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ハウステックにおける浄化槽の海外展開について
古市 昌浩 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2018年1月号)
1.はじめに
2.ハンガリーにおける汚水処理普及への取組み
3.ハンガリーにおけるハウステックの取組み
4.浄化槽の海外展開における展望

1.はじめに

  当社は,25年程前に東南アジアの企業と合弁会社を設立し,日本の許認可を取得した浄化槽をベースに現地生産および現地販売を開始した.しかしながら,1997年のバーツ急落からはじまったアジア通貨危機により,下落する市場価格に対応できず,東南アジアから撤退している.当時事業展開した国では,浄化槽の公的評価制度と処理水質に対する管理体制が未整備であり,価格対応を目的に製品仕様を見直したメーカーが市場に残った.当社の東南アジア撤退は,過剰な価格対応が招く品質低下を危惧したためであった.以降,海外との取引は,案件ごとの売り切りによる輸出がメインとなっている.
  海外における分散型汚水処理の課題は,平成21年度に環境省が実施した「し尿処理システム国際普及推進事業」を機に顕在化してきた.海外で主流の腐敗槽やセプティックタンクによる分散処理は,@生物処理を伴わないものが多く,処理水の汚濁濃度が高いまま地下へ浸透されることから,地下水の汚染が懸念されている1),Aアジアで普及している腐敗槽は,日本の単独処理浄化槽と同じく処理対象がし尿だけで,生活雑排水を未処理のまま放流している2)事例がある,Bフランスでは分散処理の対象が500万世帯と推測され,EU市場の半分を占める3)と言われているものの,水質基準を達成できない施設に対する機能向上を目的とした改修工事の実施率は,全体の1.9%に留まっている4)こと等が明らかとなってきた.
  2015年9月の国連サミットでは,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され,2016年1月1日,「持続可能な開発目標(SDGs)」として正式に発効された5).2030アジェンダには,「目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」の中に未処理排水の割合半減も含まれていることから,各国政府は今後15年の間に相応の汚水処理施設の整備を進める必要がある.
  汚水処理施設普及に関し,国や地域によっては分散型汚水処理施設の品質確保を目的に,第三者評価機関等で評価を受けた認定品のみの設置を義務付けしている事例がある.よって,当該地域では日本で許認可を取得した浄化槽であっても現地の許認可を取得しなければならず,そのためには,地域性の違いによる流入水質や排水基準等に対応した浄化槽を開発し,現地の性能評価試験にてその性能を確認する必要がある.
  日本と海外の性能評価試験概要を調査した結果を表−1に示す.表−1より,地域によって流入水質と放流水質値が大きく異なっていることがわかる.

表−1 海外の性能評価試験の概要

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2.ハンガリーにおける汚水処理普及への取組み
 
  2016年初めに中東欧地域環境センター(REC)から,日本の浄化槽の中東欧地域における普及可能性についての照会が環境省に入り,2016年6月に環境省主催のワークショップがハンガリー国ブダペストにて開催された6)

※RECは,ハンガリーに本部を置き,中東欧の16カ国に拠点をもつ政府間機関であり,中東欧諸国における環境問題の解決のための支援を行っている.RECは1995年にハンガリー政府と協定を結び,外交特権を持つ国際機関としての位置づけとなっている.

  ワークショップには,日本より環境省および浄化槽関連団体,ハンガリーからは,Ministry of National Development,REC,ハンガリー水関連企業,学識経験者等,計34名が出席し,中東欧地域の分散型生活排水処理システムの現状と,日本の分散型生活排水処理システムの紹介が行われた.筆者は,一般社団法人浄化槽システム協会(浄化槽製造団体)として,日本の浄化槽の紹介と技術動向について発表した(図−1).ワークショップにおけるハンガリー側の発表と現地視察結果6)から,ハンガリーにおける汚水処理施設の普及に関する情報は,以下のとおりであった.
@ 浄化槽マーケットに相当する下水道処理未普及地域の人口規模は,約150〜250万人と推定された.
A 政府は10,000人以下の農村地域における排水処理事業に対して,EUの支援を受けながら政府の予算を確保し,2,000人以下の地域では分散処理による整備を検討していた.
B 個別処理施設の排水基準は,表流水への放流と地下浸透で基準値が異なる.(表流水への排水基準を表−2に,地下水への排水基準地下水への排水基準を表−3に示す.)
C ばっ気を行う個別排水処理施設は既に流通しており,ハンガリー製,ドイツ製,チェコ製が設置されていた.
D 視察した3件の個別排水処理は全て処理水を地下に浸透させる方式であり,処理水の状況から,厳しい排水基準を設定している地域においては,水質確保が困難と推測された.
  ワークショップでは,ハンガリー側から日本の浄化槽によるモデル事業実施の要望があり,浄化槽に対する関心の高さが伺えた.

図−1 ワークショップの様子

表−2 個別処理施設から表流水への排水基準


表−3 個別処理施設から地下水への排水基準
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3.ハンガリーにおけるハウステックの取組み

3.1 環境省推進事業への参画
  日本国政府は,我が国の優れたインフラ関連産業の普及を促進するため,民間による海外展開を積極的に支援している.この一環として環境省では,具体的な海外展開を計画している事業を対象に,「我が国循環産業海外展開事業化促進業務」として助成事業を行っている7).当社は,関連会社である日化メンテナンス株式会社と共同で,平成29年度の当該業務に,「ハンガリー国におけるし尿を含む生活排水の分散処理推進化事業」と題した実現可能性調査を申請し,採択された.
  ハンガリーは中央ヨーロッパに位置する内陸国で,首都はブダペスト,国土は93,030km2と日本の約4分の1,人口は約980万人である.経済指標は一人当りのGDPが2016年で12,778米ドル(日本は38,882米ドル),対日輸入は輸入全体の1.5%,対日輸出は全体の0.8%となっている.自然・名所旧跡では,中欧で最大のバラトン湖があり,ドイツやオーストリアなど諸外国からのレジャー客も訪れる保養地となっている.更には,ドナウ河が貫通する首都ブダペストの美しさは,「ドナウの真珠」とも謳われ,ブダ王宮地区,国会議事堂を含むドナウ河両岸の景観は,ユネスコの世界遺産に数えられている8)

