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浄化槽における電気回路の読み方
北沢 智秀 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2025年3月号)
1.はじめに
2.制御盤で使用する電気部品
3.回路図の解説
4.おわりに
1.はじめに

 浄化槽の維持管理では、土木・建築/化学/生物/電気等、幅広い分野の知識が必要となる。弊社においても、学生時代電気専門の知識を学んだ者は少ない為、入社後に電気の研修を行っている。本稿では、電気回路の理解に必要な基本事項について、ブロワの回路を題材として解説する。なお、設計会社によって制御方法に違いがあるため、一例として捉えて戴きたい。
2.制御盤で使用する電気部品

 初めに今回の説明で使用する電気部品について解説する (機器名の後の数値は制御器具番号を示す) 。

表-1 制御盤用電気部品
電気部品写真 電気図記号 電気部品解説
配線用遮断器
(MCBorMCCB)

過電流による電路を遮断する事が目的で、盤内に取り付けるブレーカ。次の二つの機能を有する。
@誤配線等の短絡による瞬間的に大きな電流が流れた場合に遮断する事故遮断(瞬時動作)
A過負荷の状態が続き電線が熱くなる時間が継続する事により遮断をする過負荷遮断(時延動作)
記号のAFは、遮断器の大きさ(フレーム値/最大定格電流値)、ATは、(トリップ値/定格電流値)を現わす。ALは、警報接点の事で、AL付の場合はトリップ時に警報出力する。無い場合は、トリップのみ。
漏電遮断器
(ELBorELCB)

上記配線用遮断器@/Aの機能の他、定格感度電流の50%〜100%以上の漏洩電流を感知すると遮断する。(“トリップする”とも言う)
特に水気や湿気のある場所には、設置が義務付けられているので、水中ポンプ等の回路で使用する。記号の30mAは、漏洩電流を現わす。AL付の場合は、漏洩検知時又は@/A時に警報出力する。
電磁接触器(42or52)
“マグネットスイッチ”とも呼ばれ、電流が流れると接触器内のコイルに電磁力が働き、バネの力に可動鉄芯が打ち勝って、固定鉄芯に吸着し接点が閉じ導通する。以降、“マグネット”と略す。
導通すると端子の二次側にある機器が運転する。
サーマルリレー(49)
遮断器の二次側に配線し、過負荷時は遮断器より先にトリップする様な容量(通常は定格電流値)で設定する。以降、“サーマル”と略す。サーマルには、1E:過負荷 2E:過負荷/欠相 3E:過負荷/欠相/逆相と検知項目の数により3タイプある。
過負荷は、電動機の焼損から保護する為に、制御盤で制御する機器に必須となる。(電源送りの場合は不要) 欠相は、配線不足や断線だけでなく電線のゆるみでも対象となる。欠相を検知出来れば早期発見で、事態が深刻になる前に対応が可能。逆相は、水中ポンプ等、目視により回転方向を確認可能な場合は設けない。
電磁開閉器(52)
電磁接触器とサーマルは連結する事が可能で、合わせて“電磁開閉器”と呼ぶ。大容量機器で配線するスターデルタ起動や電磁弁等サーマルを付けない場合には、電磁接触器(42)を使用するが、左図の様に電磁接触器だけでも(52)と記載する図面の方が多い。
表示灯/ランプ
(RD:赤/GN:緑/OG:橙)

