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SDGsと浄化槽
足立 清和 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2019年 3月号)
1.はじめに
2.SDGsとは
3.SDGsと浄化槽
4.おわりに

1.はじめに

  最近よく耳にする“SDGs”ですが、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略語で、エス・ディー・ジーズと読みます。複数の目標(ゴール)であることから、“ジー・エス”ではなく“ジーズ”と読める人は、SDGsの意味を理解している人だと思います。
  今や世界的共通言語となったSDGsの理解を進め、水環境の保全に資する浄化槽との関わりについて考える機会になればと思い、私見を交え今回まとめます。 

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2.SDGsとは
 
  SDGsは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミット(国連加盟193カ国)で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(実施すべき計画)」に記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現させるための17の目標と各目標を実現させるための169のターゲット、及びそのターゲットを世界標準で評価する指標から構成されています。全世界に普及させるべく、図-1に示す世界共通のロゴと17の目標を示すアイコンがデザインされ、様々な場面でよく目にするようになりました。図-1では、紙面が白黒のため、ロゴ使用のガイドラインに従い白黒用のロゴを引用しましたが、インターネットでSDGsを検索するとカラフルなデザインのロゴを目にします。
図-1 SDGsの17のゴール
  多くの大企業のホームページ等では、企業の社会的責任(CSR)や環境活動にSDGsの内容を加えて発信していることが多いです。SDGsは、世界共通の目標に向けた行動へと導く“羅針盤”のような面と世界共通の指標で評価される“ものさし”の様な面があると考えられており、投資家がSDGsを指標として企業価値を見る向きもあるため、重要な要素となるようです。各国政府でもSDGs推進に向けた政策が実施されることから、SDGsに関連する市場が活性化することが期待されています。
  以前のMDGsは、世界から極度な貧困を撲滅するという開発途上国への支援が主目的であったのに対して、SDGsは先進国も対象としています。そのため、世界中の多くの場面で、SDGsに関連する市場が存在するものと思います。そして、2030年までに、貧困をなくし、地球環境に配慮し、持続可能で公正・公平な世界をつくりだすため、世界中の一人ひとりが、自国や世界の問題に取り組むことが必要とされています。
  国連ではない民間組織がSDGsの達成と進捗状況をまとめたものによると、日本の達成状況は表-1のようにまとめられています。ランキングでみると日本は15位となっています(図-2)。一方で、「ジャパンブランド調査2018」によると、世界20カ国におけるSDGsの平均認知率は51.6%です。特にASEANにおける認知率が高く、ベトナム80.7%、フィリピン70.3%であるのに対し、日本の認知率は14.8%と非常に低い状況です。
表-1 日本のSDGs達成状況(2018年)
(SDGインデックス&ダッシュボードレポート)
目標 内  容 評価
1 貧困の撲滅 B
2 飢餓撲滅、食品安全保障 B
3 健康・福祉 B
4 万人への質の高い教育、生涯学習 A
5 ジェンダー平等 D
6 水・衛生の利用可能性 B
7 エネルギーへのアクセス C
8 包摂的で持続可能な経済成長、雇用 B
9 強靭なインフラ、工業化・イノベーション B
10 国内と国家間の不平等の是正 C
11 持続可能な都市 C
12 持続可能な生産と消費 D
13 気候変動への対処 D
14 海洋と海洋資源の保全・持続可能な利用 D
15 陸域生態系、森林管理、砂漠化への対処、生物多様性 C
16 平和で包摂的な社会の促進 B
17 実施手段の強化と持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップの活性化 D
A : 既に達成
B : 達成に近づきつつあるが課題が多い
C : 課題が多い
D : 達成に程遠い


図-2 SDGs達成状況ランキング(2018年)
(SDGインデックス&ダッシュボードレポート)
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3.SDGsと浄化槽
 
