HOME コンプライアンス サイトマップ
プロフィール 入会案内 会員専用ページ
浄化槽とは 浄化槽普及促進ハンドブック(平成28年度版) 行政関連 広報データ リンク集
HOME > 浄化槽とは > 技術データ > JSAだより >  非線形解析概要〜浄化槽模擬モデルを使用した線形・非線形解析比較〜
しくみ
浄化槽のしくみ
最近の浄化槽の技術動向
技術データ
Q&A
JSAだより
特 集
講 座
報 告
過去掲載目次一覧
非線形解析概要〜浄化槽模擬モデルを使用した線形・非線形解析比較〜
堀川 翔平 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2017年7月号)
1.序論
2.解析プロセス概要
3.線形解析と非線形解析
4.結論

1.序論

  近年、高性能PCの低価格に伴い、高精度で操作が簡便な解析ソフトが多く利用されている。浄化槽開発に於いても様々な解析が行われており、本体・部品の強度を解析する構造解析や槽内水流を確認する流体解析、またそれらを組み合わせた連成解析などがその一例である。このように「ものづくり」においてCAE(Computer Aided Engineering、計算機支援工学)は重要な役割を果たしており、CAE技術力の向上、人材育成が各業界で求められている。
  コンセプト段階や設計段階、強度試験の準備段階等、様々な場面でCAEが利用されるが、最大のメリットは“コスト(費用、時間)削減”である。従来、設計→試作→実験というサイクルを繰り返し、実測データを蓄積することで理想の製品へと近づけていたが、1基の家庭用浄化槽試作をとっても、数万円から数十万円の費用が掛かり、いざ強度試験(図1-1)を実施するにしても準備から実行まで2週間から1か月程度費やすことになる。
図1-1 強度試験風景

  一方、CAEを利用すれば、構想段階で出てくる様々な提案(リブ位置や板厚の設定等)をコンピューター上のシミュレーションで確認することができ、実機による強度試験も必要最低限に留まらせることが可能となる。しかし、“解析コスト”という側からみれば、一般的にはコストと解析精度は比例の関係にあり、解析に時間を費やせば費やす程、精度の高い結果が得られることになる。そのため、画一的に解析を実行するのではなく、解析モデル毎にどのように解析を進めていくかという検討が必要である。
  上述の通り、浄化槽開発においてもCAEは密な関係である。そこで本稿では、浄化槽開発でも多く利用する静的構造解析について、解析プロセスの概要及び線形解析・非線形解析の概要について記述する。

ページトップへ
2.解析プロセス概要
 
  構造解析では主にFEM(Finite Element Method、有限要素法)という解析手法が使われており、解析プロセスとして次の4つが挙げられる。
 ・モデル化
 ・メッシング
 ・境界条件の設定
 ・解析結果の評価
  モデル化とは3DCAD等を使って解析対象をモデル化することである。解析コストを考えた時、実物を忠実にモデル化する必要はなく、逆に微小なRやリブ、穴を設けた場合、その箇所で解が発散する場合もある。最近の解析ソフトではCAD上の微小空間を無視する機能が備わっている場合もあるが、解析の結果を予想しながらモデル化を進めていく必要がある。
  FEMでは解析モデルを微小要素の集合体(メッシュ)として形状を表現するが、これをメッシング(図2-1)と呼ぶ。この作業は解析結果の精度に大きく影響し、メッシュが細かくなるほど精度が高くなっていくことがほとんどである。しかし、メッシュを細かくするほど計算時間が増えることになるため、応力勾配がきつくなるところだけ細かくする等の工夫が必要となる。

図2-1 メッシング

  次のプロセスは境界条件の設定である。これは、試験や実製品が置かれる“環境”を数値的に表現するものであるが、境界条件には大きく分けて、“荷重条件”と“拘束条件”とに分けられる。荷重条件とは、解析モデルに働く力のことで、具体的には仕切板にかかる静水圧や本体槽に作用する土圧等がこれにあたる。一方拘束条件とは、モデルの位置を決定するもので、底版コンクリートとの接地や浮上防止用金具による固定等はここで表現される。
  上述の設定をし、解析が完了すれば種々の結果が得られる。例えば主ひずみや主応力、ミーゼス相当応力等がコンター図で示され、また変形量も等倍だけでなく数倍という“極端”な形での出力も可能である。
ページトップへ
3.線形解析と非線形解析

3.1 概要
  線形解析である時、ある物体の支配方程式はフックの法則に従い線形方程式となる。即ち、剛性は物質の初期状態にのみで決定される不変の値であり、計算も1回の試行で終了する。一方、非線形解析では変形による剛性変化を考慮するため、後述の「ニュートン・ラプソン法」のようなアルゴリズムで反復計算を実行し、最終的な解を近似する。
  線形解析は、解析時間が短いというメリットはあるが解析の信頼性は低く、製品のサイズに対して変形量が微小である場合等にのみしか適用できない。一方、非線形解析は様々な事象を高精度で近似することが可能で、またPC及び解析ソフトの高性能化に伴い非線形解析であっても解析時間が大幅に短縮された。そのため浄化槽開発含め、多くのモデルが非線形解析で計算されており、線形解析は解析の方向性を決定する“前準備”として利用される場合が多い。
  事象が非線形問題となることについては大きく分けて下記の3つに起因する。
 ・幾何学的非線形(変形による剛性変化)
 ・材料非線形(ヤング率が非線形となる材料)
 ・要素非線形(事後接触等による剛性変化)
  FRPやアセンブリモデルを扱う浄化槽開発では3つの要因を考慮して解析を進める必要がある。