記号としては、RL/GL/OLで記載される事もある。浄化槽では運転を赤、停止を緑、故障を橙とすることが多い。
セレクタスイッチ(43)
機器を制御する為に、盤面に取り付け選択するスイッチ。正式名称は、セレクトスイッチでは無く、セレクタスイッチである。以降、“スイッチ”と略す。
浄化槽では2ノッチ(停止/運転)、3ノッチ(手動/断/自動やNo.1/自交/No.2)を使用する事が多い。
リレー
電流が流れ導通すると(以降“励磁”と呼ぶ)接点を開閉する機器で、盤内のDINレールに取り付ける。運転条件を満たすとリレーに電流が流れる様に回路を組む。リレー本体の端子にはa接点(※1)とb接点(※2)が有り、それぞれの端子に接続する事で、見合った制御が可能となる。c接点(※3)のものもあるが、使用頻度は低い。
24時間タイマーリレー(2)
主に、設定時刻で機器を運転させる為に盤内に取り付けるタイマー。設定子が0〜24時間を15分刻みに360度配置されている。a接点(NO:ノーマルオープン)の配線では、設定子を内側に倒すと、設定した時刻で動作する。設定子がOFFの時間になると、機器は停止する。切-自動-入のスイッチが付いているものが多く、切選択で常時停止。入選択で常時運転。自動選択でタイマー運転が可能となる。
ラチェットリレー(10)
機器の交互運転で使用するリレー。通常のリレーの場合、励磁すると接点が開閉し、リレーに電流が流れなくなると(以降“消磁”と呼ぶ)接点が元に戻る。ラチェットの場合は、励磁する時に接点が開閉し、消磁する時には変化が無い(状態を保持する)。次に励磁する時に動作する事より、交互運転を行う。
※1 a接点: 電気部品に電流が流れると接点が閉じる。(初期状態では開いている)
※2 b接点: 電気部品に電流が流れると接点が開く。(初期状態では閉じている)
※3 c接点: a接点とb接点の両方の端子がある電気部品。(初期状態は接続箇所による)
3.回路図の解説

3-1 1台連続運転回路
 図−1は、三相200Vのブロワ1台をスイッチで運転/停止する回路である。実際の配線に近い図面で表記している。主回路図は複線図になり、操作回路と一対で構成されている。通常の図面では、わかりやすくする為に図−2の様に主回路図と操作回路図を分ける。 回路上の電気(電流)の流れを、以下に説明する。
@ 主幹用遮断器(MCCB-0)と漏電遮断器のブレーカ(ELCB-1)を入れると操作回路にも電圧が掛り、電流が流れる。(この時主回路図ではブレーカが動作して閉じるのに、操作回路図では動作せず閉じたままなのは、漏電検知で回路が開く別物の警報接点を現わしている為である。) 【図−2右側】
A 操作回路のスイッチ(43-1)を停止から運転に切り替える。【図−2右側】
B 操作回路図上の電磁接触器(52-1)のリレーが励磁し、主回路図の52-1のa接点も、閉じる。【図−2右/中央】
C 端子台の二次側のブロワが運転をする。【図−2中央】
D 漏電検知時は、ブレーカがトリップし、ELCB-1のb接点が開き電磁開閉器に電流が流れなくなり、ブロワは停止する。
E 過負荷検知時も同様に、49-1のb接点が開き、ブロワは停止する。

図−1 主回路複線図と一体型の操作回路図
 
図−2 主回路単線図と別図の操作回路図

3-2 1台タイマー運転回路
 ブロワ1台を24時間タイマーリレーで間欠運転する回路について説明する。この回路以降は、3-1の回路に組み込んだ漏電遮断器とサーマルの警報接点は省略する。タイマー運転をする場合は、セレクタスイッチに自動が必要で、連続運転用の手動を含め3ノッチ(手動-断-自動)と間欠運転回路を組む。【図−3】
※以降の電流投入時の回路図では、電流が流れない箇所を薄い線で表示する
@ タイマー運転の場合は、スイッチ(43-1)で自動を選択する。【図−4】
A 間欠運転用タイマー(2-1)が導通する。【図−4】
B 予め設定していた時刻になると2-1のa接点が閉じる。【図−5】
C マグネット(52-1)が導通し、ブロワが運転する。同時に表示灯(PL-1)が点灯する。【図−5】
D 間欠運転時刻の設定時間(2-1)が経過すると、Bで閉じていた2-1の接点が開き、マグネット(52-1)が消磁し、表示灯(PL-1)が消灯する。(【図−4】の状態に戻る)

図−3 タイマー運転回路(操作電源開放)
 
