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家庭廃食油の浄化槽への負担軽減と有効活用
大森 瑠佳 (社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2014年7月号)
1.浄化槽の処理機能に及ぼす油分の影響
2.愛媛県における取り組みの事例
3.バイオマスエネルギーとしての廃食油
4.BDF製造技術
5.小型BDF製造装置
6.おわりに

1.浄化槽の処理機能に及ぼす油分の影響

  浄化槽の機能障害の要因は様々あるが、その一つに台所からの天ぷら油など油分を浄化槽に流入させてしまう事例がある。油分は、有機物負荷量が高いうえ、生物分解速度も遅いため浄化槽の処理機能を低下させ、未分解の有機物が多く残存することが、処理水質悪化の原因とされる。
  実際、処理水質が悪いとされる浄化槽の一次処理槽にはオイルボールが発生しているなど明らかに油分が多いと見受けられる事例が散見される。そういった現場は高い確率で処理水が白濁し、悪臭が発生しているなど見た目でも浄化槽の処理に支障を来していることを実感する。水質を測ってシロかクロか見極めるまでもない。
  浄化槽に油分を流入させた事が明白であると認められた場合、維持管理の立場からは、油を流さないように指導するのが一般的であるが、「浄化槽の機能が悪くなるから、油を流さないでください」だけでは思うほど簡単に問題は解決しない。「ではどうすればいいの?」と言ったところまで踏み込む必要がある。実際、家庭で油を適切に処分するのは手間も時間もかかって面倒くさいものである。
  そこで、廃食油に有価価値が付けばどうであろう?積極的な回収につながらないであろうか。

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2.愛媛県における取り組みの事例

  愛媛県では積極的に廃食油を回収する「エコえひめ・ストッピーポイント事業」を実施している。これは、家庭から出る廃食油をペットボトル1本につき1スタンプもしくは1シールを貼付するというもので、スタンプ(シール)を25個集めると、割引券やポイントとして利用できる取り組みである。ストッピーとは愛媛県地球温暖化防止キャラクターであり、ポスターやのぼりなどに活用されている(図1)

図1 愛媛県ストッピーのぼり、ポスター

  この事業では参画企業が必要であるが、現在は県内全域に店舗を有するホームセンターを含む3社が参画しており、廃食油回収をよびかけるチラシを作成したり(図2)、廃食油回収場所としても機能している。(図3:ホームセンターレジ横に設置された廃食油回収場所)

図2 廃食油の回収をよびかけるチラシ

図3 廃食油回収場所の様子

  回収された廃食油は、バイオディーゼル燃料(BDF=Bio Diesel Fuel)として生まれ変わる。
  BDFは100%として使うことも可能であるが、車両燃料として使用する場合は軽油と混合する使い方が国で認められている。
  BDFを5%以下混合した軽油を「B5」と呼ぶ。「B5」は「揮発油等の品質の確保等に関する法律」で規定されている強制規格を満たしており、軽油と同様に安全かつ安心して使用できる。
  愛媛県内では回収した廃食油を再利用するまでの仕組み(図4)が出来ており、作成したB5燃料をゴミ収集車や学校給食車および事業に参画している企業の社用車に利用している。(図5)

図4 回収から利用までのしくみ

図5 ストッピーステッカーを貼った車

  こういった取り組みをすることにより、市民のリサイクルへの意識への高まりもあってか、松山市では平成24年度の市民1人1日当たりのごみの排出量は、827.8グラムで、人口50万人以上の都市では、平成18年度から7年連続日本一少ない都市になっている。(平成25年12月26日現在)
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3.バイオマスエネルギーとしての廃食油

  軽油は、将来的に枯渇するといわれている化石燃料であるが、BDFは、大豆や菜種などの植物系油を原料とするバイオマスエネルギーである。植物はその成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収し、これをエネルギーに変換して蓄える。そのため、これらを原料とする燃料を燃やしても、植物のライフサイクル全体では大気中の二酸化炭素量は変わらないことから、「CO2カウントゼロ」と見なされる。この考え方は「カーボンニュートラル(carbon neutral)と言われ、バイオマスエタノールもこの範ちゅうのエネルギーとされている。植物は、光合成の過程でCO2を吸収しているので、燃料として燃やした際に発生するCO2をカウントしないとの取り決めは、1997年のCOP3、京都での国際会議の場で議論され、現在のCO2削減策の大きな柱となっている。
  原料にバージンオイルを使用する場合は経済性が厳しいだけではなく、人類の食糧と奪い合うことになる。したがって、植物油由来の使用済みの天ぷら油=「廃食油」を回収して、バイオディーゼル燃料として再生することは、資源を有効活用した上で、CO2の削減にも貢献しているといえる。
  BDFは畑で生産される、再生可能かつ、持続可能性のあるエネルギーなのである。
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4.BDF製造技術

