HOME コンプライアンス サイトマップ
プロフィール 入会案内 会員専用ページ
浄化槽とは 浄化槽普及促進ハンドブック(平成27年度版) 行政関連 広報データ リンク集
HOME > 浄化槽とは > 技術データ > JSAだより >  浄化槽の人員算定
しくみ
浄化槽のしくみ
最近の浄化槽の技術動向
技術データ
Q&A
JSAだより
特 集
講 座
報 告
過去掲載目次一覧
浄化槽の人員算定
敷島 哲也 (社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2014年9月号)
1.はじめに
2.建築用途と類似用途
3.算定の手順
4.特殊な算定事例
5.おわりに

1.はじめに

  前回2012年2月号に、人員算定をテーマに記事を掲載させて頂きました。前回の内容は主に「浄化槽の設計・施工上の運用指針」(以下運用指針)に記載されていることの紹介でした。人員算定の流れ、建築用途別の負荷量算出、注意を要する建築用途を記述し、より実際の水量・負荷量に近い計画を立てる上でのデータの集め方、行政窓口との相談について紹介しました。
  今回も題名は同じですが、前回書ききれなかった補足事項や実際に算定した事例について紹介させて頂きます。尚、事例を紹介するに当たっては、施主はもちろんのこと、対応した行政窓口についても具体的な数値・内容は伏せさせて頂き、建築用途の類似の割り振り方、算出の考え方、計算事例に焦点を当てて紹介させて頂きます。

ページトップへ
2.建築用途と類似用途

  浄化槽の処理対象人員の算定方式は、昭和44年建設省告示第3184号により日本工業規格「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A3302:2000)」に定めるところによるとされています。この表では建築用途を基本となる類似用途別番号1〜11と、その下の分類群2〜12種に分けています。また、運用指針では「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準表」における建築用途の類似例一覧表が記載され、更にその後増えた新しい類似建築用途についても「浄化槽の構造基準・同解説」(以下同解説)に追記し、網羅されています。現状、同解説の2006年版に補足されている内容が最新となっており、概ね200種類以上の類似建築用途が整理されています。
ページトップへ
3.算定の手順

  人員算定の手順について、実際の流れに沿って説明いたします。
1) 建築用途の決定
   建築用途は、原則として対象となる建築物の主たる用途とします。具体的には建築確認申請時の用途と一致させることになります。これは浄化槽設置届けの際も同様です。新設時はもちろんのこと、増設時、入替時など、建築用途が不明な場合には、建築確認申請を照会すると良いです。
2) 処理対象人員算定基準の運用方針
   処理対象人員算定基準の運用方針は「浄化槽の設計・施工上の運用指針」に記載されています。内容を以下の通りまとめました。
   
  • 全般事項
    @ 公会堂の事務室や、体育館の売店等、建築物の主たる用途に従属する部分は、主たる用途の一部として延べ面積に含めます。
    A 建築物内の駐車場は、同一建築物が2以上の異なった用途に供されるものとして、各々の建築用途の項を適用加算するものとします。ただし、この駐車場に便所が無いなど、当該建築物を利用する人のみによって使用されることが明確な場合は、この駐車場の算定処理対象人員は0人とします。駐車場付共同住宅や、駐車場付店舗、事務所が該当します。
    B 定員により処理対象人員を算定する場合は、その「定員」は、職員、従業員、管理人およびその家族等を含めて算定します。建築物を主に利用する人、ほぼ常駐する人を対象と考えれば良いでしょう。
    C 店舗・病院等で、従業員宿舎が併設されている場合は、[2.住宅施設関係 ハ]の項を適用し、加算します。
    D 主たる用途に付置される倉庫は、原則として主たる用途の一部として算定しますが、倉庫の占める割合が大きく、概ね延べ面積の1/4を超える場合は[10.作業場関係 イ]の項を適用して算定しても良い。
    E 複合ホール、クラブハウス等、種々の用途が複合して算定方法を明示することが困難な場合は、所轄の特定行政庁と打ち合わせてください。
    F 同一建築物内に複数の用途を有する場合で、エレベーターホール、ロビーのように各用途が共有する部分の処理対象人員の算定に関しては、各用途の面積比を用いて共有部分の処理対象人員を算定します。ただし、共有部分に相当する面積が、ある用途に明らかに属する場合は、その主たる用途の人員を適用して算出します。
    G 建築物の用途により、年間又は一日の中で使用されない期間又は時間帯がある場合については、使用回数、時間等の流動変動に十分配慮して、浄化槽の計画を行う必要があります。企業の研修センターや別荘などが該当します。
       
