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排水中の油分対策と事例
田中 理 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2020年5月号)
1. はじめに
2. 油分対策技術
3. 適用事例
4. おわりに
1.はじめに

 食堂・飲食店舗などの厨房排水や油脂を使用する食品、化学工場の排水には高濃度の油分が含まれる。これらの排水が公共用水域や浄化槽に排出されると管路閉塞や排水処理設備へ影響を及ぼし、水質汚濁や悪臭の原因となる。
 例えば、家庭で使用する天ぷら油10mLはBOD15,000mgに値する 1) と言われており、浄化槽に流せる濃度(BOD200mg/L)にするためには75Lの水で薄めなければならない算出となる。また、75L中の天ぷら油10mL(比重0.9と仮定)は、動植物油脂類に関するノルマルヘキサン抽出物質量(n-hex.)として120mg/Lになる。
 水質汚濁防止法に基づく一律排水基準および下水道の排除基準とも、動植物油(n-hex.)の基準値は30mg/L以下と定められており、75L中の天ぷら油10mL(BOD200 mg/L)は下水道の排除基準値内であっても動植物油(n-hex.)としては120mg/Lと基準値を大きく超過しており、確実に油分を除去しなければならないことがわかる。
 本稿では、排水中の油分対策技術の代表例を説明するとともに各現場での油分対策事例を報告する。
 
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2.油分対策技術

 排水中の油分性状によって処理方法も異なるが、油が水に浮いている状態であれば、比重差を利用したグリーストラップ(油水分離槽)が有効となる。しかし、分離が困難な排水は一定時間静置しても油が水に浮くことがなく、グリーストラップをそのまま通過してしまう。そのときは凝集剤等の処理用薬剤を利用して排水中の油分を懸濁物質とともに塊(フロック)にし、空気が溶解した加圧水を大気開放したときに発生する微細気泡を用いて、フロックを浮上分離させる加圧浮上法が選択される。
 生物処理の代表と言える活性汚泥の場合、油分含有排水を直接処理するためには、機能障害にならないように油脂許容濃度(動植物油50〜100[mg/L])まで前処理する必要がある。この前処理を不要とするため、難分解性物質や油分等の対象物質に有効な微生物を培養する方法や、微生物を高濃度に保持して除去対象物質の負荷に応じて適正処理する高負荷処理法等の直接生物処理法が開発されている。

2−1 グリーストラップ(油水分離槽)

 図1にパイプ流入埋設のFRP製グリーストラップ構造例を示す。流入部にバスケットがあり、残渣物を回収し、槽内の仕切り板の効果で比重の小さい油を浮上させて油分の少ない排水だけを流出管に流す装置である。グリーストラップの仕様は、空気・調和衛生工学会規格SHASE-S217-2016グリース阻集器に基づく選定基準(厨房を含む店舗の全面積、1日の利用人数等)によって選定することが可能となる。

図1 グリーストラップ構造例

 設置場所や既設配管の制限等でグリーストラップ設置が困難な場合は、シンク一体型のグリーストラップも販売されている。(写真1)また、排水量が多いときの現場施工型グリーストラップ容量算定方法もSHASE-S217-2016に構造基準が定められている。

写真1 シンク一体型グリーストラップ

 グリーストラップは清掃を怠ると水質悪化や悪臭、害虫の発生場所になってしまうため、バスケット清掃、槽内滞留物の汲み取り・清掃を日常的に実施することが必要である。現場施工の大型グリーストラップでは浮上油回収装置を付帯して日常管理の負担を軽減することがある。
 なお、清掃時の回収した油脂分は廃棄物として処理しなければならない。


2−2 加圧浮上法 2)

 加圧浮上法の処理フロー例を図2に示す。分離が困難な排水を計量槽で中和槽に定量供給し、前もって中和することが望ましい。つぎに、反応槽で無機凝集剤を排水の汚濁度合に応じて注入し、急速撹拌することで微小フロック(凝集微粒子)を形成させる。無機凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や鉄系凝集剤が普及している。
 反応槽内のpH調整により、微小フロック(凝集微粒子)形成を安定させながら後段の凝集槽で高分子凝集剤(ポリマー)を注入し、緩速撹拌することで微小フロックが相互に衝突・合一を繰り返し大きなフロックに成長させる。高分子凝集剤はフロックの形成状態をみて薬剤選定、諸条件変更を実施する。
 大きなフロックを含んだ排水は浮上分離槽の下部入口で空気を溶解した水と混合し、フロックは気泡が付着して軽くなり浮上して水面に到達する。水面の浮上物はスカム貯槽に集められ、浮上物と分離された水は槽中間部分から処理水として排出される。また、処理水の一部は加圧水ポンプラインに循環させる。
 高濃度油分が排水中に含まれる場合、加圧浮上法などの物理化学処理によって前処理した後、活性汚泥法で残存有機物を生物処理する方法が一般的である。加圧浮上設備の導入により、排水中の油分はほとんど除去され、その他の有機物や懸濁物も凝集物(スカム)として除去される。そのため、残存する有機物に対応する生物処理設備を後段に設置すれば良い。
 ただし、発生スカム等の排水設備全体の臭気対策、排水性状に見合った処理用薬剤の投入が必要となり、設備管理や産業廃棄物処分費を含む設備運転費用が負担になる。

図2 処理フロー例(加圧水ポンプユニットタイプ)


