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災害によるブロワ故障の対応について
(月刊浄化槽 2005年5月号)
 地震や台風などの災害によりブロワが壊れてしまった場合、どのように対応したらよいのでしょうか。
泉 忠行 (ダイキ(株)環境機器カンパニー 生産部)
 我国は世界有数の地震国であり、また台風の上陸数が多い事でもよく知られています。特に昨年は新潟中越地震の発生や、1年間に10個もの台風が上陸、集中豪雨での被害も甚大だったので、ご心配されての質問と思います。
 新潟中越地震の浄化槽被害については、(社)新潟県浄化槽整備協会が先頃、「小型合併処理機能保証制度・大規模地震被害実態調査費等事業(中間調査報告書)」にまとめ、公表されたところです。この報告書によれば、山古志村では調査を行なった浄化槽、139基中「ブロワ」に何らかの異常があったのが54基、出雲崎町では同143基中2基との報告でした。この差は、山古志村は山間部に位置し、多数の土砂災害が発生、数箇所で河川閉塞が起きて土砂、水浸しの状態になったのが原因と推察しております。同様に、台風や集中豪雨の直後にブロワが壊れた(停止した)場合、やはり外力での損傷よりは、ブロワへの雨の浸入や冠水が主原因でしょう。
 過去設置された浄化槽を含め、使用されている小型ブロワは、電磁式ブロワ(ダイアフラム式、ピストン式)とモーター式ブロワ(ロータリー式等)がほとんどです。電磁式、モーター式とも従来型では、対応に大差ありませんが、最近のタイマ付ブロワが冠水した場合は、ブロワメーカーでの影響確認が必要です。以下、ブロワのタイプ別に、その対応について回答いたします。
 
1.電磁式ブロワの場合
 電磁式ブロワが停止した場合、使用者に、関係するブレーカの作動(落ちていること)を確認いただき、落ちていない場合は「切」にして維持管理業者または浄化槽代理店に連絡をします。維持管理業者は外観、部品を確認して、異常があればサービスマニュアルに従って修理を行ないます。外観、部品に異常が無い場合、絶縁抵抗計(写真-1)で絶縁抵抗を測定します。絶縁抵抗計(メガテスター)は電気を流す各相とアース間で、いかに電流がもれないように絶縁できているかを確認するもので、10MΩ未満であればブロワを交換します。もし、10MΩ以上であれば通電して、運転音や空気量を確認、異常が無ければ連続運転を行ないます。この段階で異常があればブロワのサービスマニュアルに従い修理します。図-1にダイアフラム式ブロワの点検修理フロー、点検時の記録事項、修理内容を示します。
写真-1 絶縁抵抗計
図-1 ダイアフラム式ブロワ―の点検修理フロー(PDF)
 
2.モーター式ブロワの場合
 モーター式ブロワも同様に絶縁抵抗を測定し10MΩ未満であればブロワを交換します。10MΩ以上であっても、モーターとブロワ本体の点検が必要です。モーター側ではプーリーを手で回してみて、軽く回れば問題ありませんが、手に何か引っかかる感触があれば、分解して異物を取り除く必要があります。また、コンセントを入れてみてスムーズに始動すれば問題ありませんが、異常音がする、ガバナースイッチが切れない場合は修理が必要です。ブロワ本体では、分解して、シリンダー内部、羽根、ローターにキズや錆びの発生がないか、ベアリングはスムーズに回るかなどの点検が必要です。その他、チャンバーを取り外し、よく乾かす、オイルを全量交換する等の作業が必要となります。尚、ブロワの異物混入によるロック及び錆びによるメーカー修理の所要日数は、工場到着後7日から10日程度かかります。
 
3.タイマ付ブロワの場合
 最近の、いわゆるコンパクト型浄化槽のほとんどは、散気及び逆洗等の制御が必要なためにタイマ付ブロワとなっています。タイマはICチップや回路基板で構成されているので、特に水分には弱く、冠水によるブロワ停止の場合は維持管理業者による影響確認、修理は困難と思われます。従って、故障ブロワをメーカーに送って点検、修理可能な場合は修理という段取りになります。しかし、コンパクト型浄化槽は流量調整機能や逆洗機能をタイマ付ブロワによっているため、流入があれば長期間の送風停止は問題を生じると考えられるので、その間、代替ブロワが必要となります。代替ブロワの仮設置、故障ブロワの送付、修理済みブロワの受領と設置、代替ブロワの返却と相当手間がかかる上、代替ブロワの費用負担を考えると、無条件に新品ブロワを設置した方が、早くて経済的かもしれません。
 また普段から、間欠定量ポンプ、散気管、逆洗管などのどの部分に最低限の送気をすれば、汚水が溢れることなく運転できるか、浄化槽の構造を良く知り、手持ちの従来型ブロワでの緊急時対応も考えておくことも重要です。

 浄化槽及び付属機器の地震や台風への対策はやや不十分の感がしております。通常時はブロワが停止すれば浄化槽部分から臭気が発生し、使用者が異常に気付き維持管理業者に連絡するケースや、定期管理の中で維持管理業者が発見するケースがほとんどだろうと考えます。しかし、大規模地震や集中豪雨があり、明らかに浄化槽(ブロワを含む)被害が予想される場合、誰が、どのタイミングで、どのような緊急対応を実施するかは、はっきり決まっていないのが実情です。今後、関係団体、施工業者、維持管理業者、浄化槽メーカー及び機器メーカー等で協議し、緊急時対応の取り決めや、メーカーによるブロワの講習会開催等も必要と考えます。最後に、資料提供を頂いたブロワメーカー各社に、深く御礼申しあげます。

 
参考文献
1) 小型合併処理浄化槽機能保証制度「大規模地震被害実態調査費等事業」中間調査報告書:平成17年3月、(社)新潟県浄化槽整備協会
2) 「講座・浄化槽用ブロワとポンプ」:月刊浄化槽、2001年9月〜2002年5月号
3) ブロワメーカー各社:維持管理要領書他
 
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