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担体利用の高負荷生物脱窒素法「バイオドリスター」
田中 理 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2016年9月号)
  はじめに
1.高負荷生物脱窒素法「バイオドリスター」
2.経済性評価
3.納入実施例
  おわりに

はじめに

  水源地域や閉鎖性水域では、窒素およびリンによる富栄養化が深刻となり、水環境の保全対策が喫緊の課題となって久しい。しかし、既存の排水処理施設(浄化槽含む)には脱窒素・脱リンなどの水処理技術を付帯していない設備が多く存在し、高度処理を備えた設備に更新するには、建設費、占有面積および工期等の課題が生じる。そこで、既存設備に付帯するだけの、コンパクトかつ設備ランニングコストの負担を軽減した高度処理設備の開発が切望されている。
 排水は産業系と生活系とに別れ、閉鎖性水域では窒素およびリン等の総量規制が両者とも定められている。例えば、金属加工工場では、重金属類を主目的とした物理化学的処理設備が導入されているが、製造工程に硝酸・亜硝酸系薬剤を使用するため、窒素除去が十分でない場合がある。また、平成28年7月1日より、電気めっき業は水質汚濁防止法におけるアンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物に係る暫定排水基準(300mg/L)を一般排水基準(100mg/L)に移行する1)等、排出水をさらに良質なものに改善することが求められている。
  本稿では、前述の対策技術となる流動担体を用いた高負荷生物脱窒素法「バイオドリスター」について紹介したい。
  前澤化成の高負荷生物脱窒素法「バイオドリスター」は本年、一般社団法人日本産業機械工業会主催の「第42回優秀環境装置表彰事業」において、日本産業機械工業会会長賞を受賞した装置である。

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1.高負荷生物脱窒素法「バイオドリスター」
 
  生物脱窒素装置として開発したバイオドリスターは、親水性や微生物との親和性を追求した特殊プラスチック連続発泡担体を脱窒素リアクターに充填し、脱窒素細菌を高密度に生息させた担体を流動撹拌することで窒素除去効率が高められることを第一の特徴としている。
  担体内に窒素ガスが存在して脱気不良になると、担体が浮上して流動障害が起こり、処理性能は著しく低下する。そこで、担体浮上を防止し、理想的な担体の流動性を追求したリアクター構造が第二の特徴となっている。
  対象排水中の全窒素濃度によって、担体の充填率や全窒素許容負荷の設定を変えることで、性能と同時に、経済性の追求も行っている。本装置は、新規設備、既存の付加設備として活用でき、原水中の残存窒素形態によっては脱窒素処理前後の硝化や再ばっ気を行うことで、さまざまな排水種に対応できる。

図1. バイオドリスター処理フロー

  バイオドリスターは、硝化槽、脱窒素リアクターおよび再ばっ気槽とも生物膜法の一つである担体流動法を用いた処理フロー(図1)を標準とする。各槽に使用される担体は異なるが、どれも担体内に自然発生する微生物群で処理を行う結合固定化法を選択している2)。地域によっては水温制御を行う必要があるが、微生物を高濃度に保持でき、除去対象物質の負荷に応じて担体充填率を決定して処理を行う。

1-1 使用担体
  開発段階から現在までの脱窒素リアクターに使用した担体種を表1の比較表に示す。初期段階は、脱窒素細菌を安定的に保持できるよう、担体表面をプラス電荷にしたセルロース担体(5o立方体)を用いて、浄化槽処理水を高度処理して全窒素を20 mg/L以下にすることを目的に開発を進めた。しかし、処理性能は得られても、セルロース担体の強度が弱く、消耗が激しいために定期補充が必要な状況となり、担体の強度向上(耐磨耗性、耐薬品特性)が早急な課題となった。
  そこで、特殊プラスチック連続発泡担体に、親水性や微生物に対する親和性を持たせ、担体サイズを変えて試験を繰り返した結果、強度の高い特殊PE担体(10o立方体)を脱窒素リアクターに充填した、簡易撹拌方法の「バイオドリスター」を製品化した。本法は、霞ヶ浦水域の学校を中心とした浄化槽処理水の高度処理設備として稼働している。
  また、金属加工の工場において、亜硝酸・硝酸含有排水の窒素処理というニーズに対し、排水と担体との接触効率を高めたリアクター内に特殊PU担体(5o立方体)を充填することで、高い窒素負荷(1-3kg/m3・日)条件下でも処理性能を満たしている。

表1 脱窒素リアクターの担体(当社比較例)    (PU:ポリウレタン、PE:ポリエチレン)

写真1 特殊PU担体(MSPUシリーズ)

  当社の特殊PU担体は、製造ライン洗浄剤等の薬品耐性を重要視し、リアクター内部の凹凸との流動摩擦に耐えられる物理的強度を確保している。
  馴養・立上げは、特殊菌を担体に含ませるのではなく、既設汚泥、類似した種汚泥や専用の微生物製剤を利用し、現場に応じた生態系を早期に作り出して処理水質を満足させる。


1-2 硝化槽
  排水中のアンモニア性窒素がある場合に付帯され、好気条件でアンモニア性窒素を硝酸性窒素や亜硝酸性窒素に酸化する反応槽である。特殊PU担体(10o立方体)を使用し、従来の活性汚泥法を用いた硝化槽の1/2‐1/3の容量で硝化を促進させる。

