HOME コンプライアンス サイトマップ
プロフィール 入会案内 会員専用ページ
浄化槽とは 浄化槽普及促進ハンドブック(平成27年度版) 行政関連 広報データ リンク集
HOME > 浄化槽とは > 技術データ > JSAだより >  し尿処理汚泥からのリン回収
しくみ
浄化槽のしくみ
最近の浄化槽の技術動向
技術データ
Q&A
JSAだより
特 集
講 座
報 告
過去掲載目次一覧
し尿処理汚泥からのリン回収
大森 大輔 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2016年5月号)
1.はじめに
2.し尿処理施設におけるリン回収の取り組み
3.バクテリアリーチング技術を用いたリン回収
4.おわりに

1.はじめに

  リンは広く生物の生命維持のために必要な元素であり、特に農業には必要不可欠な資源であるが、原料となるリン鉱石は枯渇資源との側面から有効利用する事が重要とされている。しかし、我々人間の生活活動とともに排出される生ゴミや生活排水、し尿、浄化槽(下水)汚泥などの廃棄物には、多くのリンが含まれていながら捨てられているのが現状で、これら廃棄物から効果的にリンを回収して再利用することは近い将来のリン肥料の不足や価格高騰に対する有効な解決策になり得ると考えられる。浄化槽メーカーの製品開発に携わる立場でリンに関わりのある製品と言えばリン除去型の浄化槽であろう。浄化槽の視点で、リンとは水質汚濁の面から「除去する」物であり、現状はシステムの中で回収利用する段階には至っていない。しかしながらこのたび、リンをし尿処理施設の汚泥焼却灰から「回収する」視点で共同研究事業に参画する機会があったので、簡単ではあるが、取り組みの事例として紹介したい。

ページトップへ
2.し尿処理施設におけるリン回収の取り組み
 
2.1 し尿処理施設の現状

  くみ取り便所のし尿を衛生的かつ安全に処理を行う役割を担ってきたし尿処理施設は、我が国の生活環境の保全と公衆衛生の向上に寄与するとともに、排水処理技術の発展に大きな役割を果たしてきた。しかしながら、近年では浄化槽汚泥の混合割合の増加や公共下水道の普及に伴う処理負荷・処理量の減少や自治体財政の悪化を背景とした処理施設の老朽化、機能低下が著しい状況にあり、厳しい施設運営状況となっている実態がある。し尿処理施設が今後この厳しい現状に対応していくためにはし尿処理体系の広域化・集約化といった行政政策面の対応が必要と考えられる1)

2.2 汚泥再生処理センターの役割

  汚泥再生処理センターは、し尿・浄化槽汚泥・及び生ゴミ等の有機性廃棄物を併せて処理する従来のし尿処理施設の機能に、資源を回収する機能を付加した施設である。この施設の登場には、先にも述べたし尿処理施設の老朽化、浄化槽汚泥の混合割合の増加、そして廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進、つまり循環型社会への転換、などが背景にあり、し尿処理施設に替わる資源回収型施設として重要な役割を担う事が期待される。
  汚泥再生処理センターの資源化設備には、@メタン回収設備、A堆肥化設備、B乾燥設備、C炭化設備、Dリン回収設備、E助燃剤化設備、Fその他設備(溶融設備、油温減圧乾燥設備、汚泥熱分解設備等)の技術が示されており、その他新たな技術も積極的に採用されている2)
  リン回収設備については、現在、 表-1に示す施設で実稼働または稼働予定となっている。汚泥再生処理センターでは施設で受け入れるし尿等に含まれるリン濃度が下水と比較して高く、排水中からのリン回収技術を適用しやすい実情を背景に晶析脱リン法(HAP法、MAP法)によるリン回収技術が開発され、稼働実績を増やしつつある状況である3)
  環境省がまとめたリン回収に関するマニュアル4) によると、汚泥再生処理センターにおけるリン回収技術の導入検討だけに留まらず、現在稼働中のし尿処理施設へのリン回収設備の導入の可能性に関する検討もなされており、既存し尿処理施設の改修・増設による資源回収型施設への転換の指針として参考になると思われる。し尿処理施設では、汚泥を焼却処分しているところがほとんどであることから、焼却灰として高濃度に濃縮・蓄積されたリンを岐阜市の導入事例のようにアルカリで化学的に抽出回収する手法5) も有効と考えられる。

