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排水処理汚泥の追跡調査
南保 栄人 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2022年11月号)
1. 各省庁や自治体の方向性
2−1. 白山市での取り組み
2−2. 株式会社金沢舗道の取り組み
3−1. 中能登町の取り組み
3−2. 津端高校での取り組み
3−3. 株式会社河北潟ゆうきの里の取り組み
4. その他、石川県内の各自治体や装置メーカーについて
5. 所感
 
 当社の小集団活動評価制度、「ニッコームーブメント」で立ち上がった企画、「SDGs探検隊」活動の一環として、下水道汚泥の追跡調査を実施したので紹介する。
 
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1.各省庁や自治体の方向性

 その前に、手元にある各省庁の方向性を記してみたい。農水省管轄では(一社)地域環境資源センターが発行している令和4年度版農業集落排水の手引きを見ると、農業集落排水施設から排出される汚泥はバイオマス資源として肥料等への使用が推奨されている。一方、国交省が発行している平成31年度版下水道汚泥広域利活用検討マニュアルでは有効利用方法として、消化ガス利用、固形燃料、焼却廃熱発電、緑農地利用(肥料)、建設資材利用が挙げられている。浄化槽については、環境省の中央環境審議会発行の第四次循環型社会形成基本計画の循環経済工程表中で、有機廃棄物として「地域資源としてのエネルギーや肥料としての循環利用、廃棄物処理の広域化・集約的な処理を地域で実践する」と記された。
 又、当社本社工場のある石川県では、「メタン活用いしかわモデル」と題して下水道汚泥の消化ガスの有効利用が推奨されている。(図1メタン活用いしかわモデル説明資料参照)

図1 メタン活用いしかわモデル説明資料
 
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2−1.白山市での取り組み

 さて、汚泥の追跡調査についてだが、当社白山工場から排出される下水は、車で10分程のところにある松任中央浄化センターに流入する。ここでは周辺地域の流入下水の処理だけでなく、白山市内の他の下水汚泥、周辺自治体の農業集落排水施設、浄化槽汚泥も受け入れている。
 下水処理については、生物処理の方法や、脱水方法等で試行錯誤をしたものの現在は安定して処理出来ているとのこと。
 気になる汚泥の処理だが、当処理場内で脱水の後、焼却処理をしており、焼却炉には熱利用による発電施設なども付属していない状態であった。(図2−1 松任中央浄化センターの汚泥焼却炉参照)

図2−1 松任中央浄化センターの汚泥焼却炉

 焼却灰は産業廃棄物として、金沢市の埋め立て処分場(北陸環境サービス)にて処分されるとのことであった。
 汚泥の堆肥化や、焼却灰の建設資材としての利用について質問したところ、金沢舗道というアスファルトメーカーでのアスファルトフィラーへの使用について検討はしたが、白山市内の道路工事での優先使用について折り合いが付かず、採用には至っていないとのことであった。
 当社が販売、保守点検している浄化槽や、管理している川北町の農業集落排水施設から排出される汚泥は、この処理場に運搬されている。
 
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2−2.株式会社金沢舗道の取り組み

 訪問の手がかりを元に金沢舗道を訪問した。アスファルト材は完全リサイクルされる舗装材で、原料にリサイクルされる経路が確立されている商品とのことであった。
 下水道汚泥の焼却灰が利用されているのは、商品名「リビルドアスコン」と呼ばれるもので、商品の特徴としては、重金属をキレート処理で無害化している点にある。(図2−2 金沢舗道の重金属無害化施設参照)

