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最近の悪臭問題及び臭気判定士について
兼今 慎悟 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2022年9月号)
1. はじめに
2. 臭気判定士について
3. 臭気の種類について
4. 臭気判定士の活動内容
5. 悪臭苦情件数の推移と最近の苦情内容の傾向
6. おわりに
1.はじめに

 我々の生活においてにおいというものはあふれかえっており “ゴミのにおい” “花のかおり” というように様々なにおいを感じながら日常を過ごしている。
 においはヒトの活動の様々な場面から発生し、中にはヒトに不快感をもたらす悪臭も存在する。最近では良いにおいと感じられる飲食店からのにおいや香料のにおいも苦情の対象となっており、また、家庭の無臭化が進み少しのにおいも許容できない人々が増えている。悪臭は時に健康被害といった大きな問題をもたらすため、様々な対応の検討が必要とされる。
 本稿ではそんな悪臭の問題及びにおいを専門とする環境保全のスペシャリストである臭気判定士について取り上げる。
 
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2.臭気判定士について

 臭気判定士は平成8年悪臭防止法の改正に伴い誕生した資格である。誕生の経緯として悪臭防止法の施行(昭和47年)以降、規制方法は悪臭物質濃度による規制であった。しかし緩いペースで減少傾向にあった悪臭の苦情件数が、平成5年度以降サービス業や日常生活に伴う苦情により増加した。そこで従来の規制では悪臭苦情件数の増加を抑える事が困難と判断し、平成8年の法改正により臭気指数を導入し悪臭物質の濃度ではなく悪臭そのものの程度を数値化し、悪臭物質以外の原因による悪臭に対しても新たに規制をかけた。なお規制は悪臭物質濃度または臭気指数を選択・指定して行われる事となった。
 においの測定方法には分析機器によるにおい物質の濃度測定と、人の嗅覚を用いる嗅覚測定法の2通りがあり、嗅覚測定法は臭気指数を用いて悪臭の程度を数値化したもので、濃度測定によるものと比較し、より人の感覚に近い結果が得られるもので国際的にも主流となっている。
 臭気判定士は嗅覚測定法を行うための国家資格で、パネルの選定、試料の採取、判定試験、結果のまとめまでを統括し、測定の適格かつ公正な実施を確保するため国家資格が付与されるものである。
 
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3.臭気の種類について

 におい物質の中で生活環境を損なう恐れのあるものとして、特定悪臭物質が政令で定められており、現在22物質が指定されている。(表−1参照)
 我々の生活圏にある様々な施設からこれらの悪臭物質は発生しており、下水処理場や浄化槽施設からはアンモニアや硫化水素、クラフトパルプ工場からは硫黄系の物質、複合肥料製造工場からはトリメチルアミン、塗装工場からはアルデヒド類、化学工場やFRP等の製造工場からはスチレン等の揮発性有機溶剤、畜産農場からはアンモニアや脂肪酸類等が発生する。
 しかし、悪臭苦情はこれらの物質を規制するだけでは解決できない場合もあり、またこれらの発生源からの悪臭は単独の物質のみで構成される事は無く様々な物質が混ざり合い悪臭となっている。

表−1 特定悪臭物質の種類
 
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4.臭気判定士の活動内容

 臭気判定士は嗅覚測定法を行うための国家資格である。嗅覚測定法の一連の流れは前項でも少し述べたが、嗅覚測定法を実施するパネルの選定、試料の採取、判定試験、結果のまとめである。(図−1参照)
 パネルの選定では、実際ににおいをかぐ人(パネル)が一般的な嗅力を持ち合わせているか嗅覚の検査を行う。臭気判定士はこの嗅覚検査の実施及び検査の準備を行う。
 試料の採取はにおいが排出されている工場の敷地境界や煙突等からにおいが強いときのガスの採取を行う。
 判定試験はにおいの付いた試料袋と無臭の袋を準備し、においの嗅ぎ分けを行い、試料を希釈しにおいの嗅ぎ分けが行えなくなるまで行う。このため試験は試料の調整や測定の準備を行うオペレーターとにおいを嗅ぐパネルに分かれる。パネルは嗅覚検査に合格したものであれば誰でも行えるが、オペレーターは臭気判定士が行うものとする。
 測定結果は臭気判定士が取りまとめを行う。測定結果には臭気指数という悪臭の程度を数値化した指標を用いる。臭気指数はにおいの付いた空気や水をにおいが感じられなくなるまで無臭の空気や水で薄めたときの希釈倍数を求め、その常用対数値に10を乗じ求めるものである。
臭気指数=10×log(希釈倍数)
 例えばにおいを含んだ空気や水を100倍に希釈したときにおいが感じられなくなった場合、臭気指数は20(log100=2 10×2=20)となる。
図−1 嗅覚測定法の一連の流れ (1)