3.2 浄化槽事業における実現可能性調査の概要
  採択された事業は,ハンガリーの汚水処理未整備地域に日本製浄化槽を設置して,工事,メンテナンス等の現地インフラを確認するとともに,EU域内での事業化(海外展開)の実現性を調査するものである.環境省の「平成29年度我が国循環産業海外展開事業化促進事業募集要領」では,@海外展開計画案の策定,A対象地域における現状調査,B廃棄物の組成,性状等調査,C現地政府・企業等との連携構築,D現地関係者合同ワークショップの開催,E実現可能性の評価,F海外展開計画案の見直し,G報告書及び概要資料の作成,を委託内容としている.Dのワークショップは,現地での海外展開の枠組みを構築していくため,海外展開事業を計画している事業者等の日本側関係者と現地の行政当局,関係団体,パートナー企業等の関係者との間で,事業化に向けた協力等についての情報共有・意見交換を行うものとされ,2018年1月にブダペストでの開催を計画している.

3.3 モデル事業による検証
(1) 浄化槽の性能確認
    本モデル事業に用いる浄化槽は,日本で許認可を取得した製品をベースに,EUの地域基準であるEN12566-3に基づく性能評価試験によりCEマーキングを取得した機種とし,浄化槽の現地適用化を図ることにした.
 
※CEマーキングは,EUで販売される指定の製品がEUの基準に適合していることを表示するマークであり,CEマーキングによってその製品が分野別のEU指令や規則に定められる必須要求事項(Essential Requirements)に適合したことを示すものである.「CE」はフランス語の「Conformité Européenne」の略9)
    一方,浄化槽の使用条件は同じEU域内であっても排水性状や汚水量,自然環境等が異なる可能性があるため,EN12566-3の試験条件(使用条件)とハンガリーでの使用条件の相違,および表−2,表−3に示す排水基準への適用を現地適用品にて確認する.
(2) 現地インフラの確認
    前述したとおり,CEマーキング品にて実証実験を行うことから,本モデル事業では,現地業者の技術対応力の確認が検証の主流となる.浄化槽を適正に普及させるためのインフラは,@浄化槽の施工,維持管理等を適正に実施するための規定の整備,A浄化槽の施工と維持管理体制の存在が前提となる.
  日本では,浄化槽法により浄化槽の機能を適正に維持することを目的に,保守点検と清掃を対象に技術基準や実施頻度を制定し,その運用を義務化しているが,ハンガリーでは同様の規程が確認できないことから,CEマーキング取得時に定めた施工要領書,維持管理要領書,使用者に対する注意事項などを関係者に定着させる必要がある.(図−2は浄化槽設置時に現地業者と使用者向けに実施した浄化槽勉強会の様子).
  日本の浄化槽の海外展開が進まない理由として,水処理コストが高い,評価方法が異なるため公平な市場を確保できていない10)こと等があげられている.これらの課題は,現地インフラの構築に密接な関係があると考えられることから,現地状況を把握しながら対処していく予定である.
図−2 浄化槽勉強会の様子
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4.浄化槽の海外展開における展望
 
  浄化槽は,そのほとんどが日本国内で生産,設置されていることから,世界的にみると浄化槽の知名度はセプティックタンクに比べ低い.しかしながら,SDGsに掲げられた世界規模による未処理排水の割合半減化に,日本発の技術である浄化槽が寄与することができれば,浄化槽の知名度も向上し,浄化槽の需要が拡大すると考えられる.当社は日化メンテナンス株式会社と連携し,環境省から採択された「ハンガリー国におけるし尿を含む生活排水の分散処理推進化事業」を通じ,SDGsに寄与していきたいと考えている.
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参考文献

1) Century Technology Innovations,JOUKASOU(浄化槽) wastewater treatment services in small settlements, in Central-Eastern Europe Technology Transfer Concept Proposal,(2016).
2) 環境省廃棄物対策課浄化槽推進室,財団法人日本環境整備教育センター,平成21年度し尿処理システム国際普及推進業務報告書,p2-3,(2010).
3) 環境省廃棄物対策課浄化槽推進室,公益財団法人日本環境整備教育センター,平成24年度し尿処理システム国際普及推進業務報告書,pp2-6-2-7,(2013).
4) iFAA,LEGUIDEDEL’ASSAINISSEMENTNONCOLLECTIF2015-2016,p6.
5) 国際連合広報センター,持続可能な開発目標(SDGs)とは.URL. http://www.unic.or.jp/
activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
(2016年2月6日時点).
6) (公財)地球環境戦略研究機関,浄化槽の欧州展開に関する現地調査報告会資料,2016年8月1日,(2016).
7) 環境省,報道発表資料,http://www.env.go.jp/press/103933.html,(2017年5月30日時点).
8) 在ハンガリー日本国大使館,ハンガリー概況平成29年8月,pp.3-21,(2017).
9) JETRO 日本貿易振興機構,CEマーキングの概要,https://www.jetro.go.jp/world/qa/04S-040011.html,(2017年12月30日時点).
10) 古市昌浩,浄化槽の海外展開における技術的課題と展望,月刊浄化槽2017年1月号,No.489,p29.
(株式会社ハウステック 住機環境事業部)
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