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膜分離活性汚泥法(MBR)を利用した有機性排水処理技術
田中 理 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2018年 7月号)
  要 旨
1.はじめに
2.膜分離活性汚泥法(MBR)
3.留意事項
4.維持管理
5.MBR適用事例
6.おわりに
要 旨

  食品、化学工場等では有機物濃度が高く、一年を通じて負荷変動も大きい傾向があり、排水を適正処理する生物処理法が必要となる。とくに、低コスト、コンパクトな活性汚泥法に替わる高負荷処理技術が時代のニーズとなり、日常の排水管理が簡単でランニングコストが負担とならないシステムが採用される。
  本稿は、有機性排水を効率的に安定処理する生物処理技術の代表と言える膜分離活性汚泥法(MBR: Membrane Bioreactor)を紹介する。また、膜処理技術に関する留意事項や維持管理の内容等を述べるとともに各工場排水のMBRを適用した事例について報告する。
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1.はじめに

  地球温暖化や水資源不足が顕在化している現在、省エネルギーで画期的な水処理関連技術が切望されており、生活系および産業分野の排水負荷を低減して再利用することが重要となる。
  産業排水は有機物濃度(BOD1,000mg/以上)が高く、製造工程時に生じる各排水濃度とその水量も変動することが多い。また、計画用地の制限、製造プロセス拡大に伴う排水負荷の増大、さらに厳しくなる水質規制など、排水対策への要求事項が厳しくなっている中、排水設備をコンパクトにした高負荷処理が求められる。高負荷処理の実現は、エアレーションタンク内の微生物濃度を高めること、増殖速度の遅い微生物をウォッシュアウトさせないMBRが適した処理技術といえる。

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2.膜分離活性汚泥法(MBR)
 
  MBRは、膜孔径(図1)の限外ろ過(UF)膜あるいは精密ろ過(MF)膜を選定しており、平膜、中空糸膜等の形状があり、エアレーションタンク内に膜カートリッジを浸漬させる方法が主流である。また、材質はCPE(塩素化ポリエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PES(ポリエーテルサルフォン)PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の有機膜が採用されており、カセット中に複数の膜を配列したモジュール(写真1)に散気装置を付帯してユニット化(写真2)されている。膜配列やバブリング強度は各社で設定されており、膜の物理的破損や膜面閉塞物の付着を防止している。また、インライン定期洗浄で使用する薬剤や酸およびアルカリ耐性に優れ、膜寿命も5年以上持続するものが多い。

図1 選定膜孔径

写真1 膜モジュール例 写真2 膜ユニット例

図2 膜ユニット設置フロー例(浸漬タイプ)

  ばっ気槽へ膜ユニットを設置した浸漬タイプの処理フロー例を示す(図2)。膜ユニットの設置方式の種類は、膜分離槽別置タイプや槽外設置タイプもある1)
  微多孔質の膜ろ過によって、生物処理槽中の懸濁液から大腸菌などのバクテリアも分離した良好な処理水が獲得でき、運転MLSSは8,000-15,000mg/程度で活性汚泥(通常値2,000-5,000mg/)よりも高密度に微生物を維持できる。
  排水性状によっては、脱窒素・脱リン、脱色(COD対策)設備を考慮する必要があるが、膜処理水は、冷却水、循環水、緊急災害時など再生利用できる。
  膜メンテナンスはバブリング洗浄による日常クリーニングと次亜塩素酸ナトリウムを標準としたインライン定期洗浄を実施することで、処理時間の経過に伴うファウリング(膜目詰まり)を防止する。膜処理水は、水頭圧やサイフォンろ過方式で行うこともあったが、処理水排出ポンプによる間欠吸引で膜圧を圧力計で制御してろ過水を得る方法が定着した。MFあるいはUF膜の操作圧力はNF、RO膜よりも低いので、使用するポンプ動力が抑えられる傾向にある。
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3.留意事項

