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低炭素化社会・循環型社会の構築に向けた
浄化槽の小型(小人槽)化に関する検討
中村 智明 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2015年11月号)
1.はじめに
2.背景
3.小人槽浄化槽の製品化
4.JIS規格化および性能評価、認定等における取り扱い
5.まとめ

1.はじめに

  建築物に適用される浄化槽の規模(処理対象人員)は建築用途別にJIS A 3302-2000で規定されている。建築用途が住宅の場合は延床面積で処理対象人員が算定され、130m2以下は5人(槽)、130m2を超えるものは7人(槽)となる。
  一方で、近年少子化に加え核家族化が進み、世帯人員の少ない家庭の割合が増加していることから、5人槽より小さい人槽の浄化槽が必要ではないかとの意見もある。
  小型の浄化槽を市場に導入することは、浄化槽の製造・設置工事・使用段階全てにおいて低炭素化に寄与するとともに、施主の費用負担軽減にもつながることから、小人槽の浄化槽の適用とその課題について、まずは現行の法制度などを前提とせずに、低炭素化に対する効果を中心に技術的な面から検討を行った。
  なお、本稿は環境省の調査報告書1)より当該部分について要約したものである。

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2.背景
 
1)  世帯人員数の変化
    小人槽の浄化槽を検討するには、世帯人員の変化を把握する必要がある。
  国立社会保障・人口問題研究所では、日本の世帯数の将来推計について調査を行っている。一般総世帯総数は2019年まで増加を続けた後減少に転じ、2035年には4,956万世帯と2015年に比べて335万世帯少なくなる。平均世帯人員は2035年には2.20人と2015年に比べて0.14人少なくなる(表1)。
  2035年の家族類型別割合(表2)をみると、単独世帯(使用人員1人)の割合は37.2%、夫婦のみの世帯(使用人員2人)の割合は21.2%で合計すると58.4%となる。 
  このことから、浄化槽の最小人槽は5人槽だが、全世帯数の半数近くは3人槽程度の小型浄化槽で対応できる可能性がある。

表1 一般世帯総数および平均世帯人員2)

表2 家族類型別一般世帯数および割合2)

2)  世帯人員数と給水量の関係
    小人槽の浄化槽を検討するには、世帯人員数に対する水道使用量の傾向を把握する必要がある。図1に東京都水道局で、東京都の区部と多摩地区を対象に行った平成18年度の「生活用水実態調査」から、世帯人員別の一ヵ月当たりの使用水量と一人あたりの使用水量について整理した結果を示す。
   
 
図1 世帯人員に対する水道使用量の傾向
                            ※東京都水道局ホームページデータより作成
   
    図1から世帯人員が少ないほど一人あたりの使用水量が多くなる傾向にある。これは、使用人員によらず洗濯排水量や浴槽容量が変わらない等の要因が考えられる。なお、水道使用量には散水や洗車用水が含まれるため、浄化槽への流入水量は本データより少ないと考えられる。
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3.小人槽浄化槽の製品化

  小人槽浄化槽を製品化する場合、
1)4人槽以下の浄化槽を新規に製品化する。
2)5人槽(現行の最小人槽)を転用し製品化する。
  の2つのパターンが考えられる。各々について導入効果と課題を検討した。

1)  新規製品化の検討
  <小人槽浄化槽の形状>
    浄化槽には告示型と性能評価型があり、性能評価型には汎用型と高度処理型がある。5〜10人槽では、性能評価型が全出荷基数の98.7%を占めており、その中でも高度処理型(BOD20mg/L以下、T-N20mg/L以下)が95.7%を占めている(2011年度(社)浄化槽システム協会出荷統計データより)。したがって、ここでは、性能評価型で高度処理型の浄化槽について検討する。
  表3に現在製品化されている5〜10人槽の全長、全幅、全高の平均値3)を基に、1〜4人槽の形状を推定したものを示す。
  推定値から、例えば3人槽の場合、5人槽と比べて設置面積(全幅×全長)で約80%、浄化槽の設置体積(全幅×全長×全高)で約75%と小さくなる。図2に浄化槽の平・断面図で5、7、10人槽と3人槽を比較したものを示す。
   
 
表3 小人槽浄化槽の形状(推定値)
   
