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| 田村 惇 |
(一社)浄化槽システム協会講師団 |
(月刊浄化槽 2026年7月号) |
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1.はじめに
浄化槽の維持管理においては、制御盤の状態が設備全体の健全性を左右する。特に有接点シーケンス制御とPLC制御が混在する現在、「どの方式がどのような特徴を持ち、どこを点検すべきか」を正しく理解することは、現場の安定運転に直結する。特に、制御盤の異常が「負荷側の故障」や「周囲のノイズ環境」のサインである場合も多く、盤の中だけでなく、システム全体を俯瞰する視点が保守点検には不可欠である。
本稿では、浄化槽で広く採用されている二つの制御方式について、その特徴と点検のポイントを整理し、現場で役立つ視点を提供したい。 |
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2.各回路の特徴
2.1 有接点シーケンス制御
リレーやタイマーを電線でつなぎ、物理的な接点の開閉によって回路を構成する方式である。交互運転や単独運転の起動・停止などのシンプルな運転に採用される。回路の論理が物理的に配置された部品と配線に直結しているため、動作の追跡や不具合が生じている個所の特定がしやすい特徴がある。また、単純な回路であれば部品も少なくなりPLCに比べ安価になるメリットがある。一方で、制御項目が増えると部品点数が増え大型化する、接点の摩耗による交換コスト増大などのデメリットがある。
実務的には、単純なポンプの定水位運転など、制御論理が不変のシステムでは物理的な導通による信頼性が高く、長年現場で重用されてきた。しかし、近年の高度処理に伴う複雑な工程管理には、盤の大型化を招くため限界がある側面も持っている。また、物理的な接点を持つ以上、開閉回数に応じた寿命が不可避であり、定期的な部品交換を前提とした保守計画が重要となる。特に、硫化水素などの腐食ガスが発生しやすい浄化槽周辺環境下では、接点の腐食による接触不良にも注意を払う必要がある。
2.2 PLC制御
入力信号の処理を内部のプログラムによって行う方式である。物理的な配線の代わりに、プログラムで制御論理が完結するため、複雑な制御でも小型化・低コスト化が可能である。浄化槽では、PLCの故障による完全停止を防ぐため、セレクタスイッチによる手動運転などの有接点シーケンスによるハード回路が併設されていることが多い。一方で、プログラムを変更するには専用のソフトが必要であり、トラブル対応できる人員が限定されるデメリットがある。
| 表1 シーケンス制御で使われる機器 |
| 名称 |
役割 |
| 電磁リレー |
電磁石を利用して接点を切り替え、小さな信号で大きな電流を制御したり複数の回路を連動させたりする基本部品 |
| 電子タイマー |
設定された時間に基づいて接点をオン/オフさせる部品。間欠曝気や逆洗のタイミングに使用される |
| 電磁開閉器 |
電磁接触器とサーマルリレーを組み合わせたもので、ポンプ等のモーターの起動/停止と過負荷保護を担う |
| PLC |
内部のプログラムにより制御を行う。電磁リレーや電子タイマー、スイッチなどの役割を果たすことができる部品 |
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現在の浄化槽制御においては、このPLC(内蔵メモリ型)にタッチパネルを組み合わせたシステムが主流となっている。従来、盤面に並んでいた多数のスイッチや表示灯、タイマー類をタッチパネル上のグラフィックに集約することで、盤面の大幅な省スペース化と多機能化を実現している。操作履歴や異常ログの確認、詳細な設定値の変更が容易になる一方で、表示部と制御部が通信でつながっているため、通信不良や画面のフリーズといった特有のトラブルへの対応も求められる。なお、維持管理の現場においては、メモリカセットやプログラム保持用のバックアップバッテリーを必要とする旧式のPLCも依然として稼働している。近年の新型PLCでは、不揮発性メモリに保存し、バッテリーレスで運用できるモデルが増えているが、旧型機ではバッテリー切れがプログラム消失に直結する。更新が進んでいない現場では、こうした旧型機の特性を理解し、定期的な消耗品交換を管理計画に組み込む必要がある。 |
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3.各制御の保守点検のポイント