表-1 リン回収設備を導入している汚泥再生処理センター一覧
回収技術 施設名称 施設処理能力 設置状況
HAP法 秋田県仙北市汚泥再生処理センター 60kL/日  平成21年4月稼働
奈良県十津川村汚泥再生処理センター 6kL/日  平成22年4月稼働
青森県西北五環境整備事務組合
中央クリーンセンター
162kL/日  平成24年1月稼働
和歌山県串本町古座川町衛生施設
事務組合汚泥再生処理センター
45kL/日  平成26年4月稼働
高知県四万十町汚泥再生処理施設
若井グリーンセンター
44kL/日  平成26年4月稼働
愛媛県宇和島地区広域事務組合
汚泥再生処理センター
220kL/日  平成27年8月稼働
三重県熊野市汚泥再生処理センター 40kL/日  平成28年1月稼働予定
MAP法 福島県双葉地区広域市町村圏組合
汚泥再生処理センター
63kL/日  平成23年4月稼働予定
 のところ現在休止中
注:文献4) をベースに最新稼働情報を加筆
ページトップへ
3.バクテリアリーチング技術を用いたリン回収

3.1 愛媛県における取り組み

  今回、弊社地元の愛媛県立衛生環境研究所と愛媛大学にご縁があり、し尿処理場で発生するし尿処理汚泥の焼却灰からリンを回収する実用化技術の開発検討に携わる機会を得た。この実用化検討技術については平成24年に策定された愛媛県バイオマス活用推進計画6)においてバイオマス資源の利活用促進や地域活性化を目指した、重点対応施策の一つとして位置付けられている。研究開発の概要を図-1に示す。愛媛県立衛生環境研究所が保有するバクテリアリーチング技術を核に、これまで豊富なリンを含有しながら埋め立て処分されてきたし尿処理施設の汚泥焼却灰からリンを抽出し、肥料等に利用可能なリン酸カルシウムとして回収する新たな試みが、環境省の補助金を活用した産学官連携事業7) として行われた。

図-1 研究開発の概要


3.2 バクテリアリーチングによるリン回収

  バクテリアリーチング(バイオリーチング)とはバクテリアの活性を利用して金属等を溶出・回収する技術であり、近年では、廃棄物から有用金属を回収する有効な手法として技術開発8) が行われている。
  愛媛県立衛生環境研究所では、これまで製紙スラッジ等の焼却灰からバクテリアリーチングによってアルミニウム等の金属を回収する技術開発を行ってきた実績9) があり、この開発実績をベースにリンの回収へと応用されることとなった。硫黄を基質とし、好気性条件で生育する独立栄養細菌の硫黄酸化細菌をpH 1〜2の強酸性下で培養する。この酸性培養液を汚泥焼却灰と反応させることによってリンを溶出させる仕組みである。
  バクテリアリーチングは、強酸や強アルカリの化学薬品を用いなくても、穏やかに反応が進み、物理化学的手法と比較して環境負荷が小さく環境にやさしい技術であるというメリットがある。硫黄酸化細菌の「培養」と聞いて当初はその培養に係る条件がシビアで難しいのでは?といったイメージがあったが、種菌はし尿処理プラントで採取可能な活性汚泥から培養可能であり、硫黄と一般的な窒素源が主成分の無機塩類を与えながら空気を供給(ばっ気)すれば、比較的容易に増殖する事が分かってきた。培養温度が15℃を下回ると細菌の活性が落ちるため温度管理にいくらかの注意を要するものの排水処理プラントの設計知識や施設運用のスキルがあれば十分対応可能なレベルであった。実用化技術となったときに硫黄をどこから安定的に調達するのかといった課題があったが、石油精製プラントで硫黄が廃棄物として得られることが分かり、実際に培養試験を行って培養可能である事が確認出来た。焼却灰中に含まれるリンについては、(化学薬品の)硫酸で溶出させた条件と遜色なく溶出させる事が可能との結果が得られた。ただ、強酸性物質を扱う環境条件であるのでプラント資材、材料の選定や維持管理時の安全性には十分注意を払う必要がある。
  バクテリアリーチングで汚泥の焼却灰から溶出させたリンは、リンを選択的に吸着可能な吸着材で吸着回収することとした。本事業では酸性領域の吸着能力が高く、リンの吸脱着の繰り返しにも性能低下が少ないジルコニウム系の吸着材を選定した。

