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| 吉野 誠人 |
(一社)浄化槽システム協会講師団 |
(月刊浄化槽 2026年5月号) |
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1.はじめに
浄化槽放流ポンプは、処理水を適切に公共用水域(河川など)へ放流するために使用されます。通常、2台のポンプを交互に運転させることが一般的です。従来の方式では、フロートスイッチ付きの「親ポンプ」と「子ポンプ」を組み合わせる必要があり、浄化槽メーカや維持管理業者は複数の機種を在庫として保有する必要がありました。
e-NORUSは、電極式水位センサと交互運転プログラムの組み合わせにより、業界初の脱フロートスイッチでの自動交互運転を実現した水中ポンプです。同じ仕様のポンプ2台での自動交互運転や同時運転が可能となりました。 |
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2.e-NORUSの概要
e-NORUS(当社型式CRB321ES)は、ポンプヘッドカバーから煙突状に伸びる電極センサが大きな特徴です(図1)。この電極センサは、上部電極部と下部電極部の2つの電極センサで構成されており、上部電極センサが水位を検知することでポンプが起動し、下部電極センサが水位検知をしなくなることで一定時間後にタイマで停止します。独自の運転制御プログラムを組み合わせることで、「親ポンプ」と「子ポンプ」がそれぞれの運転状態を判別し、全く同じ2台による自動交互運転を行うことができます。
また、電極センサの採用により、従来のフロートスイッチ付きポンプと比較して設置平面積を約50%にコンパクト化し、質量も約10%の軽量化を実現しました(図2)。これにより、浄化槽の生産性の向上に貢献することが期待できます。
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| 図1 e-NORUS外観 |
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| 図2 設置平面積削減 |
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3.e-NORUSの特長
(1)電極センサの採用
従来は、ポンプの起動水位や停止水位をフロートスイッチで水位検知していましたが、フロートスイッチには以下のような懸念がありました。
| 1. |
フロートスイッチは水面を浮遊するため、槽内での引っ掛かりや相方ポンプのフロートスイッチとの干渉による誤動作を防ぐため、ポンプの設置平面積を大きく取る必要がある。 |
| 2. |
フロートスイッチに内蔵されているリードスイッチはガラスを使用しており、落下や衝撃に弱く搬送中に破損しやすい。 |
| 3. |
水面の波立ちによりフロートスイッチが短い周期で上下してリードスイッチが頻繁に動作するチャタリングを起こし、リードスイッチの寿命低下を起こすことがある。 |
e-NORUSは電極センサの採用によりこれらの問題を解決しました。電極センサは固定式のため、水面を浮遊することがなく設置平面積を削減可能です。また、内部にリードスイッチのような内蔵部品がないため、落下や衝撃による故障に強いです。さらに、e-NORUSは特許取得(特許第5810022号)の運転制御方式により、水位を一定時間検知した後に運転を開始するため、チャタリングを起こす心配がありません。
(2) 同一ポンプによる交互運転の実現(特許第5810022号)
浄化槽放流ポンプは、製品の長寿命化や片方のポンプが故障した際のリスクヘッジとして2台で設置され、それぞれが交互に運転するのが一般的です。フロートスイッチ付きポ ンプで交互運転を行うには、フロートスイッチが2つ付いたポンプと、フロートスイッチが3つ付いたポンプを1台ずつ設置する必要がありました。加えて、フロートスイッチ付きポンプはこれら5つのフロートスイッチをそれぞれ別の高さに調整して取り付ける必要がありました。e-NORUSは、独自の運転制御プログラムと電極センサの水位検知により、相方ポンプの運転の有無を判別し、「相方ポンプの運転後は自身が運転する」という制御を繰り返すことにより、全く同じポンプによる交互運転を可能としました。さらに、e-NORUSは電極センサの調整作業が不要であり、据付交換時の作業性の向上が期待できます。
基本動作は、上部電極センサで水位を検知するとポンプが運転します。水位検知後一定時間待ってから運転する場合(aモード)と短時間経過後に運転する場合(bモード)の2つの運転モードを設定しています。1台単独で設置した場合はaモードまたはbモードを不規則に選択して運転します。2台を設置した場合の動作を図3に示します。電源投入後、2台ともaモードで2回同時運転します。3回目はaモードまたはbモードを不規則に選択します。仮に1台がaモード、もう1台がbモードを選択した場合は短時間経過後に運転するbモードのポンプが運転を開始します。aモードのポンプは上部電極センサで短時間水位を検知するが、もう1台のポンプが運転することで水位が低下し、規定時間になる前に水位検知がなくなり運転しません。これを繰り返すことで交互運転を継続します。
交互運転中、一時的な排水量の増加により槽内への流入が多くなった際は、規定時間水位を検知できず運転していなかったaモードのポンプが水位を規定時間検知することで同時運転を行うことが可能です。
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| 図3 動作説明図 |
(3)耐腐食性に優れる材質を使用
浄化槽で処理された水は、有機塩素系水処理剤によって殺菌後に河川等に放流されます。 使用頻度の低い浄化槽では水処理剤が過剰に処理水に溶け込み、槽内の塩素濃度が高くなる場合があります。 e-NORUSは当初電極センサの材質として耐食性に優れるステンレスを採用していましたが、塩素ガスの曝露により電極センサ表面に孔食が発生する事例が確認されました。
このため、現在は電極センサ材質に導電性樹脂を採用し、長期のモニタ試験からステンレス以上の耐食性を有することを確認しています(図4)。 また、ケーブルは耐塩素ケーブルを標準採用しており、塩素ガスによる膨潤や変色等の劣化を抑制しています。
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| 図4 ステンレス電極センサ(左)と樹脂製電極センサ(右) |
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4.おわりに
e-NORUSは2016年の発売開始以降、動作プログラムの改良や電極センサ材質の変更等幾度かの改良を実施することで市場や浄化槽メーカからの信頼性・認知度を高め、現在では年間で約20,000台を販売しています。 当社は、たゆまぬ技術革新で、安心な社会と快適な暮らしを支え続け、人々の幸せに貢献することを経営理念として掲げており、今後もe-NORUSのように、衛生的で快適な暮らしに欠かせない水中ポンプをはじめとする水処理関連機器の高機能化・高効率化に取り組むことで、社会に貢献していきます。 |
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| (新明和工業(株)) |
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