 また、これらの業務で得た知識・経験を活かし臭気対策の提案、測定精度向上の為の技術研修会の開催、臭気対策を中心とした知識の普及を図るセミナーや講習会の開催といった活動を行っている人もいる。
 
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5.悪臭苦情件数の推移と最近の苦情内容の傾向

 昭和47年5月に悪臭防止法が施行され、以降環境省により全国の都道府県、市及び特別区を通じ苦情件数の取りまとめが行われている。苦情件数の推移をみると(図−2参照)平成5年までは緩いペースで減少し続けていたが、サービス業や日常生活に伴う苦情により増加した。平成8年4月に法改正により嗅覚測定法が導入されたが全国的に普及するまで時間がかかり、平成15年度までは増加した。それ以降は普及効果が表れ減少し続けているが近年再び増加傾向にある。平成30年、令和元年とわずかではあるが増加し令和元年から2年にかけては大幅に増加した。

図−2 苦情件数の推移 (2)

 また苦情件数を発生源別にみると、全体の苦情件数15,438件に対し、野外焼却が5536件(全体の35.9%)で最も多く、次いでサービス業・その他が2025件(同13.1%)、個人住宅・アパート・寮の1936件(同12.5%)の順となっている(図−3参照)。

図−3 令和2年度苦情件数の発生源別内訳 (3)

 また、令和元年と2年の苦情件数を比較すると、増加した発生源で最も多いのが野外焼却で1943件(54.1%増)、次いで個人住宅・アパート・寮が462件(31.3%増)、畜産農業が220件(22.9%増)、サービス業・その他が183件(9.9%増)の順となっている。その中でも野外焼却は工場・事業場由来のものが491件(35.4%増)で工場・事業場以外の由来のものが1452件(65.9%増)となっている。(図−4参照)

図−4 発生源別の苦情件数の推移 (3)

 苦情件数の増加についてはコロナウイルスの影響で在宅時間が増えた為であると考えられる。また苦情件数を発生源別でみていくと、全体として苦情件数が増加している為、前年と比較しほとんどの発生源で増加している。しかし規制対象である工場・事業場由来の悪臭はそれ以外の発生源と比較し増加は緩やかで、中には減少しているものもある。よって工場・事業場からの悪臭対策は徐々にではあるが進んでおり、これ以外の発生源からの苦情を減らす事が当面の課題と言える。
 
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6.おわりに

 ここまで臭気判定士の活動内容や悪臭の問題について記載してきた。悪臭の問題についてはコロナをきっかけにリモートワークが進み、自宅の滞在時間が増えた事で、令和2年度の悪臭苦情件数は増加したと考えられる。その為苦情件数の増加は一過性のもので無く今後さらに増加していくことが予想される。
 臭気判定士は臭気の測定を主に行うが、においを専門とする環境保全のスペシャリストとして得た経験や知識をもとに、人々の社会生活により発生する悪臭問題を様々な角度から解決のアプローチを測ることが可能な臭気判定士は今後社会におけるニーズがますます高まっていくと考える。
 
<参考文献・資料>
1) 環境省 水・大気環境局大気生活環境室 臭気判定士パンフレットより一部抜粋
https://www.env.go.jp/air/akushu/shuukihannteisi.pdf
2) 環境省 令和2年度悪臭防止法施行状況調査について(概要)
https://www.env.go.jp/air/R02akusyu_gaiyo.pdf
3) 環境省 令和2年度悪臭防止法施行状況調査報告書
https://www.env.go.jp/air/R02akusyu_report.pdf
(アムズ(株) 技術推進部)
 
 
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