 
図2 家庭槽(5・7・10人槽)と3人槽の形状比較
   

<導入効果>
    本案では、5人槽を設置した場合と比べて設置工事、製造段階、使用段階全てにおいて温室効果ガス削減効果があると考えられる。
   設置工事 : 掘削土量・施工量の削減
   製造段階 : 使用材料の削減
   使用段階 : ばっ気風量の削減
  また、設置スペースが小さいため、全国に450万基設置されている単独浄化槽の合併転換に際し優位に働く。合併転換のケースでは、使用人員に変化が無く給水量が当該人槽の処理水量以下であるか否かが事前に確認できるため、設置後のリスクが小さいと考えられる。
<課題>
処理機能
    図2に示すように、使用人員が少ないほど一人あたりの使用水量が多くなる傾向がある。浴槽水のように、まとまった排水を一度に排水した場合、浄化槽が小さくなるほど排水ピークの影響は大きくなり、槽内汚泥の流出等、水質悪化の原因となることが考えられる。小人槽浄化槽を開発する際、排水ピークを考慮した設計とする必要がある。
浄化槽の構造
    製造では、部材の組み立ての際に人が槽内に入れる大きさ、手が入る大きさとする必要がありコパクト化には限界がある。対応策として、機械化の導入を図ることでクリアできる可能性は考えられる。
  修理では、槽内に人が入って作業を行うケースがある。そのため、修理時に内部へ人が入ることを想定した開口や単位槽スペースを確保するか、カセット式のように内部部材を浄化槽外部へ取り出して補修できる構造を考慮する必要がある。
浄化槽使用人員の変更
    3人槽が設置された住宅で、売却等で家族構成が変わり使用人員が4人や5人に増えた場合、浄化槽を入れ替える必要がある。5人槽であれば、家族構成が変わっても使用人員が6人以上となるケースは少ないと考えられる。将来を見通した浄化槽の人槽選定は難しいが、課題として把握しておく必要がある。
発生汚泥の処理
    使用人員の減少と比例して、通常は汚泥発生量も少なくなる。しかし、浄化槽のコンパクト化に伴い汚泥貯留容量を小さくすると、清掃間隔は年1回と変わらない。汚泥収集車の容量は同じため、少量の汚泥を引き抜くことは効率が悪くなる。このことから、技術開発においては汚泥収集の効率を考慮した槽容量の確保と収集間隔の変更(年1回にとらわれない)も検討する必要がある。

2)  5人槽の小人槽適用の検討
2)-1 付帯設備の仕様変更案
    1)で述べた小人槽浄化槽を新規に生産する場合、新たな生産用の型を用意する必要があるが、今後浄化槽の国内市場の拡大が見込めない中、浄化槽メーカーにとって設備投資による負担は大きい。本案は、浄化槽本体は5人槽を用いるが付帯設備であるブロワや内部のろ材等の仕様を人槽に応じて小さく(または少なく)変更し、小人槽に適用する案である。
  <導入効果>
    本案では、浄化槽本体は5人槽と同じ大きさであるため設置工事における低炭素化は見込めないが、製造段階、使用段階では一定の低炭素化が見込める。
 
製造段階 :  流入負荷量の減少に伴い、接触材等の部材の必要量が減るためその分の低炭素化が見込める。
使用段階 :  流入負荷量の減少に伴い、必要酸素量が減るため、5人槽と比べて小風量のブロワで済む可能性があり、消費電力の削減による低炭素化が見込める。汚泥貯留容量に余裕があることから、清掃間隔を1年以上に延ばすことが可能となる(清掃間隔の制約を考えない場合)。
  <課題>
    使用人員が増加した場合、接触材量や空気量が不足する。ただし、担体などの追加が可能な方式であれば、あわせてブロワの交換を行うことで5人槽までの対応を行うことは可能となる。

2)-2 運転仕様変更案
  本案は5人槽の浄化槽をそのまま用いるが、ブロワに間欠ばっ気タイマ(またはインバーター)回路を組み込み、使用人員に応じてブロワの間欠運転時間を設定する案である。
  <導入効果>
    間欠ばっ気の導入は反応槽の過ばっ気状態を抑制し、消費電力を削減することにより低炭素化が見込める。浄化槽は5人槽の処理能力を有しているため、1〜5人の間で使用人員に変更があった場合でも対応が可能と考えられる。
  <課題>
    ブロワに間欠ばっ気タイマ(またはインバーター)回路を組み込む必要があるため、イニシャルコストが5人槽より増える。
  間欠ばっ気を行うことにより、散気装置によっては閉塞する可能性があることから、閉塞しにくい散気装置の導入や、定期的な引き上げ洗浄や交換を検討する必要がある。
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4.JIS規格化および性能評価、認定等における取り扱い

