用段階
4,廃棄段階
5,まとめ
 
第5章 浄化槽と地球環境問題と海外展開

 浄化槽は生活基盤に係わる技術・システムの一つであり、その評価や運用は社会の動きとは切り離せない。そのような意味で、地球環境問題との係わりと生活環境改善手段としての技術移転について、トッピック的に現状を紹介する。
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第1節 浄化槽におけるエネルギー消費に伴うCO2排出

 浄化槽における地球環境問題の1つとして、浄化槽のライフサイクルにおけるエネルギー消費に伴うCO2排出を評価する。
 浄化槽におけるエネルギー消費は、図1に示したように製造段階、設置工事段階、使用段階、廃棄段階の4段階にわけることができる。A社製性能評価型浄化槽(5人槽)の仕様を例に、各段階におけるエネルギー消費量に対応したCO2排出量について、年間あたりの数値に換算して評価する。なお、浄化槽の耐用年数は、「生活排水処理施設整備計画策定マニュアル平成14年度改正版」に30年と示されており、今回はこの数値を使用した。A社製性能評価型浄化槽5人槽の仕様を表1、温室効果ガス排出量の環境負荷単位を表2に示す。
図1 浄化槽のライフサイクルにおけるエネルギー消費によるCO2排出工程

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1.1 製造段階

 製造段階には、浄化槽に使用する部材を生産する際に消費するエネルギーと浄化槽の製造時に消費するエネルギーがある。

(1) 使用部材
   浄化槽の使用部材は、FRP、プラスチック類、塩ビ部品、金属の4種類に大別される。表3に使用部材に関して、エネルギー消費量に対応するCO2排出量を示す。
 
(2) 製造
   製造工程においては、エネルギーは生産設備の稼働の他、工場内外の照明、空調設備などで消費される。製造工程における主なエネルギー源としては、電力、ガスと重油が挙げられる。算出にはA社におけるデータを用いた。
 
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1.2 設置工事段階

 設置工事段階には、工場から設置現場まで浄化槽を輸送するエネルギー消費と浄化槽の施工に関わるエネルギー消費がある。

(1) 輸送
   浄化槽の輸送には、「工場」から「物流センター」の一次輸送と「物流センター」から「施工現場」の二次輸送があり、それぞれ輸送距離は250km、110kmであった。(A社デ−タ値)輸送形態から一次輸送は10トン車、二次輸送は4トン車としてCO2排出量を算出した。なお、それぞれの積載基数は、性能評価型浄化槽を輸送する場合を例とし、8基/車、7基/車とした。6)
 
(2) 施工
   図2に示す施工モデルを設定し、施工時のエネルギー消費に伴うCO2排出量を算出した。
 
  図2  施工モデル図
  A:全幅+1m B:全高+0.26m
C:全幅+0.4m、D:全長+1m
E:全長+0.4m(※フランジ寸法を除く)
 
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1.3 使用段階
 
 使用段階におけるエネルギー消費には、電力(ブロワ)、保守点検、清掃、清掃汚泥の処理、法定検査が挙げられる。

(1) 電力(ブロワ)
   ブロワの消費電力が47.0Wの場合を例として、年間のCO2排出量を表7に示す。
 
(2) 保守点検
   保守点検におけるエネルギー消費は、点検時の移動に要するガソリン消費がほとんどを占めており、保守点検時の移動に関するデータは文献6)より以下のように示されている。また、点検に使用する車輌のCO2排出量は、国土交通省国土交通白書平成14年度(平成12年度デ−タ)の自家用車値を用いた。
   1)1日の平均保守点検実施基数 7.24基
 2)1日の平均走行距離       85.9km
 3)自家用車のCO2排出量      0.188 kg−CO2/km
   また、保守点検回数については浄化槽法に定められた最低回数3回/年を用いて、保守点検時におけるエネルギー消費を算出して、CO2排出量を求めた。
 
(3) 清掃
   清掃におけるエネルギー消費も、保守点検時と同様に移動に伴うガソリン消費がほとんどを占めており、移動に関するデータは文献2)より以下のように示されている。
   1)清掃1件あたりの走行距離  16.1km
 2)バキュームカーの平均燃費   4.1km/L
 3)軽油の比重           0.83
  これらを基にCO2排出量を算出した。
 
(4) 汚泥処理
   浄化槽から発生する汚泥は、屎尿処理施設に投入されて膜分離高負荷脱窒素処理方式等を用いて処理されており、その処理には多大なエネルギーが消費されている。1m3の汚泥を処理するには86kg- CO2が発生すると報告8)されており、今回はこの値を使用して汚泥処理に関わるエネルギー消費に伴うCO2排出量を算出した。
 
(5) 法定検査
  法定検査におけるエネルギー消費に関するデータがほとんどないこと、またエネルギー消費の大部分が、検査時の移動に要するガソリン消費と考えられるため、保守点検におけるデータを参考に法定検査におけるエネルギー消費に伴うCO2排出量を算出した。
 
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4.廃棄段階

 浄化槽の廃棄については、宅地内埋設処分(埋め戻し)と撤去処分(掘り出し)があるが、使用部材
がほとんどなく、また廃棄の大部分が埋め戻し処理と推定されるため、廃棄段階におけるエネルギー消
費はほとんどないと想定した。
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5.まとめ

  浄化槽の各段階におけるエネルギー消費に伴うCO2排出量の算出結果と総CO2排出量における
寄与を表12にまとめた。

 表12よりブロワに関わるCO2排出が59.2%、汚泥処理に関わるCO2排出が33.4%と合わせ 92.6%となり、この2項目が浄化槽に関わるCO2排出の大部分を占めていることがわかる。
浄化槽の使用部材についても1基あたり約200kgの二酸化炭素が発生する。しかし、浄化槽の耐用年数が30年であることから、年間あたりに換算するとその寄与率は小さい。
 今後、浄化槽におけるCO2排出量を低減するためには、浄化槽の運転に必要とする空気量の低減及びブロワ本体の省エネ化を組み合わせて浄化槽で使用する電力の低減を図ることと、浄化槽から発生する汚泥発生量の抑制が重要となってくる。
 
参考文献
1) 地球温暖化対策の推進に関する法律施行令第三条(平成20年6月13日改正)排出係数一覧表
2) 日本航空宇宙工業会 複合材料のインベントリデータ構築に関する調査報告書(1999)
3) 化学経済研究所 基礎素材のエネルギー解析調査報告書(1993)
4) 未踏科学技術協会 環境負担性評価システム構築のための基礎調査研究・調査報告書(1995)
5) プラスチック処理促進協会 プラスチック製品の使用量増加が地球環境に及ぼす影響評価報告書(1993)
6) 財団法人日本環境整備教育センター 平成13年度浄化槽のライフサイクルアセスメントに関する調査報告書(2002)
7) 国土交通省 国土交通白書平成14年度(平成12年度データ)の自家用車値
8) 松井康弘、山田正人、井上雄三、河村清史、田中 勝
し尿・浄化槽汚泥等の液状廃棄物処理施設のライフサイクルインベントリー分析 土木学会論文集No706/Z−23,19−29,(2002)
9) (社)全国浄化槽団体連合 平成12年度浄化槽適正管理推進事業報告書
10) 環境省廃棄物対策課浄化槽推進室、財団法人日本環境整備教育センター 平成19年度浄化槽の維持管理に関する調査・マニュアル作成委託業務報告書(2008)
11) 社団法人浄化槽システム協会 平成21年度浄化槽の低炭素化に向けた調査検討業務報告書(2010)
12) 社団法人 浄化槽システム協会 平成21年度版 浄化槽普及推進ハンドブック
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