  • BOD負荷量及び汚水量
      浄化槽の計画水量及び水質については、データの有無で対応が変わります。
    @ 対象建築物について過去の水量水質の実測データがある場合はその数値を優先して参考にします。類似の建築用途の施設や近隣する地域の類似施設のデータも参考になります。これらのデータと各種の文献値を参考に、その妥当性を検討して設計に用います。
    A 実測データが得られない場合には、汚水量及びBOD量は、原則として「処理対象人員(n)1人当たりの汚水量及びBOD量参考値」一覧表の値を採用します。ただし、処理対象人員の算定式で[n=16C]により人員算定をする建築用途(公衆便所・競輪場・競馬場・競艇場・遊園地・海水浴場等)の場合で、これらの施設の利用人員、利用時間の推定が容易なケースで、汚水量が実情に沿わないと認められるときの「BOD・汚水量」は次の式により算定しても良いとされています。尚、算定人員については、原則として低減できないものとします。


    補足 : 参考値欄の「処理対象人員(n)1人当たりの汚水量及びBOD量参考値」の隣にある「算定単位当たりの汚水量及びBOD濃度参考値」は数値がリンクしています。実務上はこちらの方が使い勝手が良く、よく利用されていると思います。注意点としては、参考値が算定単位当たりになっているため、算定した処理対象人員(n)当たりの汚水量・BOD量ではなく、面積や、人、便器数当たりの負荷になっています。特に定員(人)の場合は元となる人数当たりですので、算定後の人員と混同しないよう気をつけてください。
       
    3) 算定結果について
       2)の方針に則って計算を行いますが、通常、算定結果は、処理対象人員(n)は小数点以下切り上げ、水量については小数点以下第1~2位で切り上げて丸めます。実務上、処理対象人員の1の位は更に丸めてすっきりした数字(例:5の倍数など)にされることが多いです。水量もそれに併せて按分して計算する場合が多いです。
    4) その他留意事項
       油脂由来の汚濁が高い高汚濁負荷の飲食店や、屎尿の濃度が高い作業場等、想定以上の高負荷が予想される案件では、算定結果にいくらかの余裕を加算して浄化槽の人槽を決定するとトラブルが少なくなります。
     特に屎尿については、最近は節水型トイレが一般的になっており、大便器の使用水量は最小で3.8L/回、主流となっているものでも6L/回と非常に小さくなっており、屎尿系汚水の汚濁濃度は格段に高くなっていると考えられます。勿論、実際の濃度はトイレの使用実態にもよるため一様に濃いとは言えませんが、他の排水で希釈される住宅などの用途に比べ、屎尿汚水のみの公衆便所や作業場などでは、流入BODが500mg/L以上、流入T-N濃度が200mg/L以上になることがあります。処理方式の選定にもよりますが、処理対象人員算定時にある程度の余裕を含ませるのも一つの対策となります。
  • ページトップへ
    4.特殊な算定事例

      ほとんどの建築用途は、前項までの方針に従って計算していけば、問題なく建築用途の選定、処理対象人員及び汚水量、BOD量の算定結果等が出ます。しかしながら、少数ではありますが、どの建築用途で算定するのが妥当なのか判断に迷う場合や、算定結果が実情とかけ離れていることが明らかだが代替の算定法が分からないという場合も発生します。以下に、弊社が関わった案件で特殊な算定を行った事例を紹介致します。中には首をかしげるような算定事例もあるかもしれませんが、当時、施主、建築主事、設計事務所等の当事者間では妥当と判断され、採用されたことを申し添えておきます。
       
    1) 社員食堂
       既設の工場に食堂棟及び食堂棟用の浄化槽を追加する物件でした。当初は類似例一覧から[9.事務所関係 イ]の厨房有として計算しようとしましたが、当時の建築主事からは、食数が明確であるので定員で算出する[10.作業場関係 イ]を適用するのが妥当ではないかと指摘を受けました。算定に当たっては、厨房排水、食堂利用者、厨房作業員の負荷を明確に分けて、食堂利用者は移動人員のため滞在時間を決定し、各々の処理対象人員と計画負荷量を算定して合算することで建築主事の了解を得ました。
     