  ここまで、現行の法制度を前提とせずに検討を行ってきたが、実際には、小人槽浄化槽を導入するにはJIS規格の改定が必要となる。現在はJIS A 3302-2000で運用されているが、それ以前の規格では、処理対象人員(n)=5+{(A−100)/30}の算定式で求められ、5〜10人槽まで1人槽きざみとされていた。この算定式は高度成長期であるJIS A 3302-1969でも用いられていた。過去のし尿浄化槽の構造基準・同解説(昭和47年10月改訂版)には、JIS A 3302-1969の解説文として、以下のような記述がある。
4.住宅関係、特に共同住宅に関しては種類・意見の分かれることが多いと
思われるが、すべてに適合する数値は定めがたいので、一応、日本の大勢
を考え、浄化槽使用の主流と思われる家族構成に焦点を合わせて、数値を
決定している。
著しく不合理の場合は 2.の用途別処理対象人員算定基準
の項のただし書きを活用していただきたい。
※し尿浄化槽の構造基準・同解説(昭和47年10月改訂版)P.230より抜粋

  JIS A 3302-2000における改正は、住宅施設の6、8、9、10人槽を削除したものであり、それ以前の基準と処理対象人員の算定に関する基本的な考え方は変わっていない。家族構成は時代によって変化するものであるから、JISの運用基準も弾力的な見直しや付帯条項の追記により、小人槽浄化槽への適用も可能と考えられる。
  また、JIS規格改定と同時に性能評価方法や大臣認定、型式認定等における取り扱いについても検討されなければならない。特に性能評価では、試験時の水量やピーク比の設定が必要で、合わせて告示(昭和55年建設省告示第1292号)の改定についても検討を要する。
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5.まとめ

  核家族化による世帯人口の減少を踏まえ、低炭素化・省エネ化の観点から浄化槽の小人槽化について、4人槽以下の新規製品化、5人槽転用による製品化(付帯設備変更、運転方法変更)の検討を行った。
  低炭素化への寄与は製造段階、設置工事段階では新規製品化の効果が大きい。使用段階ではブロワの消費電力低減が大きく寄与するが、これは新規製品化、5人槽転用の何れにおいても、一定の削減効果を有している(表4)。
  なお、5人槽転用による小人槽化では汚泥貯留容量に余裕があるため、清掃間隔を1年以上に延ばすことで、さらに低炭素化への寄与が大きくなることから、関係法の改正も視野に入れることが望まれる。

表4 浄化槽の小人槽化による低炭素化の評価
            ◎:効果が大きい ○:効果がある △:効果が小さい −:変わらない
               ※1 内部部品のみの変更であり、削減効果は小さい。
               ※2 浄化槽本体が5人槽と変わらないため、削減効果はない。
               ※3 清掃間隔が年1回の規制がなくなる場合、削減効果が大きい。

  なお、低炭素化と同時に処理機能や維持管理への対応も重要な要素となる。低炭素化への寄与で優れている4人槽以下の新規製品化案では、排水ピークへの対応や製造・修理のし易さに対応できる製品の開発が必要である。また、浄化槽の使用人員が増加した場合、浄化槽の入れ替えが必要となる欠点がある(表5)。

表5 浄化槽の小人槽化による機能の評価
            ◎:対応可能 ○:課題はあるが対応可能 △:課題が大きい
               ※4 小人槽ほど排水ピークの影響が大きく、浄化槽開発時に留意が必要。
               ※5 製造・修理に対し小型化に限界がある。
               ※6 使用人員の増加に対する対応が困難。
               ※7 使用人員の増加に対しては担体の追加やブロワの変更が必要。

  以上から、4人槽以下の新規製品化案はみなし浄化槽の合併転換などで、現状の流入負荷が把握できる施設等、限定的な適用が望ましい。したがって、浄化槽の小人槽化の方策として、5人槽転用による製品化、特に運転方法の変更案が合理的と考えられる。
  本稿では、低炭素化を中心に技術的な面から検討を行った。また、JIS規格の改定や性能評価・認定制度等についても触れたが、実現化に向けたハードルは低くない。しかし、低炭素化に加え、人口減少への対応や使用者のメリットから、浄化槽の小人槽化は有効な方策の一つであり、継続的な検討が必要と考えられる。
 
参考文献
1) 平成26年度浄化槽の低炭素化及び海外展開に関する調査委託業務報告書,一般社団法人浄化槽システム協会
2) 「日本の世帯数の将来推計(全国推計)[H25年1月推計]」,国立社会保障・人口問題研究所
3) 平成24年度浄化槽の低炭素化に向けた調査業務報告書,社団法人浄化槽システム協会
 
((株)西原ネオ 技術統括部)
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