3.3 プラント実用化可能性の検討

図-2 バクテリアリーチングによる汚泥焼却灰からのリン回収システム

写真-1 リン回収実証ミニプラント

  2年間の基礎検討試験で得られたプラント設計に関する基本条件等の結果を踏まえ、3年目には愛媛県八幡浜市にあるし尿処理場に実スケールの1/100の実証試験プラントを設置し、実用化の可能性および実運用上の問題点等の検討を行った。(図-2、写真-1)
  担当研究機関別に基礎的な課題検討を行い、そこで集約されたデータを設計諸元として試験プラントを設計するのは、1/100スケールの小規模とはいえ少々高いハードルとの印象があったが、各工程の連携や工程間の制御対応含め変更が生じる可能性のある要素を可能な限り考慮して設計対応を行い、若干の装置上の制約が生じたものの各工程が連携した実証試験が実現できた。設計担当として掲げていた目標の無人連続自動運転は先の装置上の制約の関係もあり達成できなかったが、バクテリアリーチングによる焼却灰からのリンの溶出、吸着材によるリンの吸着、脱着、そして最終リン生成物の回収までの自動運転が実現でき、かつ最終リン生成物として写真-2に示すような純度の高いリン酸カルシウムを80%以上の高い回収率で得ることが出来た。なお、このリン酸カルシウムは肥料取締法に基づく副産リン酸肥料の基準に適合するものであった。
  さらに、処理工程から発生する廃棄物(焼却灰の溶出残渣や排水など)については、公害防止関連法令の基準を満たすものであったことから、実用(商用)プラントが十分実現可能なシステムである事が実証出来た。その一方で設備構成の効率化、処理工程で使用される薬品のリサイクル利用等の検討を含めた経費削減、処理施設の集約化等行政面の対応等々、より費用対効果の高い処理施設(リン生産設備)とするために今後取り組むべき開発の方向性が明らかとなった。

写真-2 回収されたリン酸カルシウム
ページトップへ
4.おわりに

  汚泥再生処理センターの資源化設備としてのリン回収設備は、採用実績としては少数であり、資源化設備の決定打と言える状況には至っていないと思われる。今回の事業参画で、し尿処理施設の現状やリン回収技術の実際に触れることによって、リンを「回収する」視点で今後の浄化槽開発の在り方を考えられたことは非常に有意義であった。ここで紹介した技術に留まらず、さらなる技術開発の端緒とすべく今後もリン回収のテーマに取り組みたいと考えている。
  最後に、本稿を出筆するにあたり、情報をご提供頂いた愛媛県立衛生環境研究所の中村洋祐主任技師、愛媛大学農学部の治多伸介教授に感謝申し上げる。愛媛発、バクテリアリーチングによるリン回収技術のアップグレード、そして早期の実稼働施設への導入を図るべく、今後も研究連携を継続できれば幸いである。
 
<参考文献>
1) 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課:し尿処理広域化マニュアル(2010)
2) 公益社団法人日本環境整備教育センター:浄化槽の維持管理・下巻、p365(2015)
3) 小林英正:汚泥再生処理センターにおけるリン回収、月刊浄化槽、No.448(2013)
4) 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課:し尿・浄化槽汚泥からのリン回収・利活用の手引き(2013)
5) 太田淳一:下水汚泥からのリン回収、月刊浄化槽、No.448(2013)
6) 愛媛県:愛媛県バイオマス活用推進計画(平成24年度〜33年度)(2012)
7) 中村洋祐:し尿汚泥等の焼却灰からのリン回収技術の開発研究、平成26年環境研究総合推進費補助金研究事業総合研究報告書(2014)
8) 大橋晶良:廃水からの生物学的レアメタル回収技術の開発動向、水環境学会誌、Vol.37、No.2(2014)
9) 津野田隆敏ら:バクテリアリーチングによる愛媛県の廃棄物からの金属の溶出に関する検討(第3報)、平成23年愛媛県衛環研年報、14(2011)
(株式会社ダイキアクシス 開発部)
ページトップへ
前ページへ戻る
| 浄化槽とは | 浄化槽普及促進ハンドブック(平成27年度版) | 行政関連 | 広報データ |
| プロフィール | 会員専用ページ | リンク集 | コンプライアンス | サイトマップ | HOME |
一般社団法人 浄化槽システム協会
〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-32 芝大門ビル5階 TEL:03-5777-3611 FAX:03-5777-3613