図2−2 金沢舗道の重金属無害化施設

 この「リビルドアスコン」の材料になった焼却灰は、半永久的に舗装材としてリサイクルされ続けるという、非常に優れた循環型の舗装材というわけだ。
 添加される、焼却灰は、主に金沢市の下水処理汚泥を焼却したものということだった。現在リビルドアスコンに使用されている焼却灰は、処理場から排出される。
 全体量(約1,000t)の2割から3割程度で、それ以外は戸室処分場(金沢市の一般廃棄物の埋立場)に廃棄されているらしい。金沢舗道としては処理量を増やしたい思いがある。
 (因みに金沢市は、汚泥の消化により発生するメタンガスの有効利用に積極的で、隣接する都市ガスの基地にメタンを供給していたが、令和2年からは官民連携の発電事業が開始されている。)
 白山市から出る下水汚泥焼却灰のサンプルも評価したらしく、その際は良好な結果となり、後は採用を待つばかりのところまで行った様だ。
 金沢舗道では、廃コンクリートからつくる砕石(RC40)の製造も手掛けており、非常にサステナブルな事業を生業としている会社という印象であった。
 
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3−1.中能登町の取り組み

 先進的な例として「メタン活用いしかわモデル」1号施設である、中能登町にある鹿島中部クリーンセンターを訪問した。
 ここでは下水処理だけでなく、特定の施設の厨房から排出される、食品廃棄物や、町内の浄化槽汚泥も受け入れている。
 この施設は、汚泥の乾燥濃縮と、消化によるメタンガス回収、消化汚泥の脱水、乾燥、造粒による堆肥化までを実現しており、回収されたメタンガスを民間発電業者に売り、施設の一角で民間業者が発電している。(図3−1鹿島中部クリーンセンターの消化ガス貯蔵設備「ガスホルダー」参照)発電時に得られる温水熱はメタン発酵槽や乾燥設備の熱源として再利用されていた。

図3−1 鹿島中部クリーンセンターの消化ガス貯蔵設備「ガスホルダー」

 特徴は、上述の生ごみの混合と下水道汚泥のマイクロ波加熱による消化ガスの収率UPと汚泥の含水率を従来比1/4まで濃縮することによる、施設の小型化を実現しているところである。
 この施設導入で年間1千万円程度の節約になっているそうだ。
 下水処理施設の集約化の計画があり、施設の増強が必要だが、消化ガス収率維持に必要な生ごみの受け入れ量を増やす為には一般家庭から排出される骨や卵の殻、貝殻などの分別が必要になり、そこがネックになるとのことであった。

 この分別の種類は当社で生産を開始したディスポーザー破砕機に投入出来る生ごみの種類と一致しており、鹿島中部クリーンセンターのような施設が国内各地に建設されるようになると、生ごみを分別して入れざるを得ない、破砕機の需要が増えることが予感される対話であった。
 造粒された堆肥(なかのとバイオの恵)は無料で配布されており、昨今の肥料価格高騰も相まって少しずつ利用者が増えているとのこと。(図3−2鹿島中部クリーンセンターで無料配布している堆肥「バイオの恵み」参照)石川県立津幡高等学校の園芸科が利用されたそうだ。

図3−2 鹿島中部クリーンセンターで無料配布している堆肥「バイオの恵み」
 
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3−2.津端高校での取り組み

 上記手がかりを元に石川県立津幡高校の園芸科を訪問した。
 先ずは、温室内で栽培するメロンの苗に施肥したところ、臭気がきつく、そのままでは使えないと判断されたが、施肥されたものは、そのままにしていた。
 私たちが訪問した際は、丁度そのメロンの収穫が終わり生徒の方々が試食された後であったので出来栄えを聞いたところ、「糖度が高く、おいしい」とのことであった。(図3−2 津幡高校で堆肥「バイオの恵み」の施肥により収穫されたメロン参照)

図3−2 津幡高校で堆肥「バイオの恵み」の施肥により収穫されたメロン

 メロンのビニールハウスも見せて頂いたが、臭気は既に無くなっていた。
 津幡高校では、臭気を抜く為に米糠や油粕、植物残渣等と混錬することで追熟中であった。
 季節にもよるが、夏場であれば2週間程度追熟すると、自己加熱しながら臭気が抜けるとのことであった。
 鹿島中部クリーンセンターでは、現在の消化ガス回収施設、汚泥の堆肥化施設導入前は、河北潟にある(株)河北潟ゆうきの里に汚泥の処分を委託していたとのことだったので、河北潟ゆうきの里を訪問した。
 