  MBRが適用される事例としては、排水負荷変動時に活性汚泥のバルキングや脱窒素汚泥浮上等の固液分離障害が頻発し、処理水の水質リスクを改善したい事業場に採用される。高濃度油分や難分解性物質が排水に含有される場合は、加圧浮上設備や初沈設備を前置して対象物を除去しなければならない。その理由は、汚泥の粘性が増していくことでファウリングが起こり、その対処法として薬液による膜洗浄頻度を多くするか、MLSS濃度を下げて汚泥粘性を低くしなければならず、MBRの本来の運転が困難となるからである。しかし、複数のエアレーションタンクと膜分離槽を別に設けて多段処理を行うとファウリングが少なくなった事例がある。また、嫌気‐無酸素‐膜分離槽(好気)として汚泥循環を実施し、PAC等の無機凝集剤を併用すれば、脱窒素・脱リンの高度処理が実現できる。
  加圧浮上設備を前処理とした場合、無機凝集剤やポリマーを注入することになるが、排水負荷増大に伴い、薬液量を多くするとポリマーが分解されずに汚泥粘性が高くなることがあるので、
過剰の薬液使用は避けるべきである。
  既存活性汚泥設備にMBRを導入する場合、凝集、砂ろ過工程や沈殿槽および汚泥濃縮槽が不要となり設備がよりコンパクトになる。また、適正なエアレーション下では、活性汚泥の微生物管理から膜差圧値管理となるため、排水設備の日常確認が簡単になる。ただし、膜洗浄時は排水移流を停止させる必要があるので、調整槽に余裕があれば安全である。MBRは、単位膜面積あたりのろ過水量(フラックス)の設計値があるため、水量負荷変動のある場合は、最大排水量で計画しなければならない。(平膜の場合:産業排水処理では、0.2‐0.4m3/m2・日程度が当社経験値である。)
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4.維持管理
 
  MBRは、最終沈殿槽で起こる脱窒素汚泥浮上やバルキングの心配から解放されるが、生物処理に必要な日常点検、汚泥管理等のメンテナンスは必要である。また、MLSSを高めても膜差圧が安定していることがあるため、DO不足にならないように、ばっ気量を調整することが必要である。DOは、水温や生物活性の変化でその値も変化するので、DOがあるから良いというだけでは排水設備を安定化させることができないので注意を払う必要がある(表1)。
  また、施設の膜差圧データを管理して、膜洗浄や交換時期を決定する遠隔管理システム2)を採用している現場もあり、現場ごとに管理手法を定めている。

表1 水温とDO(溶存酸素量)のバランス3)
※(財)日本環境整備教育センター:浄化槽の維持管理・下巻,p248(2011)を一部改編
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5.MBR適用事例

5-1菓子製造排水処理施設(河川放流)(360−750m3/日、BOD1,700−2,000mg/L→10mg/

  既存施設は490m3/日処理の加圧浮上装置+活性汚泥法であったが、生産量増加に伴い繁忙期と通常期の排水変動によって処理水の水質確保が課題となった。
  また、計画地が制限され汚泥処理設備も既存脱水設備の運転時間延長で対応できるように余剰汚泥発生量を低減できる高効率な生物処理法が要求された。
  そこで既存排水設備に加えて、図3のとおり@MBBR(Moving Bed Biofilm Reactor)を設け、A沈殿槽を増設せず、別槽にMF膜ユニット(写真3)を設置することで増量負荷分に対応し、通常と繁忙期の変動対策を実現した。ただし、週に数回頻度のインライン自動洗浄を実施し、加圧浮上装置で除去しきれない排水成分の膜面付着を防止することが必要となった。
  通常期の排水量が抑えられる時に膜の引上洗浄点検を行い、その間は既存沈殿槽で排水全量を放流している。また、繁忙時期への切換えの際、既設汚泥の一時的な沈降不良にもMBRを利用することにより、安心して排水設備の運転が可能となった。

図3 MBBRとMBR併用法(新規260m3/日処理増設分)

写真3 膜ユニット点検状況(別置タイプ)