2−3直接生物処理法

 油分含有排水処理は、微生物を高濃度に保持すること、栄養バランスや必要酸素量を整えて微生物活性を高めることが留意事項である。例えば、@担体による高負荷処理システム、A油分解に必要な酵素やバチルス等の細菌群を連続的に投入する方法、Bマイクロバブルで微生物に必要な酸素を効率的に供給する方法およびそれらの組合せ等が挙げられる。
 図3の排水種類によって油分濃度も異なるが、排水性状に見合った担体(微生物の居住場所)やエアレーションタンク容量、槽内撹拌法などを設計し、微生物の共生効果を最大限引き出す生物固定化法 3) が開発されている。

図3 排水種類とBOD、油分濃度の傾向(飲料1:茶系メイン、飲料2:果汁、糖類メイン)

 当社は動植物油(n-hex.)300‐570mg/L程度の高濃度油分含有排水を担体流動法で高負荷処理する技術(図4)を所有しており、特殊担体で除去できる油分量を設計し、運転条件を調整することで適正処理を実現している。本法では、食物連鎖により後生動物等の高位の微生物種が増加することで余剰汚泥転換率が低くなり 4)、汚泥沈降性も向上して良質な処理水が得られる。当社経験値では活性汚泥法に比べ50%前後の汚泥発生量に抑えられるため、汚泥処分費用が削減できる。油分含有排水を高負荷処理することで加圧浮上設備の管理や運転費用等の課題が解決できる場合がある。ただし、処理設備の占有面積は加圧浮上設備導入よりも大きくなる傾向にあり、原水・汚泥処理設備の臭気対策(写真2)も必要となる。

図4 油分含有排水の高負荷処理フロー例

写真2 臭気対策(一例 生物脱臭装置)
 
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3.適用事例

3−1菓子製造排水処理施設 現場設置型油水分離槽(写真3)
(200m3/日、動植物油(n-hex.)50mg/L→30mg/L以下 油分除去率40%程度)

製造ラインの増設により、排水中に回収しきれない油分が排出されるようになり油分対策が必要になった。設置スペースと臭気問題を考慮し、流入SSスクリーンの前段に地上式油水分離槽を設置した。油水分離槽の日常点検と1回/月程度の槽内清掃を実施した結果、後段の管路閉塞や悪臭を防止することができ、後段排水処理設備の省力化と処理水質の安定を継続した。

写真3 油水分離槽(材質:SUS304、蓋FRP)


3−2惣菜排水処理施設(下水道放流) 80m3/日、BOD800 mg/L、SS 1,500 mg/L、
n-hex.190mg/L→BOD600 mg/L未満、SS 600 mg/L未満、n-hex.30mg/L以下

排水量とその濃度に変動がある製造工程排水を対象に加圧浮上設備(写真4)を設置し、下水排除基準に適合する処理水まで除去することが求められた。

写真4 加圧浮上設備ユニット(材質:SUS304)

加圧浮上設備のコンパクト化を図るため、反応槽、凝集槽および浮上分離槽をユニット化したものを製作した。反応槽内で無機凝集剤(PAC)、苛性ソーダを用いて微小フロックを形成させた後、ポリマーで大きなフロックにすることで良好な処理水質を維持できた。
加圧浮上設備のみで下水排除基準を満足させるためには、各種薬剤を多めに注入してフロックを強固なものとしたが、後段の汚泥処理設備へのスカム移送が困難になることが想定されたため、適切な薬剤添加条件、設備運転条件の選定が重要となった。


3−3排水処理施設(下水道放流) 314m3/日、n-hex.330mg/L →30mg/L以下

製造品増産のため280m3/日,BOD1,200 mg/Lの既存除害施設を利活用して300〜350m3/日の実際排水量と排水濃度(表1)の変動下で適正処理する増強設備が必要となった。図4油分含有排水の高負荷処理フローを応用し、送風機等の付帯設備を増設した結果、慢性的なエアー不足と汚泥分離不良を解消した。また、排水設備を遠隔管理(写真5)することで、機器類の動力費、汚泥処分費等にかかる運転費用の縮減を図っている。

表1 排水設備の水質分析結果一覧 (2019.4〜2020.3)

写真5 遠隔管理装置(濁度計を利用した処理水SS管理)
 
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4.おわりに
 
  排水中に油分が含有される場合、油分性状や排水規模に応じた油分対策技術を導入する必要があるが、油分が含まれない排水処理設備と比較して建設費や運転費が高くなる傾向がある。設備コストを安価にするためには、油脂を使用した場所近くでなるべく回収・除去し、排水中の油分濃度を低減することが必要である。
 生産現場では、衛生管理上の問題で使用場所での油分回収・除去作業は容易ではないことが思量され、そのときに回収した油分を利活用するしくみや技術革新が期待される。
 脱炭素化社会やSDGs構想の実現にむけて、水質規制を遵守しながら産業廃棄物削減、省エネルギー効果を満足させるシステムが切望される。処理水および廃棄物を再利用・再資源化できるネットワークを構築し、人・水・環境に留意した地域循環を着実に広げていきたい。


参考資料・文献
1) 環境省 Webサイト,生活排水読本 https://www.env.go.jp/water/seikatsu/
2) 産業調査会 事典出版センター:実用 水の処理・活用大事典,p110-122(2011)
3) 公益社団法人日本下水道協会:下水道施設計画・設計指針と解説後編-2019年版-,p300-302(2019)
4) 栗田工業(株):よくわかる水処理技術,p134,日本実業出版社(2012)

お問合せ 前澤化成工業(株) 水環境事業部
       〒103‐0023 東京都中央区日本橋本町2−7−1
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(前澤化成工業(株) 水環境事業部)
 
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