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電磁ダイアフラム式ブロワの不具合事例とその対応について
齊藤 博之 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2024年7月号)
1.はじめに
2.電磁ダイアフラム式ブロワの構造と動作原理
3.不具合事例とその対応について
4.最後に
1.はじめに

 浄化槽におけるブロワ(送風機)の役割は、@好気処理部でのばっ気撹拌やBODの酸化、アンモニア態窒素の硝化といった生物処理に必要とする酸素の供給、A槽内水の循環や汚泥の移送、ピークカット機能および処理水放流のための各種エアリフトポンプ駆動など多岐にわたります。そのため、浄化槽の所期性能を発揮させるためには、ブロワは欠かせない装置であり、ブロワの構造や特性を理解して正しく使用することが重要です。また、浄化槽で使用されるブロワには、電磁ダイアフラム式やロータリー式、ルーツ式など様々な駆動方式1)が存在しますが、本稿では、小・中型浄化槽(50人槽以下)に多用されており、省エネやコンパクト化など技術的進歩が著しい電磁ダイアフラム式ブロワの不具合事例とその対応について紹介します。
 
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2.電磁ダイアフラム式ブロワの構造と動作原理

 図1、図2に代表的な電磁ダイアフラム式ブロワの内部構造図と動作原理図を示します。駆動部は、一対の電磁石(ソレノイド)と両端をダイアフラムで固定された永久磁石を組み込んだ振動子によって構成されています。電磁石に通電することで発生する磁界の変化により、電磁石と振動子に固定された永久磁石の間で、吸引・反発の力が働き、高速で振動します。この振動子の両端に固定されたダイアフラムが変形することで圧縮室内の容積が変化し、弁の働きによって空気の吸入・吐出が繰り返し行われます。

図1 内部構造図(例)
 
図2 動作原理(例)

 ダイアフラムの変形回数は電源周波数と同数であり、例えば60Hz地域では1分間に3,600回(50Hz地域では3,000回)となり、1年間では約19億回(60Hz)となります。そのため、ダイアフラムには耐久性に優れた特殊なゴムが採用されています。

 ブロワは、洗濯機やエアコンなどの家電製品とは違い、24時間365日稼働し続けている製品であり、連続運転によってダイアフラムや圧縮室内の弁、フィルターは消耗し、次第に性能が低下します。したがって、ブロワの性能を長期間維持するためには、それら消耗部品の交換(1年毎の定期交換を推奨)が必須となります。
 
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3.不具合事例とその対応について

 現場で直面する電磁ダイアフラム式ブロワの不具合には、様々なものがありますが、適切に対処することで迅速に解決し、再発防止を図ることができます。以下に不具合事例の主な原因とその対応を示します。

【事例1】ブロワが停止している
 前回点検時は正常に稼働していたブロワが停止している原因の一つにダイアフラムの破損による安全装置(※オートストッパー)の作動が挙げられます。ブロワのカバーを外した後、圧縮室も外してダイアフラムの破損状況を入念に確認します(図3)。ダイアフラムは両側とも同様に劣化していくため、破損したダイアフラムだけ交換してもすぐに反対側のダイアフラムが破損します。そのため、ダイアフラム交換は両側とも同時に行います。
 ※オートストッパーはダイアフラム破損を検知し、その他部品への損傷を最小限にするために通電を遮断する安全装置です。

図3 ダイアフラムの破損(例) 図4 オートストッパーの構造(例)

 図4にオートストッパーの正常状態と作動状態の例を示します。正常時は写真中の丸部分で金属の接点がつながり通電状態にあり、オートストッパー作動時はバーが外れて接点が離れ、通電が遮断される構造となっています。


【事例2】ブロワ風量が少ない
 ブロワ風量の低下要因としては、エアフィルターの詰まり、ダイアフラムや弁の破損や劣化が挙げられます。ブロワのエアフィルターは、カバーに開いている空気吸引口の閉塞防止のために設けられていますが、空気吸引の抵抗になるような汚れがフィルターに付着したり(図5)、吸入口に虫や異物が詰まると風量の低下に繋がります。定期的なエアフィルターの掃除とカバー吸入口の異物除去で不具合が解消されることがあります。また、長期間ブロワを使用しているとダイアフラムや弁など、駆動部のゴム部品が劣化して風量が低下する場合があります。この場合はダイアフラムや圧縮室(弁)の交換を行います。