1-3 脱窒素リアクター
  脱窒素細菌は有機物分解を主とする従属栄養細菌よりも増殖速度が遅く、滞留時間を確保しなければならないため、従来法を用いた場合は脱窒槽が大きくなる傾向にある。
  特殊PE発泡体(10o立方体)あるいは特殊PU担体(5mm立方体)を充填させた脱窒素リアクターを実用化している。

 2NO2-+2H++CH3OH→CO2+3H2O+N2
 6NO3-+6H++5CH3OH→5CO2+13H2O +3 N2

  前式のとおり、生物学的脱窒反応が進むと窒素ガスが発生する。担体内に窒素ガスが存在して脱気不良になると、担体が浮上して流動障害が起こり処理機能は著しく低下する。そのため、担体内部に脱窒素細菌を保持し、担体が浮上しないよう強制的に槽の下部へ流動させるリアクター構造(図2)にすることが重要である。(関連特許取得済)
  バイオドリスターは、脱窒素リアクター内部構造に独自性があるため高速処理を可能とし、NO3‐N容積負荷1‐3kg/m3・日の高負荷条件で窒素除去率80%以上を達成することができる。

図2. 脱窒素リアクター構造

  また、水素供与体として亜硝酸型では、CH3OH/2N=32/28=1.14倍、硝酸型では5CH3OH/6N=160/84=1.9倍のメタノールが必要となる。実際は、菌体合成に利用されるメタノール量も加えて、亜硝酸型で窒素に対して1.5倍、硝酸型で2.5倍量程度となる3)

1-4 再ばっ気槽
  排水負荷変動の影響で脱窒素後に消費されなかったメタノール(BOD源) を処理対象にした再ばっ気槽を脱窒素リアクターの後に設置する。本槽にはBOD処理に適した特殊PU担体(10o立方体)などを投入し、設置スペースのコンパクト化を図っている。
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2.経済性評価

2-1建設費およびランニングコスト
  バイオドリスターは、既存排水設備を高度処理型に変更させることが可能で、排水量、窒素濃度、設置場所に応じて導入できる。また、全窒素負荷を高くすることが可能となるため、設備が活性汚泥法(従来法)の1/3‐1/5程度に省スペース化が可能となる。さらに、各槽のコンパクト化を図り、撹拌動力を最低限にしている。従来法(活性汚泥)と本法を比較すると表2に示すとおり、全体として75%程度にコスト低減可能と考えている。

表2 従来法(活性汚泥)との経済性比較表(当社試算)

2-2維持管理
  小中学校および事業場とも、長期休暇や水温が低下する冬期対策のため、状況に応じて、微生物製剤を使用して活性化を図る場合がある。また、水素供与体として使用するメタノール等の栄養が不足しないよう注意を払うことが必要になるが、手がかからず、安定した処理性能を維持できているのが現状である。
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3.納入実施例

3-1茨城県小中学校 生活系排水処理施設
(14-28 m3/日処理 既存長時間ばっ気設備を有効利用 高度処理新設)
  表3のとおり、浄化槽処理水中の40mg/L前後の硝酸および亜硝酸性窒素をバイオドリスターによる高度処理を行い、処理水設計値(15 mg/L以下)を満足した。同様に全リンについても、設計値(2 mg/L以下)を満足した。メタノールやPACなどの処理用薬剤の使用量もメンテナンスサポートにより縮減し、高度処理に伴う発生汚泥量を抑制している。

表3 浄化槽処理水の高度化 性能確認



写真2 茨城県T中学校 バイオドリスター(地下式,簡易撹拌方式)

3-2金属部品製造排水処理施設(高度処理新設)
(60m3/日処理,BOD30mg/L、T-N(硝酸および亜硝酸性窒素)100mg/L、T-P2mg/L)
  本施設では、霞ヶ浦水質保全条例の施行に伴い、従来の重金属類の処理だけでなく、窒素、リンの処理も必要となった。とくに、窒素濃度が規制値を逸脱する懸念があったため、既存の凝集沈殿処理施設の後段にバイオドリスターを増設することで、排水中の硝酸性および亜硝酸性窒素(T-N100mg/L程度)を処理し、処理水設計値(T-N20mg/L以下)を満足した。
  また、10℃程度の低水温条件であっても窒素除去率80%以上を達成することができた。


写真3. 金属加工工場 バイオドリスター(地上式)
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おわりに

  人々の暮らしに不可欠となる水は安全,安心でなければならず、公共用水域へ放流する事業場等からの排出水は、水源を良質に継続維持できるように、より厳格な水質管理が求められる。また、ハード・ソフトを駆使して排水設備の省エネルギー効果を図ると同時に、産業廃棄物となる余剰汚泥の大幅削減を実現できる高負荷・高度処理技術が国内外を問わず重要な技術となる。
  本報の高負荷生物脱窒素法「バイオドリスター」やMBBRおよびMBRを駆使し、省エネルギー効果や良質な再利用水の安定確保などの技術革新に努め、これからも循環型社会の形成に寄与していきたい。

参考文献
1) 環境省ホームページ(http://www.env.go.jp/).
2) (社)日本下水道協会:下水道施設計画・設計指針と解説2009年版(後編),p45−46(2009)
3) 吉村二三隆,北川幹夫:わかりやすい水処理設計,p92,工業調査会(2003)
 
[お問合せ] 前澤化成工業株式会社 水環境部
        〒103‐0023 東京都中央区日本橋本町2-7-1
        TEL(03)5962‐0714  FAX(03)5695‐0166 
        URL http://www.maezawa-k.co.jp/
(前澤化成工業株式会社 水環境部 部長)
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