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排水処理槽に流入する油分について
松田 さおり (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2017年11月号)
1.はじめに
2.ノルマルヘキサン抽出物質について
3.排水基準と流入水質
4.油脂分が排水処理槽に与える影響
5.油の性状
6.油分の具体的な処理方法
7.おわりに
8.参考資料

1.はじめに

  油汚染は魚介類の死滅や油膜・油臭の原因であり、負荷が極めて高く、後段の排水処理槽の機能を阻害したりします。
  この汚染防止を目的として、ノルマルヘキサン抽出物質(n-Hex)が用いられています。ノルマルヘキサン抽出物質は油汚染による水質汚濁の指標として、水質汚濁防止法の生活環境項目のひとつとして規制されるようになりました。
  平成27年度の水質汚濁物質排出量総合調査の代表特定施設別のノルマルヘキサン抽出物質(動植物油脂類)濃度の、平均値は食料品の製造業、パン・菓子の製造業、洗濯業等にて若干高い数値を示しています。
  これまでもJSAだよりでは、油分処理について掲載されていますが、今回は弊社が油水分離処理について検討・設計する際の知見とともに、一般的な油分の処理方法を紹介します。

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2.ノルマルヘキサン抽出物質について
 
 一般的に油分の指標となるノルマルヘキサン抽出物質ですが、あるひとつの物質を定量しているのではありません。ヘキサンという有機溶媒に抽出される物質のことで、油分=ヘキサン抽出物質ではなく、抽出されるのは、主に揮発しにくい鉱物油、動植物油脂類等の油状物質ですが、その他に、炭化水素、炭化水素誘導体、グリース油状物質等の比較的揮発しにくい物質や、石鹸等もヘキサンで抽出されるため、これらの物質もノルマルヘキサン抽出物質に含まれます。
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3.排水基準と流入水質

  放流水質基準として、水質汚濁防止法の生活環境項目の排水基準(一律排水基準)のひとつであるノルマルヘキサン抽出物質含有量を、表-1に示します。

表-1 放流水質
項 目 n-Hex(mg/L)
鉱物油 5
動植物油 30

  ノルマルヘキサン抽出物質の排水基準値は、鉱物油と動植物油脂類の二つに分類されています。
  どちらの基準が適用されるのかについては、事業場の種類は取り扱っている油の種類によって異なってきます。
  次に、浄化槽への一般的な流入水質(性能評価基準)を表-2に示します。

表-2 流入水質
項 目 n-Hex(mg/L)
標準値 25

  浄化槽の性能を評価する浄化槽試験で使用する原水のノルマルヘキサン抽出物質の濃度は、この基準をもとにしています。
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4.油脂分が排水処理槽に与える影響
 
  施設から排出される油分は、配管に付着し管内を閉塞など、設備のトラブルの元となり、排水処理槽の放流水質を確保することを難しくします。
  汚濁負荷量の指標として一般的にBODが用いられますが、ノルマルヘキサン抽出物質が排水処理槽に流入し、微生物活動で有機分解を行う場合、BODに換算すると流入量の2〜3倍程度になるといわれています。
  排水処理槽に流入した油脂分は、槽内で滞留している間に分解されるためで、BOD5の段階では油脂分は検出されず、10日、20日と日にちが経ち、油脂分が分解された段階で検出されます。
  このようなことから、排水処理槽に流入後の油分は、流入後、槽内でBOD負荷量を増やし、排水処理槽の機能悪化を引き起こします。

図-1  過負荷状態1

図-2  過負荷状態2

  図-1、図-2はどちらも過負荷状態のばっ気槽検鏡写真です。
  図-1は立上げ途中の一時的な過負荷により発生した糸状菌と汚泥、図-2は過負荷により、粘性物質、糸状菌が発生した状態です。
  このように負荷の上がった排水処理槽内では、微生物量に対し流入負荷量が過剰となるため、酸素不足がおきたり、油脂分により炭素源だけが増えるために窒素源等栄養不足が起こったりするため、良好な生物処理が行えません。そうなると糸状菌の発生等によるバルキング、SSの分離不良等による処理水質の悪化が起こります。
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5.油の性状

