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災害用浄水機器ガイドライン
田中 理 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2024年1月号)
1.はじめに
2.災害時使用水源
3.想定水源と対応可能な浄水機器例
4.水源および機器の維持管理
5.対応浄水機器の例
6.おわりに
1.はじめに

 近年、震災や地球温暖化に起因する災害などで水道水が使えない状況が発生し、浄水機器使用ニーズが高まってきている。
 「浄水器」は家庭用品品質表示法で「飲用に供する水を得るためのものであって、水道水から残留塩素を除去する機能を有するものに限る。」と定められていることから、災害時に使用されるものを「災害用浄水機器」と称し、(一社)浄水器協会 災害用浄水機器研究会で、その対応について研究・検討を実施してガイドラインを作成するに至った。
  ガイドラインは@水源想定、A対応機器、B水源および機器の維持管理、C対応機器の事例の4セクションで構成されている。
 災害時は、原水(水源の水)の水質が特定できないことから、使用者側が使用可否を判断するための目安としてのガイドラインとなっている。
 
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2.災害時使用水源

 災害時、良好な水源を得ることは最重要項目となる。災害時において飲用や生活用水として使用できる可能性のある水源を「水源想定」とし、T〜V類に区分している。
 T類は、水道水などの飲用可能な水が水道用タンク等の給水用具に一定期間内(目安として10日以内)貯留された水である。
 具体的には、貯留10日以内の「入浴していない風呂の水」、「水洗トイレのタンク水」、「ビル・マンションの受水槽」、「期限切れのペットボトル水」などがT類に区分される。
 U類は、T類に準じた水だが、貯留日数がT類より長く経過した水(中・長期間貯留した水)で、T類同様にもとは飲用可能な水である。貯留11日以降の飲用水のほか、「管理され貯留した雨水」、「管理されたプールの水」、「入浴剤・洗剤を添加していない風呂の水」もU類に区分している。
 「管理され貯留した雨水」は、@降り始めの雨(降雨直後の初期雨水)が排除されていること、A地表や道路などから集水した場合等、水質が不明な状態ではないこと、B屋根や雨水を集水するための配管などから金属塗料や有害物質などの溶け出しがないこと、C殺藻剤など、飲用に適さない薬剤を投入していないことを条件としている。
 「管理されたプールの水」については、災害時に飲用に転用することを想定したオンシーズンのプールおよび殺藻剤などの飲用に適しない薬剤などを投入していないオフシーズンのプールの水としており、オンシーズンを終わる際は使用後をそのままにせず一度新しい水道水を入れ替えてからオフシーズンに入ることを条件としている。
 V類は、T類とU類以外の水で、特別な水質管理等を行っていない天然水等がこれに区分される。具体的には「湖沼の水」や「河川の水」、「飲用水として確認できない井戸水」、「管理されていない貯留雨水」、「管理されていないプールの水」などとなる。
 飲用水として確認できない井戸水、飲用できない井戸水については、一部の井戸において環境基準を超えた物質が検出されたことから、検出されやすい物質を示し、水質の事前確認を行うよう促している。
 
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3.想定水源と対応可能な浄水機器例

 表1に想定水源に対応できる浄水機器例を示す。ろ材の種類と特徴および災害時に使用可能な浄水機器によって、飲用/非飲用、日常利用/災害利用という諸条件毎に対応機種が選定される。
 表1※ B1:C1:D1はT類・U類で飲用使用する場合に一般細菌、大腸菌を除去できる仕様とすることを示し、※F1はV類原水水質をメーカー推奨値以内とすることを条件とし、生活・産業排水、畜産排水が流入していない原水とすることを示している。

表1.対応可能な浄水機器例

 ろ材、浄水機器の種類としては、日常使用している浄水器を転用するケースもある。また、V類に区分される原水性状では、逆浸透膜(RO膜)を用いた浄水機器の使用は必須条件となる。(図1参照)

図1. 膜分離物質イメージ

 しかし、逆浸透膜(RO膜)浄水機器であっても性状不明な原水全てには対応できないため、メーカー推奨値以内を条件とし、生活・産業排水、畜産排水が流入していない原水を用いることが前提となる。
 災害における浄水機器の使用期間としては、上下水道ライフラインの復旧についての実例データや諸官庁の資料を参考とし、30日間を想定している。
 事前検査で浄水機器の性能評価に必要となる除去物質としては、T類が一般細菌、U類が一般細菌・大腸菌・2—MIB・濁度、V類が一般細菌・大腸菌・溶解性鉛・ヒ素・硝酸態窒素・テトラクロロエチレン・トリクロロエチレン・2-MIB・濁度・CAT・陰イオン界面活性剤等が挙げられる。これらは水道水水質基準、飲用井戸等衛生対策要領の水質基準等から選定しており、井戸水等消毒用塩素が投入されていない水源であることを想定していることから塩素化合物は除外されている。
 試験規格(試験方法)は、JIS S 3201(家庭用浄水器 試験方法)、厚労省告示第261号(水質基準に関する省令の規定に基づく告示)、JWPAS S.120(浄水器協会自主規格)災害用浄水器U類性能試験方法を用いる。
 また、JIS S 3241、JIS S 3242への適合も基本要件とされている。
 