  廃食用油には、通常0.5%以上の遊離脂肪酸、極性化合物、水および料理かすなどの固体不純物が含まれているため、BDFの製造工程では、まずこれらの不純物を前処理工程で除去する。続いてメタノールと触媒を混合した溶液を65℃前後の温度でエステル交換反応を行い、反応終了後に生成したメチルエステルとグリセリンの混合物からグリセリン成分を分離し、さらに真空フラッシュによってメチルエステル生成物に少量残存するメタノールを0.3%以下に低減するが、これでもなおアルカリ触媒などの不純物が残ってしまうため、最後は化学処理により除去する。
  こうして得られた精製メチルエステルは、高品質なバイオ燃料として利用できる。また、この精製メチルエステルは、流動点が-3〜-5℃程度と軽油に比べて一般に高いため、このままでは寒冷地の使用には不向きである。寒冷地で使用する場合は、専用の防寒剤を添加し、流動点を-15〜-20℃程度まで低下させることによって、寒冷地対応品として使用可能となる。
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5.小型BDF製造装置

  回収した廃食油は出来るだけ近くでBDFに転換し、使用するほうが輸送にかかるCO2を削減できるので好ましい。地産地消の考え方である。
  地方自治体単位で製造、消費するのであれば、自治体の規模に応じた製造量の小型製造装置を選択すればよい。
  BDF製造装置は製造量に合わせたラインナップが様々あるが、製造量が800L/日を超える大型装置は製造所扱いになり、許認可関係が複雑になる。しかし、小型機は条例の範囲内で設置可能で気軽に導入できる。その為、大がかりな装置を設けなくとも、地域で循環型の取り組みが可能となっている。
  東京都練馬区では区内42ヶ所で月1回、家庭から出る廃食油の拠点回収を行っており、回収された廃食油は小型BDF装置で燃料化され、区の2台の清掃車に使用している。図6に実際に導入したBDF製造装置を示す。

図6 導入された小型BDF製造装置
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6.おわりに

  推定によると、日本の廃食油の排出量は業務用で約25万トン、家庭用で約10〜20万トン/年である。しかし、家庭用からのBDF生産は5000kLと言われ、まだまだ回収、リサイクルの余地が残されている。
  家庭では(筆者もかつてそうしていたが)使用した後の天ぷら油は、購入した固形剤で固めたり、何かに浸みこませて捨てたりしている家庭がまだ多いと思われる。
  天ぷら油の積極的な回収は、浄化槽の機能障害の防止にも役立つうえ、CO2削減効果も見込まれる一石二鳥のシステムになるのではないか。
  愛媛県大洲市の維持管理業者は浄化槽の維持管理の際に、ペットボトルに入れられた廃食油を回収し、近隣の地方自治体が有するBDF製造場所へ搬送している。こうすることにより、運搬時のCO2抑制にも貢献できる、まさしく地産地消の考え方に沿ったモデルといえよう。
  このような取り組みが、全国に広がれば、浄化槽にも、地球環境にも優しいシステムが出来あがっていくのではないかと一人夢想している。
 
参考資料
「油脂類による機能障害とその対策」田所 正晴(月刊浄化槽 2000年6月)

松山市ホームページ ごみ減量(リデュース KEEP NO.1 プロジェクト)
愛媛新聞 (2012年9月7日付)
(株)ダイキアクシスホームページ(バイオディーゼル燃料事業)
毎日新聞 (2011年9月27日付)
練馬区HP(使用済み廃食油の回収)
「第二章 製造事業及び製造装置」王祥正(自動車バイオ燃料技術の最前線2007年12月)
「世界の油脂原料事情 p3-7」(財)油脂工業会館油脂原料研究会(2005年)
「バイオディーゼル燃料に関して」王祥生 (環境浄化技術 2006年6月号)
「地域における廃食油のSVO利用にむけて」本庄孝子(環境技術 2011年8月)
 
(株式会社ダイキアクシス 生産部)
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