図−4 自動選択/タイマー設定時刻外
 
図−5 タイマー設定時刻

3-3 1台連続運転/交互運転タイマー回路
 次にブロワ2台設置で、連続運転の1台を24時間タイマーで切り替える回路について説明する。スイッチは、2ノッチ(停止-運転)と3ノッチ(No.1-自交-No.2)の2つが必要となる。【図−6】
@ スイッチ(43-1)を運転に選択する。【図−7】
A スイッチ(43-2)を自交に選択する。【図−7】
B ラチェット(10-1)の52-2側(b接点)には電流が流れ、マグネット(52-2)が励磁し、No.2のブロワが運転と同時に運転ランプが点灯する。【図−7】
C 24時間タイマー(2-1)には、操作電源が入っている間は常時電流が流れる。
D 予め設定していた時刻になると2-1のa接点が閉じる。【図−8】
E その下にあるラチェット(10-1)が励磁し、自交の下の接点が切り替わる。【図−8】
F ラチェット(10-1)の52-1側(a接点)が閉じマグネット(52-1)が励磁し、No.1のブロワが運転と同時に運転ランプが点灯する。【図−8】
G ラチェット(10-1)の接点は開きNo.2のマグネット(52-2)が消磁しNo.2のブロワが停止する。同時に表示灯が消灯する。【図−8】
H 交互運転切替時刻の設定時間(2-1)が経過すると2-1の接点が開き、ラチェット(10-1)が消磁するが、ラチェットの場合は、2.で説明した通り状態を保持する。(【図−7】の10-1のa接点とb接点が逆の状態)

図−6 連続運転/タイマー交互切替回路(操作電源開放)
 
図−7 運転選択/自交選択/交互切替設定時刻外
 
図−8 交互切替設定時刻

3-4 1台タイマー運転/交互運転タイマー回路
 ばっ気ブロワ2台設置で、1台タイマー運転のブロワを24時間タイマーで切り替える回路について説明する。【図−9】
@ スイッチ(43-1)を自動に選択する。【図−10】
A スイッチ(43-2)を自交に選択する。【図−10】
B 24時間タイマ(2-1/2-2)上には、接点が無いので常時電流が流れる。但し、設定時刻では無いので、各接点(2-1/2-2)は、開いたままになる。【図−10】
C 間欠ばっ気運転時刻の設定時間(2-1)になると、2-1の接点が閉じる。【図−11】
D リレー(X-1)に電流が流れ励磁し、自動の下にあるX-1の接点が閉じる。【図−11】
E ラチェット(10-1)のb接点側には電流が流れ、マグネット(52-2)が励磁しブロワが運転、同時にNo.2のブロワの運転ランプが点灯する。【図−11】
F 交互運転切替時刻の設定時間(2-2)になると、2−2の接点が閉じる。(通常1日1回0時等)【図−12】
G ラチェット(10-1)が励磁し、自交の下にある接点が切り替わる。その下にあるラチェット(10-1)が励磁し、自交の下の接点(10-1)が切り替わる。【図−12】
H 52-1側(10-1)の接点が閉じマグネット(52-1)が励磁し、No.1のブロワが運転する。同時に表示灯が点灯する。【図−12】
I 52-2側(10-1)の接点は開き、No.2のマグネット(52-2)が消磁しNo.2のブロワが停止する。同時に表示灯が消灯する。【図−12】
J 間欠ばっ気運転時刻の設定時間(2-1)が経過すると2-1の接点が開き、X-1のリレーが消磁する。同接点(X-1)が開きマグネットに電流が流れなくなり、ブロワは停止する。交互運転切替時刻の設定時間(2-2)が経過すると2-2の接点が開き、10-1のリレーが消磁するが、ラチェットの場合は、2.で説明した通り状態を保持する。(【図−10】の10-1のa接点とb接点が逆の状態)

図−9 タイマー運転/タイマー交互切替回路(操作電源開放)
 
図−10 自動・自交選択/タイマー運転・交互切替設定時刻外
 
図−11 タイマー運転設定時刻・交互切替設定時刻外
 
図−12 タイマー運転・交互切替設定時刻
4.おわりに

 今回は、最も使用頻度の高いブロワの回路について解説した。紙面の都合で、遮断器やサーマルリレーのトリップにより、故障ランプが点灯/警報の発報と同時に機器が停止する回路は省略したが、実際には必要である。また、2台機器設置の1台が故障した場合には、予備機が運転をするバックアップ回路も必要である。
 回路が読める様になると、機器異常時の原因特定を掴みやすくなり、又、動作設定を変更する際には、工事業者とのやり取りがスムーズになるので、ぜひこれを機会に理解して戴きたい。
((株)西原ネオ EPC推進部)
 
 
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