3.2 ニュートン・ラプソン法
 非線形問題を解決する方法の一つとして、「ニュートン・ラプソン法」が挙げられる。以下にアルゴリズムの概要を示す。
 ここに設定荷重値をとしその時の変位を求める場合を考える。仮想変位値をと置いたとき、ここからだけ離れた関数値はまわりのテイラー展開により次式で表すことができる。(高次項は無視する。)

左項は設定荷重値であり、これより増分は以下となる。

したがって近似解は、

となる。

 この繰り返し計算をニュートン・ラプソン法といい、解析ソフトではここで得られた

図3-1 ニュートン・ラプソン法

の関数値と設定荷重値の差がユーザー定義の許容値εを下回れば収束したものとみなし、上回る場合は上記と同様の操作を反復し、許容値を目指していく。
 なお、自然数を と置けば、上式は以下のように表すことができる。

ここで、真の変位値と近似解との差は、

となる。またこの式に、

を代入すれば、

となる。即ち、

となる。これよりニュートン・ラプソン法は2次収束であり、収束が極めて早いことが分かる。

3.3 解析時間比較
  非線形解析では3.2節で記したような反復計算を実行し、最終的な解を算出する。言い換えれば1つのモデルに対して局所的な線形解析を何度も繰り返し行うことであり、その分、解析時間を必要とする(図3-2)。

図3-2 反復計算による解の収束

  そこで本節では、家庭用浄化槽を模したモデルで実際に線形解析と非線形解析を実施し、解析時間と解析結果の比較を行う。なお解析にはANSYSRを用いる。
  解析モデル(図3-3)は家庭用浄化槽の5人槽型を模したものであり、サイズはL 1700×W 970×H 1560 (mm)、内部構成として仕切板を2枚用意した。なお、左右対称のモデルは解析時間の短縮を図りハーフモデルにすることが多く、本解析でもそれに倣いハーフモデルとした。メッシュサイズは10 (mm)に設定し、その結果、要素数は323121(個)となった。“荷重条件”には、浄化槽内に水張りした場合を想定し、底面からの自由水面高さを1300 (mm)として静水圧を設定した。また“拘束条件”には底部の固定と、対称面に対称条件(摩擦なし支持)を設定した。

図3-3 解析モデル(ハーフモデル)

  下に線形解析と非線形解析の解析時間及び解析結果を示す。これより、非線形解析では線形解析に比べて約19倍の解析時間を要することが分かった。一方、最終的な変形量は1(mm)の差異が生じ、非線形解析の最大変形量は線形解析の74(%)程度小さな数値となった。ここでは実現象との整合性についてまでは言及しないが、一般的には非線形解析の方が高精度である場合が多い。
  上述の通り、線形解析と非線形解析の間には解析時間及び解析結果に大きな差がある為、解析納期が決められている時、解析時間に対する解析結果を最適化していく必要が有る。例えば、要素数を減らすことは解析時間を短縮することに繋がるが、本解析に於いても要素サイズを15(mm)に上げ、要素数を86240(個)減らしたところ解析結果は同様の結果を示した一方で解析時間を357(sec)短縮することができた。

表3-1 線形・非線形解析に於ける解析時間及び解析結果
解析種類 要素サイズ
(mm)
要素数
(個)
解析時間
(sec)
最大変形量
(mm)
線形解析 10 323121 159 4.3
非線形解析 10 323121 3013 3.2
非線形解析 15 236881 2656 3.2

図3-4 変形量解析結果(左:線形解析、右:非線形解析)
ページトップへ
4.結論
 
  CAE(Computer Aided Engineering)やIoT(Internet of Things)、BIM(Building Information Modeling)といった言葉が普及しているように、様々な業界でPCやインターネットとの関係が深くなり、またそれらを最大限に活用する力が求められている。構造解析をはじめとした計算力学分野に於いても、簡便な解析ソフトが広く普及している一方で、結果に対してブラックボックス化しているケースは少なくない。そのため、解析ソフトの利用に当たって、解析専任者は即刻算出される結果に対して吟味する必要があり、その為の基礎知識や理論を常に会得していかなければならない。また、製品開発に於いて本稿3章で示した解析時間は重要な要素であり、費用(解析時間)対効果(解析精度)を最大化することを考える必要がある。
  CAEは他分野と同様、一朝一夕で身に付く技術ではなく、様々なケースでの解析経験に裏打ちされるものである。メーカーとして、少しでもCAE技術力を向上させ、浄化槽の高品質化に寄与したいと考えている。
(ニッコー(株))
ページトップへ
前ページへ戻る
| 浄化槽とは | 浄化槽普及促進ハンドブック(平成28年度版) | 行政関連 | 広報データ |
| プロフィール | 会員専用ページ | リンク集 | コンプライアンス | サイトマップ | HOME |
一般社団法人 浄化槽システム協会
〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-32 芝大門ビル5階 TEL:03-5777-3611 FAX:03-5777-3613