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担体流動システム(MBBR)の技術と
担体の高負荷生物脱窒素法への適用
田中 理 (社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2014年11月号)
はじめに
1.担体流動法(MBBR:Moving Bed Biofilm Reactor)
2.納入実施例
おわりに

はじめに

  近年、地球温暖化、水資源の枯渇等が深刻となり、低炭素社会の構築に向けた先導的低炭素技術が切望されている1)。排水設備分野でもエネルギー消費の絶対量を減らした高度・高負荷処理技術が要求されており、ハード・ソフトを駆使して設備の省エネルギー効果を図ると同時に、産業廃棄物となる余剰汚泥量の大幅削減を実現できるシステム開発が急務となる。
  排水は生活排水と産業排水とに大別され、産業排水は生活排水に比べて汚濁度合いが高く、事業場の生産量や製造物の変化に伴い負荷変動が生じる傾向にある。また、業種ごとに有機性、無機性、基質バランス(BOD:窒素:リン)等の排水特性が異なる。
  例えば、食品工場では油脂分が排水中に含有されることがあり、加圧浮上装置などの物理化学的処理設備で油脂分を前処理した後、活性汚泥法に代表される生物処理により残存有機物を生物分解する方法が一般的である。しかし、排水設備の安定維持のためには、処理用薬剤使用量が過剰傾向となり、浮上フロスも多く発生してしまう。また、加圧浮上設備の除去効率が不良のときは、後段の活性汚泥に排水負荷がかかり処理水質が悪化するリスクが生じる。よって、一般的な水処理方式では、産業廃棄物となる余剰汚泥が多量に発生し、その減容化に再び多くのエネルギーが消費される等の多くの課題が残されている。
  金属加工工場では、重金属類やBOD処理を主目的とした排水設備が設計されているが、製造工程に硝酸・亜硝酸系薬剤を使用するため、窒素除去が十分でない場合がある。一方、閉鎖性水域では総量規制が定められており、高度処理への切り替えが必要で、建設費や排水処理施設の運転コストが負担となる。そのため、既存排水処理設備に接続するだけの、簡便かつコンパクトな脱窒素法の開発が急務となる。
  本稿では、上述の対策技術となる、負荷変動のある有機性排水を効率的に処理する担体流動法(MBBR)「アジティス®」および流動担体を用いた高負荷生物脱窒素法「バイオドリスター」について紹介したい。

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1.担体流動法(MBBR:Moving Bed Biofilm Reactor)

  有機性排水は、活性汚泥法などの好気性生物処理によって酸化分解されることが一般的である。活性汚泥法は施設面積が大きく、送風機の使用電力が過大になる傾向にあり、余剰汚泥が多量に発生する短所がある。そこで、エアレーションタンクに担体(moving bed)を適量投入することにより、活性汚泥法に比べ@排水負荷変動に対する許容範囲を広くする。A高濃度排水を効率的に処理する。B汚泥発生量が低減できる。等の特長を生み出すことが可能なMBBR(図1)が実用化されている。

図1. MBBRフロー

  MBBRは、対象物質に有効な微生物を培養して担体に固定化させる包括固定化法や、担体内に自然発生する微生物群で処理を行う結合固定化法がある2)。両者とも微生物を高濃度に保持し、除去対象物質の負荷に応じて担体充填量を決定して処理を行う。
  包括固定化法は、原水基質が変化した場合には固定化微生物の活性維持が困難となるため、日々変化する排水特性には適切とは言えない。当社MBBRシステム「アジティス®」は、担体形状、材質、処理効率を考慮した多段処理方式、エアレーションタンク撹拌法などを排水性状に合わせて設計し、微生物の共生効果を最大限引き出す結合固定化法を採用している。

1-1 アジティス®
 1-1-1 使用担体
  担体の材質はプラスティック製が主に使用されているが、各種排水に対して、耐久性、耐薬品性、早期流動性などを比較した試験結果から担体種類を選定する(表1)。

表1. 担体の選定表(当社比較例) (PU:ポリウレタン、PE:ポリエチレン)
項  目 特殊PU担体 PE筒状担体 PE発泡体
形  状 10mm立方体 10mmφ×15mm 10mm立方体
耐久性
耐薬品性
早期流動性 ×
投入コスト
微生物付着・多様性