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3−3.株式会社河北潟ゆうきの里の取り組み

 この企業は、河北潟の酪農組合が出資して立ち上げた会社で、元々は酪農家から排出される牛の糞尿を脱水、発酵・堆肥化し、牧草地に施肥する、完全循環型のサイクルを回していたのだが、下水道汚泥等も産業廃棄物として堆肥化を始めていた。(かんとりースーパーゆうきの里)(図3−3 ゆうきの里の汚泥堆肥化施設参照)

図3−3 ゆうきの里の汚泥堆肥化施設

 昨今の肥料、飼料の高騰は、酪農家の事業を直撃しているようで、ゆうきの里の肥料の購入量を増やす動きと共に、飼料用のトウモロコシの栽培を検討しているとのことで、各社栽培用の土地取得に動いている為、飼料用トウモロコシ栽培用の肥料需要が上がっていた。
 ゆうきの里の特徴としては、汚泥発酵に使われるYM菌が優れており、発酵熱だけで90℃以上の高温まで加温される為、殺菌作用も付加され、完熟した、衛生的な肥料が出来るのが売りのようだ。実際大量に置いてある肥料に殆ど臭気を感じなかった。
 こちらの熟成度合いを見てしまうと鹿島中部クリーンセンターの堆肥は、消化はされているが未だ追熟が必要なのは、頷ける。
 因みに、ゆうきの里では、消化処理がされていない汚泥の方がうまく発酵するのだそうだ。
 上記の金沢市、白山市、中能登町、また自家処理する珠洲市、小松市以外の自治体の下水処理施設から排出される汚泥(その中に農業集落排水施設、浄化槽から排出される汚泥が含まれている)は、ゆうきの里で産業廃棄物として堆肥化されているそうだ。
 
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4.その他、石川県内の各自治体や装置メーカーについて

その他、石川県では、能登半島先端の珠洲市に「メタン活用いしかわモデル」前に珠洲市バイオマスメタン発酵施設という鹿島中部クリーンセンターと同様な施設が稼働している。(堆肥名 為五郎)
 又小松市にある「小松加賀衛生センター」の下水処理施設では脱水ケーキを乾燥させたものを肥料として販売している。(畑の栄養剤 すくすく)見てはいないが、方式的には全く熟成されていないと思われる。
 メタン発酵処理装置を製造している、金沢市の湊にある明和工業株式会社は、バイオマス炭化装置もラインナップしており、バイオマスを炭化処理することで、炭化肥料をつくることが出来る。
 
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5.所感

 以上、小松市や珠洲市など、未だ追跡していないところがあるが、ここまで見てきた所感としては
 @浄化槽や下水汚泥の未利用バイオマス循環利用には、現在の法規制の元では所轄自治体の取り組みを欠かすことが出来ない。
 A対立軸で語られがちな浄化槽と下水道だが、汚泥処理に関しては、下水道インフラなくして汚泥を適正処理することは困難である。

 冒頭の各省庁方針や、最近の資材の高騰や入手難の状況から、循環型ビジネスは追い風である、しかし今回訪問したような下水処理施設の改修には構想段階からだと長い期間を必要とする、今回の様にキーマンとの粘り強いコミュニケーションを継続し、政策決定に影響を与えることが重要ではないだろうか。
<参考文献・資料>
農業集落排水の手引き (令和4年度版) 〜より良い保全・管理・整備のために〜・農業集落排水の手引き (令和4年度版) 〜より良い保全・管理・整備のために〜
(一社)地域環境資源センター
http://www.jarus.or.jp/pamphlet/S-1_0404.pdf
下水汚泥広域利活用検討マニュアル 2019年(平成31年)3月
国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部
https://www.mlit.go.jp/common/001282926.pdf
メタン活用いしかわモデル導入の手引き〜小規模下水処理場における混合バイオマスメタン発酵システム〜 −2019年3月改訂−
石川県
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/seikatsuhaisui/gesui/documents/metantebiki.pdf
金沢市における 官民連携事業の取組について
金沢市企業局
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001313238.pdf
(ニッコー(株) カイゼン実践室)
 
 
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