5-2ダイカスト製造排水処理施設(河川放流)70m3/日,BOD1,500 mg/,SS 50 mg/,n-hex.30mg/

  製造工程排水を凝集加圧浮上させた処理水を@良好な水質にすること。A既設槽利用を条件に排水処理設備の増強が求められた。既存設備は最終沈殿槽のバルキングによる固液分離障害が課題となっていたが、既存設備にMF膜を浸漬させた増強(写真4)によって汚泥沈降剤の投入等の負担が無くなり良好な処理水が継続できた。また、2012年9月MBR導入から膜保証の維持管理を契約頂き、定期的な薬液洗浄と年1回の引上げ点検を継続実施することで、表2のとおり運転開始から5年経過の現在も設備の安定稼働と良好な処理水質が得られている。

表2 排水設備の水質分析結果一覧 (2017.9〜2018.4)
※動植物油、鉱油ともにノルマルヘキサン抽出物質量(n-hex.)。
  未満:定量下限値、ND:不検出

写真4 ダイカスト排水設備増強(浸漬タイプ)

5-3リネンサプライ排水処理施設(河川放流)90m3/日,BOD200 mg/→20 mg/

  50m3/日未満の製造工程排水を設備稼働延長のため70〜90m3/日と増量し、既存排水設備の改修で良好な処理水質を継続することが求められた。既存設備は接触ばっ気方式で、排水増量のため沈殿槽水面積が不足して処理水が悪化することがあった。
  そこで、既存汚泥貯留槽をUF膜分離槽に改修し、接触ばっ気槽に汚泥循環することでMLSSを安定させることを可能とし、膜ユニットの散気装置にメンブレンディフューザーを選択して膜バブリング強度で排水増量負荷分に必要な供給酸素量を満たせるようにした。(写真5)
  リネン繊維物のスクリーン除去を徹底しながら定期的インライン自動洗浄と年1回浸漬洗浄することで膜面のスケール堆積を防止でき、表3のとおり良好な水質が得られている。また、膜処理水を洗濯設備の補給水として一部再利用することも、高度な処理水質の達成によって可能となる。
表3 排水設備の水質分析結果一覧 (2017.9〜2018.3)

写真5 膜分離槽 ばっ気状況

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6.おわりに
 
  当社MBR1号機は1996年某食品工場向にMF平膜を実機納入し、現在も稼働中である。(写真6)
  MBRは、浄化槽および中小規模の産業排水処理を対象に採用されており、新規・改造・増設に、RC、FRP、鋼板製などで槽設計を行い、放流規制値や処理水リサイクル等の用途に応じて処理フローを選定している。
  日間処理量が数千m3の大規模排水設備には、膜面積を拡大した膜カートリッジが販売され、大型プラントのMBR設計も可能になっている。ただし、排水成分による膜面閉塞のリスクがあるため、加圧浮上設備等の前処理設備の検討、余裕を持った膜カートリッジの設置および膜洗浄・交換にかかる諸費用が大きな負担となり得ることから、排水特性を十分見極めることが肝要となる。

 
写真6 某食品工場 鋼板製膜分離槽(別置タイプMF平膜利用)

  産業分野の有機性排水対策にMBRが導入されてから20年以上経過し、各現場に応じた膜処
理の運転技術も分析できる時代となった。また、無機系産業分野でも、重金属処理の固液分離に膜ユニットを導入している事例がある。
  水質規制、再生水利用などの水の視点と省エネルギーを加味した膜利用の応用技術は、国内外を問わず今後も益々発展し続けると思量される。
 
参考文献
1) 下水道膜処理技術会議:下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン第2版,p27(2011)
2) (株)クボタ Webサイト,http://env.kubota.co.jp/
3) (財)日本環境整備教育センター:浄化槽の維持管理・下巻,p247−249(2011)
 
問合せ 前澤化成工業(株) 水環境事業部
      〒103‐0023 東京都中央区日本橋本町2-7-1
      TEL(03)5962‐0714  FAX(03)5695‐0166 
      URL http://www.maezawa‐k.co.jp
(前澤化成工業株式会社 水環境事業部)
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