  担体形状によっては、担体充填率を高くすると流動障害が起こる。また、後段に活性汚泥槽がある場合、BOD容積負荷が下がり生物活性が低下してしまうため、コストと処理(設計BOD除去率)のバランスがとれた充填率に定めることが留意点となる。
  当社の特殊担体MSPU10-10D(写真1)は10mm立方体ウレタン樹脂の発泡体で、微生物の親和力を高める表面処理を施しており、エアレーションタンク内で早期に流動する。各工場の製造ライン洗浄時に酸・アルカリ剤、塩素系殺菌剤などが使用されるため、薬品耐性を重要視し、RC造エアレーションタンクの凹凸壁面との流動摩擦に耐えられる物理的強度を確保している。
  エアレーションタンク内に担体を20‐30%程度投入すると、担体に保持された高密度微生物の影響で、槽内の全微生物濃度は浮遊汚泥濃度(MLSS)に加算されて高く保持できる。馴養・立上げは、特殊菌を担体に含ませるのではなく、既設汚泥、類似した種汚泥や専用の微生物製剤を利用し、現場に応じた生態系を早期に作り出して処理水質を満足させる。

写真1. 担体例 MSPU10‐10D

 1-1-2 多様な微生物群による食物連鎖の形成
  槽内の担体は、担体同士が接触することで担体の孔径が閉塞しないように流動させる必要がある。また、十分な撹拌強度を維持することで担体表面は好気性微生物が保持され、担体中心部に向かって低酸素雰囲気で生息できる通性嫌気性細菌などが優占種となる。食物連鎖の礎を強固に維持することで多様な微生物群が生息し、各現場の排水特性に順応できる。
  食物連鎖の効果により、高位の微生物種が増加することで余剰汚泥転換率が低くなり3)、汚泥沈降性も向上して良質な処理水が得られる(図2)。当社試験データでは汚泥転換率6〜25%という実際値が得られている。これは活性汚泥法(従来法)に比べ1/2〜1/3の汚泥発生量である。

図2. 食物連鎖の効果

  また、担体を投入することで活性汚泥に比べて負荷変動に強く、排水中のBODが2倍となった場合でも、既存エアレーションタンクに槽容量に対して20-25%程度(当社標準値)の担体を投入することで対応できる。
 生分解性の高い排水、下水道放流等の条件に該当する施設では、汚泥返送を行わず、沈殿槽不要の一過式運転を行っている。一過式運転では汚泥の固液分離障害の心配がないため運転管理が容易であるが、担体性能が処理能力に大きく影響をおよぼすため、排水性状を考慮した担体の選定が重要となる。当社は、排水基質、処理フローに応じて担体(図3 )を使い分けて排水設備の安定運転を提案している。
  さらに、n-Hex.300‐570mg/L以下の高濃度油分含有排水を担体流動法のみで直接生物処理する方法に関する特許「高濃度油脂含有排水の生物処理方法および生物処理装置」を取得しており、特定担体1m3あたりで除去すべきn-Hex.量(1‐1.8kg/m3・日)を設定して運転条件を調整することで適正処理を可能にしている。
  担体や処理フロー等を特別仕様にしたアジティスによって、高濃度油分含有排水を直接生物処理することで発生フロス、使用薬剤費を抑えることができる。

図3 . 排水種類に応じた担体の選定(2014年9月現在)

1-2高負荷生物脱窒素法 バイオドリスター
  脱窒素細菌は有機物分解を主とする従属栄養細菌よりも増殖速度が遅く、滞留時間を確保しなければならないため、従来の活性汚泥法を用いた場合は脱窒槽が大きくなる傾向にある。
  当社は、5mm立方体の特殊PU担体を高密度に充填させた脱窒素リアクターを実用化している。
次式に生物学的脱窒処理の脱窒反応を示す。
   2NO2-+2H++CH3OH→CO2+3H2O+N2
   6NO3-+6H++5CH3OH→5CO2+13H2O +3 N2

  反応式より生物学的脱窒処理が進むと窒素ガスが発生する。担体内に窒素ガスが存在して脱気不良になると、担体が浮上して流動障害が起こり処理機能は著しく低下する。そのため、担体内部に脱窒素細菌を保持し、担体が浮上しないよう強制的に槽の下部へ流動させるリアクター構造(図4 )にすることが重要である。(関連特許取得済)
  バイオドリスターは、脱窒素リアクター内部構造に独自性があるため高速処理を可能とし、NO3‐N容積負荷1.2kg/m3・日、10℃程度の低水温条件であっても窒素除去率80%以上を達成することができる。
図4. 脱窒素リアクターイメージ