  私の考えですが、日本の認知率が低いのは、日本は先進国でSDGsのランキングでも上位であることから、貧困撲滅や地球環境に配慮といった目標があっても、どこか国境の外側の問題であるという認識が強く、自身には関係ないという意識があるためではないかと思います。しかし、日本の人口減少・少子高齢化、災害対策、食料自給率、輸入依存の資源といった課題は大きく、現状は良くても、持続可能な経済・社会・環境を発展または維持させることを考えると、決して他人事ではないと気付くはずです。 
  今回、我々が関係する浄化槽について考えてみました。直接的には表-1の目標6が当てはまると考えられます。SDGインデックス&ダッシュボードレポートでは、評価B(達成に近づきつつあるが課題が多い)とされています。2016年度の全国の汚水処理人口普及率は90.9%で、その内、9.2%が浄化槽とされています。特に人口規模が小さい地域では、分散処理ができる浄化槽が適しており、今後の普及率アップは浄化槽に期待されています。
  目標6のターゲットと指標について表-2にまとめました。ターゲット6.2と指標6.2.1が浄化槽に関係すると考えられますが、ここでは公衆衛生サービスを利用する人口割合が指標となっており、単独処理浄化槽も含めた水洗化率で評価されるように思います。日本では、生活排水処理を含めた汚水処理人口普及率を達成する10年概成の目標があり、より高い目標に向け進んでいるといえます。その他に、ターゲット6.3には未処理排水の割合半減との内容があります。浄化槽整備区域を考えると、未処理の小規模事業場排水についても浄化槽で対応できないものかと思います。
表-2 SDGsゴール6のターゲットと指標
https://unstats.un.org/sdgs/indicators/indicators-list/を総務省が仮訳2018年12月より引用)
目標(ゴール)6  全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
ターゲット 指標
6.1 2030年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。 6.1.1 安全に管理された飲料水サービスを利用する人口の割合
6.2 2030年までに、全ての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、並びに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。 6.2.1 (a)安全に管理された公衆衛生サービスを利用する人口の割合
(b)石けんや水のある手洗い場を利用する人口の割合
6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用を世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 6.3.1 安全に処理された排水の割合
6.3.2 良好な水質を持つ水域の割合
6.4 2030年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。 6.4.1 水の利用効率の経時変化
6.4.2 水ストレスレベル:淡水資源量に占める淡水採取量の割合
6.5 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。 6.5.1 統合水資源管理(IWRM)実施の度合い(0-100)
6.5.2 水資源協力のための運営協定がある越境流域の割合
6.6 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う。 6.6.1 水関連生態系範囲の経時変化
6.a 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。 6.a.1 政府調整支出計画の一部である上下水道関連のODAの総量
6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。 6.b.1 上下水道管理への地方コミュニティの参加のために制定し、運営されている政策及び手続のある地方公共団体の割合

  また、世界的に開発途上国の汚水処理が進められる中で、多くの国から日本の浄化槽技術に関心が寄せられています。これまで世界的な汚水の分散処理施設は、セップティックタンクが標準的であったようですが、SDGsの達成に向け浄化槽を採用する地域が増えています。世界的にみても、浄化槽は高度に発達した技術であるようで、日本の実績も踏まえて信頼性があり、水環境の保全に優れた装置と評価されているものと考えられます。環境省も日本の優れた浄化槽技術を世界に発信しています。現状は、信頼のある日本製の浄化槽が輸出されていますが、輸送コストを考えると、いずれは現地で生産されるようになり、浄化槽の普及が更に進み、より多くの地域でSDGsの達成が近づけられると考えられます。
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4.おわりに
 
  日本において発達した浄化槽の技術が世界的に注目されることは、浄化槽に係わる一人として嬉しく思います。浄化槽の装置としての技術の他、維持管理の技術や正しい使用方法、法的位置づけや規制などの考え方など、世界に伝えるべき内容は多いと思います。JICAでは、日本の民間企業の製品や技術と途上国の開発ニーズのマッチングを支援する「中小企業・SDGsビジネス支援事業」などがあります。より多くの浄化槽に係わる企業や人が、世界のSDGs達成に向け活躍することを願います。
 
(アムズ(株))
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