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4.水源および機器の維持管理

 浄水機器の保管方法と維持管理はメーカー指定の保管、維持管理を実施して指定の方法で操作することになっている。
 水源の確保として、災害時使用できる水源の確認や身近に置いておける原水確保を促しているが、コンクリート製貯水槽で水の入れ替えを行っていない貯留水における高pH値のケース、雨水タンク貯留水、井戸水の事前水質確認、川、湖、沼では安全に取水ができるか、また、災害時もその水質が安定しているか、生活・産業排水、畜産排水が流入していないかについて注意確認を促している。
 災害時に使用する水の事前水質確認については、簡易的に確認できるTDS,pH,水温のほか、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素,ヒ素およびその化合物,遊離残留塩素,過マンガン酸カリウム消費量,シアン化合物も比較的容易に確認できる。また、事前に水質確認のため検査機関に依頼することも有効である。
 
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5.対応浄水機器の例

 浄水器協会ガイドライン適合品(T類,U類,V類)、(一社)日本消防設備安全センター消防防災製品等推奨品である非常用浄水装置「エモータブル」を紹介する。(写真1)

写真1. 非常用浄水装置「エモータブル」

 非常用浄水装置「エモータブル」は、国内航空機(100席以上)の機内持込み手荷物基準の縦・横・高さ三辺の和115cmより小さなサイズ(約108cm)で、乾燥重量8.5sと持ち運び可能としている。また、災害時は停電・電源喪失が想定されることから、電源不要の手動式ポンプを選定している。
 浄化したい水は1分間あたり20-30ストローク程度の手動ポンプ操作で浄水装置本体に移送し、約1ℓ/minの浄水確保(造水)が可能である。
 使用膜は、自然界のその他の水(湖沼・河川・飲用水適合が確認できない井戸水等の非水道水)も原水とすることから、V類適合の逆浸透膜を選定している。(図2参照)また、逆浸透膜の閉塞を予防するため5μmセディメントフィルターを前置している。浄水機器の使用にあたっては、災害時に性状不明な水を対象とするのではなく、使用できる水源を事前に想定し、災害時にも水源水質が安定していること等を確認することが重要となる。
(想定水源の水質(TDS総溶解固形物(無機塩類)、pH値、水温等)の事前測定、推奨数値内での使用は必要条件となる。)

図2. 逆浸透膜イメージ

 災害時の飲用水は、1人1日3ℓ を想定して備蓄され、ペットボトル保存水が一般的である。
 顔を洗ったり、歯を磨いたり、すり傷を洗うような生活用水用途での水の備蓄はあまり想定されておらず、災害時には飲料水と同水準の肌に触れても安全で清潔な水が飲用以上の量で必要となる。また、被災時は、飲用専用のペットボトル水の生活用水用途の消費はなるべく避けたいところである。
 各水源で各人が「災害用浄水機器」を持込み、手動操作で造水する(写真2)という運用は現実的と言えよう。

写真2.非常用浄水装置 使用状況
 
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6.おわりに

 我が国の震災や気候変動に伴う環境変化に対応するためSDGsやESGを意識した取組みを継続し、人々の暮らしに不可欠な水環境のライフラインを支えることが重要となる。
 世界にはインフラが整備されておらず、水質が汚染されている濁水を生きるために飲まざるを得ない人々がいることも事実である。
 災害用浄水機器ガイドラインを発展させて、水源が良くないところでも、生活用水を安全安心かつ簡単に造水できる、高品質かつコストを抑えた浄水機器やシステムを販売できるよう技術革新に努めて行きたい。


<参考>
一般社団法人浄水器協会 災害用浄水機器ガイドライン
非常用浄水装置【エモータブル】
<お問合せ>
 前澤化成工業株式会社 営業企画部
 〒103-0016東京都中央区日本橋小網町17-10
 日本橋小網町スクエアビル
 TEL(03)5962-0720 FAX(03)5695-0166
 URL https://www.maezawa-k.co.jp
(前澤化成工業(株) 営業本部)
 
 
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