図5 エアフィルターの汚れ(例)


【事例3】ダイアフラムや弁が早期に破損する
 使用開始から1年未満でダイアフラムが破損する場合は、設置環境に問題があることが多いです。ダイアフラムや弁はゴム部品であり、油分や塩素に触れると劣化が加速します。そのため、それらを含む空気を極力吸い込まない設置環境とする必要があり、以下の対応で改善する可能性があります。
・台所の換気扇直下など油を含む空気を吸う恐れのあるところからブロワを遠ざけて設置します。
・放流ポンプの電線管を通ってきた消毒剤の塩素ガスを吸い込むことにより、ダイアフラムの早期破損や故障(内部腐食による)に繋がります。そのような場合は、放流ポンプ用電線管のコーキング処理2)を行います(図6)。
 また、ブロワは内部のソレノイドに通電することで発熱しますが、外気を吸気することでブロワ内部を空冷しています。ダイアフラムや弁はゴム部品であり、温度が上昇するほど劣化が加速しますので、直射日光を避け、風通しの良い場所へ設置します(図7)。

図6 放流ポンプ用電線管のコーキングがされていない例(○印の箇所をコーキングする)
 
図7 直射日光を避けた設置(例)


【事例4】ブロワが漏電する
 ブロワは屋外に設置する機器のため、大雨を想定した風雨でも漏電しないよう設計されていますが、図8に示すように屋根や出窓の直下など集積雨水のかかる場所では、ブロワタンク内に雨水が侵入して漏電する恐れが高まります。そのような場所からは極力遠ざけて設置します。

図8 集積雨水のかかるブロワ設置(例)


【事例5】ブロワから異音がする
 ブロワ底部の脚ゴムが脱落するとブロワ自体の振動が吸収されずに大きな音が発生する場合があります。脚ゴムを紛失した場合は、メーカーより補修部品を取り寄せて装着します(図9、図10)。

図9 脚ゴム脱落(例) 図10 脚ゴム(左)と脚ゴム組み付け例(右)

 また、ブロワと浄化槽の空気配管を接続するゴムホースとブロワの吐出口高さにズレが生じるとガタツキが生じて異音が生じる場合があります。その場合は、市販のゴムシートをブロワの下に敷くことでガタツキを解消し、異音を低減できる可能性3)があります。
 更に、ブロワ内部のポンプ振動を吸収する防振ゴムが外れていると、ポンプ姿勢が不安定になり、部品同士が接触して異音が生じる場合があります。ブロワ内部から部品が干渉するような異音が生じている場合は、ブロワカバーを開けて、防振ゴムをはめ直します(図11)。

図11 防振ゴムが外れている状態(上)とはめ直した状態例(下)
 
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4.最後に

 本稿では、小・中型浄化槽(50人槽以下)に多用されている電磁ダイアフラム式ブロワの不具合事例とその対応方法について紹介しました。ブロワは浄化槽の所期性能を維持する上で極めて重要な付帯装置です。正しく使用していただくために、他の駆動方式のブロワを含め、各メーカーの取扱説明書や施工要領書、維持管理要領書を合わせてご確認ください。今回、紹介した内容が現場での不具合解決やその再発防止に繋がれば幸甚です。


参考文献
1) 渡辺一生:講座「浄化槽工学13」第6節 浄化槽の付属機器、月刊浄化槽2011年1月号、p29〜35
2) 手塚圭治:特集「浄化槽に関わる機器及び設備の技術動向」電磁ダイアフラム式ブロワ、月刊浄化槽2015年5月号、p4〜7
3) 菅原崇聖:特集「浄化槽技術に関する検査機関の取り組み事例」小型浄化槽用ブロワにおける騒音・振動低減に関する考察、月刊浄化槽2021年10月号、p12〜15
(フジクリーン工業(株) 第二開発部)
 
 
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