3.1 有接点シーケンス制御の点検ポイント
接点の焼損やサーマルリレーの作動を確認した際、単に盤内の部品交換や復旧操作を行うだけでは不十分な場合が多い。特に水中ポンプ等の「負荷側の拘束(異物噛み込みや軸受の焼き付き)」が原因である場合、根本原因を取り除かなければ、短期間で同様の不具合を再発させることになる。
また、サーマルリレーが作動していた場合は、単に復旧ボタンを押すだけでなく、設定値がポンプの定格電流に対して適切か、あるいは欠相が発生していないかを確認することが重要である。欠相状態での運転継続は、モーター巻き線の異常加熱を招き、致命的な故障に直結するリスクがある。接点が完全に溶着し、機器が停止不能になる前に、作動時の異音などを捉えることが予防保全の要となる。
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図1 接点接触面の炭化物生成
(放置すると接触不良や溶着の原因となる) |
| 表2 有接点シーケンス制御の点検ポイント |
| 点検対象 |
不具合の兆候 |
疑われる原因 |
| 電磁開閉器 |
接点の焼損、変色、作動時の異音 |
機器の過負荷(異物噛み込みなど)、寿命 |
| 電磁開閉器 |
サーマルリレ―の作動 |
負荷側の拘束、欠相 |
| 電磁リレー |
ケース内部の煤、過大な火花 |
接点の消耗、過電流による負荷増大 |
| 共通事項 |
設定時間のずれ、端子ねじの緩み |
外部振動、経年劣化による接触不良 |
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| 表3 PLC制御の点検ポイント |
| 点検項目 |
ランプの状態・挙動 |
疑われる原因 |
| 動作・異常表示 |
ERR/ALMランプの点灯・点滅 |
演算エラー(プログラム上の矛盾、計算不能)、メモリ異常(プログラムデータの読み取り不可、破損)、ユニット接続不良 |
| 画面表示 |
通信エラー表示、画面フリーズ |
通信ケーブル不良、高周波ノイズ回り込み |
| 環境管理 |
盤内の温度上昇、異音 |
換気ファンの故障、フィルターの目詰まり、冷却不足 |
| 保持機能 |
BATTランプの点灯 |
バックアップ電池の電圧低下(旧型機では特に注意) |
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| 図2 ねじの緩みによる端子部の焼損 |
3.2 PLC制御の点検ポイント
PLCのERRランプ点灯時、電源再投入で復旧しない場合は、旧型機に多い「メモリカセットの有無」を確認する。カセット装着機であれば電源を切った状態でカセットを差し直すことで、接触不良によるエラーからの復旧を試みる。一方で、非装着機や旧型式でBATTランプが点灯している場合、バッテリー切れによるプログラムの消失の可能性があるため、型式に応じた適切な切り分けが必要である。タッチパネルについては、通信エラーの表示や画面の反応速度、盤内温度の上昇による誤作動がないかを確認する。これらは盤内の温度上昇やノイズ、通信ケーブルの劣化が原因となることが多い。不定期的な異常停止は動力線からのノイズ回り込みが主な原因であるため、信号線との分離や接地点の確認といった調査が必要となる。 |
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4.おわりに
有接点シーケンス制御とPLC制御は、それぞれに強みと弱みがある。現場では両者が併存する状況は今後も続くため、どちらの特性も理解したうえで点検を行うことが重要である。また、近年はIoT化や遠隔監視の普及により、制御盤の役割は「単なる制御」から「情報のハブ」へと変化しつつある。こうした技術の進展に対応するためにも、基本となるシーケンス制御を理解したうえで点検を行う必要がある。常に新しい技術を吸収しつつ、基本に忠実な点検を継続していくことが、水環境を守ることにつながるのである。本稿が、日々の保守点検業務の一助になれば幸いです。 |
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参考文献
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| (アムズ(株) 技術・品質グループ) |
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