    某工場食堂棟 建築用途は[10.作業場関係 イ]作業場
    条件:食数は200食/日、食堂利用者の滞在時間は1時間、厨房作業員は5人
    1) 厨房排水
      厨房有の係数0.75と厨房無の係数0.3の差を厨房排水の係数とする。
          水量の参考値、厨房有100L/人・日と60L/人・日の差を厨房排水量とする。
          N1=(0.75−0.3)×P(食数)=0.45×200人=90人
          Q1=(100−60)×P(食数)=40L/人・日×200人=8,000L/日
          BOD1:(300mg/L×100L/日-150mg/L×60L/日)÷40L=525mg/L
                525mg/L×8,000L/日=4.2kg/日
    2) 社員食堂で食事をする人員のトイレ・手洗い排水
          N2=0.3×P×1H/8H=0.3×200人×1H/8H=7.5人
          Q2=60×P×1H/8H=60×200人×1H/8H=1,500L/日
          BOD2:150mg/L×1,500L/日=0.225kg/日
    3) 厨房作業員
          N3=0.3×P=0.3×5人=1.5人
          Q3=60L/人・日×5人=300L/日
          BOD3:150mg/L×300L/日=0.045kg/日
          N=N1+N2+N3=99人 < 100人 
          Q=Q1+Q2+Q3=9,800L/日 < 9.9m3/日 
          BOD:(BOD1+BOD2+BOD3)÷9,800L/日=456mg/L<460mg/L
       
    2) ゴルフ場のトイレ
       ゴルフ場のクラブハウスではなく、コース途中にあるトイレ用の浄化槽を設置する物件でした。便器数は大便器2個でした。適用すべき建築用途について建築主事に相談したところ、公園便所と同様に[11.1〜10の用途に属さない施設 ハ]の公衆便所として扱うのが妥当とされました。しかし、それではn=16C=32人槽となり、コース途中にあるトイレの浄化槽としては過大であると考えられ、また当時の建築主事もゴルフ経験者であったことから、これでは実状に合わないと判断されました。それで、何らかの補正が必要だと資料を集めるなどして検討を重ねた結果、次のような算出となりました。
     
    某カントリークラブ コース上のトイレ
    建築用途は[11. 1〜10の用途に属さない施設 ハ]公衆便所
    条件:便器数 大便器2個、来場者実績データよりピーク時来場者240人/日を採用
        排水量を運用指針23-24頁の式を用いて算出
        t:プレーヤーがコース上に居る時間
         15分/H×18H=270分<5時間 よって5時間/日
        p:利用者数              240人/日
        f:大便器使用係数           0.5
        nf:大便器使用回数 0.0412×t×p×f=24.72回/日
        nμ:小便器使用回数 (0.216+0.325/t)×t×p=337.2回/日
        qa:便器1回当りの水量        6L
        N=16×C=32
        Q=(nf+nμ)×qa=2.17m3/日<2.8 m3/日(製品ラインナップの都合)
        50人槽以下は原単位が200L/人・日のため、実状に合わせ
        N=2.8 m3/日÷0.2 m3/人・日=14人
       
    3) ショッピングセンター
       某ショッピングセンターにて延べ面積を入手し処理対象人員と汚水量を算定したところ、施主より汚水量の算定結果とほぼ同規模同延べ面積の系列店舗の水道使用実績の間に大幅な開きがあると指摘を受けました。そこで、他店舗の延べ面積と水道使用量1年間分のデータ、店舗構成の資料を入手し、この系列における延べ面積当たりの水量を算出し、それらを元に汚水量を算定し直しました。また、建築主事からは、1)過去は過去として新規の店舗については来客数が大きい可能性も考慮して汚水量に安全率を掛けること、2)JISの汚水量参考値からの算定結果と実績値に大きな開きがあるため、処理対象人員も汚水量の実状に見合うように直すよう指示を受け、汚水量からの割戻を行いました。
     
    某ショッピングセンター
    建築用途は[5. 店舗関係 ロ]百貨店
    条件:延べ面積15,000m2
    JIS算定結果
       N=0.15×15,000=2,250人
       Q=30L/m2・日×15,000=450m3/日
    しかし、同系列同規模の他店舗の実績値は50 m3/日程度であり、資料を検討した結果、店舗延べ面積当り平均値は5L/m2・日となった。
    新店舗の立地条件等を鑑み、汚水量は安全を見て10L/m2・日で計算することとなり、
       Q=10L/m2・日×15,000=150m3/日
    となった。人員算定についても汚水量に見合うよう、次のような補正を行った。
    汚水量を百貨店の係数で割戻して、相当する延べ面積を割出し、再度人員算定を行った。
       150 m3/日÷0.03 m3/m2・日=5,000m2
       N=0.15×5,000m2=750人
       