  また、水素供与体として亜硝酸型では、CH3OH/2N=32/28=1.14倍、硝酸型では5CH3OH/6N=160/84=1.9倍のメタノールが必要となる。実際は、菌体合成に利用されるメタノール量も加えて、亜硝酸型で窒素に対して1.5倍、硝酸型で2.5倍量程度となる4)
  バイオドリスターは、排水負荷変動の影響で脱窒素後に消費されなかったメタノール(BOD源) を処理対象にした再ばっ気槽を脱窒素リアクターの後に設置する。再ばっ気槽は、BOD処理に適した担体を投入したアジティスとし、設置スペースのコンパクト化を図っている。当然、硝化が必要な排水性状の場合は、担体中に硝化菌を固着させたMBBRを脱窒素リアクター前に設置し、再ばっ気槽と同様に設備のコンパクト化を図っている。
  バイオドリスターは、既存排水設備を高度処理タイプに変更させることが可能で、排水量、窒素濃度、設置場所に応じて導入できる。
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2.納入実施例

2-1アジティス                     
  @惣菜排水処理施設(除害施設) (500m3/日、BOD1100mg/L、SS330mg/L、n-hex.100mg/L)
  既存施設は200m3/日処理の加圧浮上装置を運用していたが、排水量増加に伴い処理水の水質確保が困難となり、発生フロスと処理用薬剤の運転費負担が課題となった。また、計画用地も制限されて高効率な生物処理設備が要求された。

写真2. アジティス(鋼板製)

  そこで、排水中のBOD,SSおよびn-hex.除去を対象にしたアジティス(写真2)を導入することで加圧浮上を不要にし、高速処理を行うことで下水排除基準を満足する処理水が得られている。

 Aドレッシング製造排水処理施設(河川放流)(500m3/日、BOD660mg/L、SS180mg/L、n-hex.
200mg/L)

  既設に加圧浮上設備と活性汚泥(350m3/日処理)があり、排水負荷が増加する場合は、大規模改修は行わず、排水増加分(150m3/日水準)をアジティス(写真3)によって直接生物処理することで処理水質(BOD20 mg/L以下)の安定化を図っている。また、排水増加分の発生汚泥量を低減することで既存汚泥処理設備の運転時間延長で対応している。

写真3. アジティス(RC造)

2-2バイオドリスター(脱窒素リアクター(写真4)+アジティス)
  金属部品製造排水処理施設(河川放流、高度処理)
(60m3/日処理,BOD30mg/L、T-N(硝酸および亜硝酸性窒素)100mg/L、T-P2mg/L)
  本施設では、霞ヶ浦水質保全条例の施行に伴い、従来の重金属類の処理だけでなく、窒素、リンの処理も必要となった。とくに、窒素濃度が規制値を逸脱する懸念があったため、既存の凝集沈殿処理施設の後段にバイオドリスターを増設することで、排水中の亜硝酸および硝酸性窒素(T-N100mg/L程度)を処理し、処理水設計値(T-N20mg/L以下)を満足した。

写真4. 脱窒素リアクター(鋼板製)
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おわりに

  水質規制の強化に伴い画期的な排水処理技術が求められており、生物処理と物理化学的処理の特長を活かした高効率な処理方法が時代ニーズと考える。また、循環型社会の構築に伴い、高度処理設備は国内外を問わず重要な技術となる。
  低炭素社会の実現にむけて、@水質規制(汚濁物質)、A水の視点(再生水利用など)および
Bエネルギーの視点(再生可能・省エネルギーなど)に立った総合的な環境負荷低減技術が重要となる。本報「アジティス®」、「バイオドリスター」、MBRシステムなどを駆使し、省エネルギー効果や良質な再利用水の安定確保などの技術革新に努めていきたい。
 
参考資料
1) 環境省ホームページ(http://www.env.go.jp/

2)

(社)日本下水道協会:下水道施設計画・設計指針と解説2009年版(後編),p45−46(2009)
3) 栗田工業(株):よくわかる水処理技術,p134,日本実業出版社(2012)
4) 吉村二三隆,北川幹夫:わかりやすい水処理設計,p92,工業調査会(2003)
 
(前澤化成工業株式会社 水環境事業部)
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