  油の除去方法は油分がどのような状態で存在しているかで処理方式が変わるため、十分調査・確認しなければなりません。
  油類含有排水は性状について、分類すると次のようになります。
@ 揮発性の油
  沸点が低く、昇温等ですぐにガスとなってしまう油。
A 遊離状態の油
  水やSS等と結合せず、油担体で存在する油。
B 乳濁状態の油
  洗剤や攪拌等により、油と水が微粒子となって分散した状態の油。
C 固形の油脂
  牛脂等、動物性油脂のように、常温では固形で存在する油、グリースなど。

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6.油分の具体的な処理方法
 
  油分の一般的な処理方法としては、自然浮上分離、浮上分離法、凝集沈殿法、吸着法、生物分解などの処理方法があります。
  主な装置と特長は以下のようになります。

@ 自然浮上分離法 [グリストラップなど]
    前処理的な方法として、遊離状態の油分の処理に用いられます。
  水と油の比重差によって分離を行う方法なので、水と油の比重差が大きいほど分離がしやすくなります。
  油分が乳濁状態の場合、自然では分離しないため、処理を行う前にエマルジョンの破壊操作が必要になります。
  油脂分離槽で除去し、貯留する油分は定期的な清掃を行わないと、後段に流入してしまうため、処理槽は分離した油脂をどれだけ貯留するかを含めて検討する必要があります。
A 浮上分離法 [加圧浮上装置など]
    浮上分離法は、乳濁状態の油分を含む排水の処理に適しており、油の状態に関係なく処理が可能です。
  加圧浮上装置の場合、凝集剤添加型と活性汚泥吸着型があり、後者の場合、後段の排水処理槽で発生する余剰汚泥を用いることにより汚泥発生量が抑えられるメリットがあります。
B 吸着法 [マット吸着、活性炭吸着など]
    油分を吸着し飽和吸着に達した吸着材は交換、または再生処理を行う必要があります。
  マット吸着剤は浮上槽に浮かべたり、配管途中に設置したり使用方法はさまざまです。
  多量の油脂を分離したい場合はランニングコストが上がるため、低濃度排水や油処理の最終的な仕上げ、予防策に向いています。
C 生物処理法 [油分解菌、分解剤など]
    生物処理法は、油分解菌を添加することにより油分処理に効果的な微生物を増加させ処理を行ったり、分解剤を添加することにより、油分を微生物に食べやすい形にし、効率的に生物処理を行う方式です。
  分解菌によっては予め微生物を起こしておく等の前処理が必要です。
D 凝集沈殿法
    多量の浮遊物質と共存する乳濁状態の油に適しています。ただし凝集剤を添加することで、汚泥発生量が多くなります。また除去した油脂を含む凝集物を分離、処理する必要があります。

  以上のようになりますが、処理を計画する際は、油の性状により、総合的な排水処理計画の中で、処理対象油分の性状、濃度等により、適当な処理方法を選定する必要があります。
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7.おわりに

  浄化槽に流入する主な油脂分としては、食品加工、給食、厨房、コンビニエンスストア等から排出される動植物性油脂が多いですが、その他にも洗車場での鉱油、洗濯業から排出される汚れの油脂や界面活性剤等の油脂、パッカー車洗浄排水等の混合油など様々です。  
  油脂類が多く流入すると考えられる用途では、予め原水の性状、流入水量、濃度を調査・設定し、適切な処理装置を選ぶことで、後段に設置する浄化槽や排水処理槽が本来の処理性能を十分に発揮することが可能となります。ぜひ現場の使用状況に応じた前処理の選定、施工をお願いいたします。
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8.参考資料

環境省 水・大気環境局水環境課、平成27年度水質汚濁物質排出量総合調査(調査結果概要)
一般財団法人日本建築センター、浄化槽の性能評価方法(追記・解説版)
建設省都市局下水道部監修、事業場排水指導指針1993年版
(財)日本環境整備教育センター編集・発行、浄化槽用語事典
(大栄産業株式会社 企画開発室)
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