    4) 集会場
       小さな神社の境内にある町内会の集会場の案件で、古いトイレ(汲取り)を取り壊し、新しいトイレと共に浄化槽を設置する話でした。[1.集会場施設関係 イ]集会場として計算しましたが、施主より、普段ほとんど人が訪れない神社であること、集会場についても、町内会の会合で時折使う程度で、多い時でも月に半分程度しか使用されないことなどの話があり、実態に即した算定を強く要望されました。建築主事からは通常通り集会場として算出するよう指示を受けましたが、過去の水道使用量や集会場の利用頻度や利用人数のわかる資料があれば緩和を検討しても良い旨指導されました。
     
    町内会の集会場
    建築用途は[1. 集会場施設関係 イ]集会場
    条件:延べ面積180m2、過去の水道使用量データより最大使用水量は0.95m3/日、
        集会場利用記録から、滞在時間は最大4時間、利用者最大は10人/日と判明
    JIS算定結果
       N=0.08×180=14.4人
       Q=16L/m2・日×180=2.88m3/日
    ここで集会場の利用実態に基づいて汚水量を推定。
    1) 流し台、手洗い等の雑排水量(今まで汲取り便所であった)
      過去の水道使用量より、平均0.65 m3/日、最大0.95 m3/日であったため、安全を
      鑑み、q1=1.00 m3/日とした。
    2) 水洗トイレの汚水量推定
      運用指針23-24頁の式より
      t:集会場の利用時間・滞在時間      4時間/日
      p:利用者数               10人/日
      f:大便器使用係数           0.5
      nf:大便器使用回数 0.0412×t×p×f=0.824回/日
      nμ:小便器使用回数 (0.216+0.325/t)×t×p=11.89回/日
      qa:便器1回当りの水量        8L
       q2=(nf+nμ)×qa=0.102m3/日

    Q=q1+q2=1.102 m3/日<1.4 m3/日
    Nは使用水量の実態を鑑み、Qを原単位0.2 m3/人・日で割戻し、7人槽とした。

    ページトップへ
    5.おわりに

      筆者が営業担当をしていた数年前までは、建築主事もベテランの方々が多く、浄化槽についても豊富な経験と知識を持っておられ、中には地域の事業者の内情にもある程度精通されている方もいました。ベテランの方々は、既設建物のやり替えなどの物件はもちろんのこと、新規の物件であっても申請内容から予想されるイレギュラーなことに頭を巡らせ、様々な事を指摘されていました。営業に移ったばかりであまり深く考えずに計算して人員算定を提出していた筆者は、よく叱られ、指導を受けました。しかしながら、最近はそうした方々も次々に現役を引退され、新しい方々が担当されるようになりました。中には浄化槽を御存知ない方もいらっしゃいます。また、建築確認機関では、イレギュラーな算定は敬遠される傾向が強く、そのような人員算定は、行政の窓口にも判断を仰ぐケースが一時期見受けられました。従って、最近は特殊な算定はなされず、出来る限りシンプルに、算定基準通りに計算する場合がほとんどのようです。
      算定基準の枠に上手く嵌らない案件は、特殊な算定をせざるを得ません。この時、算定結果が実状に沿うように考えることは勿論ですが、将来第三者が算定書を見たときにどういう根拠で以て計算したかが分かり、合理的であると誰もが納得できることも重要です。
      2002年版の発行から10年以上改訂されなかった運用指針ですが、最近になって見直す動きが出ております。近年増々複雑化・多様化する建築用途について必ずしも合理的な算定が適用されているとは言えない場合も考えられるため、更に実態に即した運用が可能となることを目指すそうです。JIS A3302の処理対象人員算定基準そのものを改訂するものではないとのことですが、この見直しによって、これまで算定に難儀していた建築用途でも明確かつシンプルに対応できるようになるのではないかと期待しております。
     
    参考資料
    浄化槽の設計・施工上の運用指針2002年版 編集:国土交通省住宅局建築指導課・
    日本建築行政会議

    浄化槽の構造基準・同解説(1976年版〜2006年版)(一財)日本建築センター
     
    (藤吉工業株式会社 設計本部)
    ページトップへ
    前ページへ戻る
    | 浄化槽とは | 浄化槽普及促進ハンドブック(平成27年度版) | 行政関連 | 広報データ |
    | プロフィール | 会員専用ページ | リンク集 | コンプライアンス | サイトマップ | HOME |
    一般社団法人 浄化槽システム協会
    〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-32 芝大門ビル5階 TEL:03-5777-3611 FAX:03-5777-3613